打倒・青木真也に燃える若武者―クリスチャン・リーが歴史を変える3つの根拠
5月17日(金)にシンガポール·インドア·スタジアムで開催される「ONE: ENTER THE DRAGON」で、青木真也が持つONEライト級世界王座のタイトルに挑戦する、20歳のクリスチャン·リー。36歳の生きる伝説に、20歳の若武者が果敢に挑もうとしている。もしリーが勝てば、ONEチャンピオンシップのみならず、格闘技界の歴史を変える伝説となるだろう。クリスチャン·リーが青木真也を倒し、ライト級世界王者になる3つの根拠を考察する。
クリスチャン·リーは失うものがない
3月31日に開催された「ONE: A NEW ERA」でエドゥアルド·フォラヤンを倒し、ONEライト級世界王者のベルトを取り戻した青木真也。試合後の記者会見では、「次は若い選手とやりたい。クリスチャン·リーがいい」と驚きの発言をした。その試合が、いま実現しようとしている。
この発言が驚きを持って迎えられたのには、いくつかの理由がある。一つは、クリスチャン·リーが青木真也の友人であり、同じジムに所属する同僚であるということ。二つ目は、リーの通常の階級が一つ軽いフェザー級であるということ。そして、最後に36歳と20歳という年齢差だ。
タイトルマッチは、防衛する王者にも、挑戦者にもリスクがある。王者は負ければタイトルを失うし、挑戦者が敗れたら貴重なチャンスを一つ失うことになる。
しかし、王者より16歳年下であり、なおかつ階級が下のクリスチャン·リーのこの挑戦は通常のものとは一線を画する。仮にリーが敗れても、それで彼の評価が下がったり、値打ちが落ちたりということはないだろう。
プレッシャーがないなかで、リーは思う存分チャレンジすることができる。一方で、青木真也は「勝って当然」という周囲の眼のなかで、これまでにないプレッシャーと闘わねばならない。
世界で最も才能に恵まれた選手の一人である
クリスチャン·リーを評する時に、思い浮かぶのは、日本格闘技界のレジェンドである故·山本“KID”徳郁氏だ。レスリング一家に生まれ、才能を培ってきたKID氏と、姉のアンジェラ·リーと共に、ONEの舞台で勝ち続けるクリスチャン·リーは、その影が重なる。
アンジェラ·リーは、プロ通算9勝1敗。3月に階級上のション·ジンナンに挑戦して敗れるまでは負け無しだった。また、クリスチャン·リー自身もプロ成績は11勝3敗。これが、22歳と20歳の若い姉弟の戦績だと考えると、改めて驚かされる。
格闘技一家に育ち、才能を育んできたクリスチャン·リー。新しい時代の山本“KID”徳郁に成れるか。
常に若い才能が歴史を塗り替えてきた
日本で産声をあげた総合格闘技の歴史。これまで、日本、アメリカ、そしてアジアを中心に大規模なイベントが開催され、常に進化を遂げてきた。成熟しつつも、完成には至らず、今もまた、歴史の過程に我々はいる。
青木真也は、「自分が若い時に、当時のチャンピオンに勝てると思っていた。でも、年齢を理由にタイトルマッチをさせて貰えなかった」と語っている。これまでの慣例が覆された時、歴史は動くものである。
20歳の若い才能が、かつての若い才能によって手に入れた、このチャンス。
もし、クリスチャン·リーが歴史を変える男になるのであれば、彼にはその資格が十分にある。