波乱の連続!まさに格闘技の激流「ONE: ENTER THE DRAGON」ハイライト
5月17日(金)にシンガポール·インドア·スタジアムで「ONE: ENTER THE DRAGON」が開催された。世界最高峰の舞台で実績を積み重ねたセージ·ノースカットがONEデビュー戦で、29秒KO負けを喫するなど、大会は波乱の連続となった。誰が勝つのか全く予想がつかない、格闘技の“激流”のなかで、奮闘する日本人選手の活躍はいかに。
またアームバーで勝利!V.V Meiがタイトル挑戦に大きく前進
昨年5月に、アンジェラ·リーが持つONE女子アトム級世界王座に挑戦し、判定の末に敗れたV.V Meiだが、その後は2連勝と波に乗っている。今回の対戦相手は、中国のボウの予定だったが、欠場が決まり、急遽対戦相手がラウラ·バリンに変更になった。
双方にとって思わぬ事態となったが、試合は、日本大会からの勢いそのままに、Meiが積極的に技を仕掛け、肩固めから、アームバーに持ち込んで1Rで勝利を収めた。決着がつくと、急な試合を実現させた両者が、お互いの健闘を称え合う一幕も。
これで、Meiは2試合連続で、女子格闘技では極めるのに高難易度の技術を要するアームバーで勝利を収め3連勝。10月の日本大会に向けて、3度目となるタイトル挑戦が期待される。
崖っぷち元王者同士の闘いは内藤のび太に軍配
現王者のジョシュア·パシオと、前王者の猿田洋祐、そして元王者の内藤のび太、アレックス·シウバという4強がデッドヒートを繰り広げているONEストロー級世界タイトル戦線。そのなかで、内藤とシウバは2連敗中と、タイトル再挑戦に向けて、まさに崖っぷちの状況に陥っていた。
これまで2度対戦し、1勝1敗の両者。お互いを知り尽くした熟練者同士の対決は、お互いの良さを潰し合う、ハイレベルな闘いになっていく。1Rから積極的にテイクダウンを狙う内藤に対して、それをさせまいとするシウバの攻防。この構図は2Rでも変わらないが、少しずつ内藤が押し始める。
そして、迎えた最終3R。お互いに決定打こそ出ないものの、内藤は最後の最後まで“酸素の片道切符”を持って果敢にシウバに飛び込んでいく。ここで試合が終了し、内藤は判定3–0で勝利を収めた。
“激流”の中心はこの男になるのか!?クリスチャン·リーが青木真也を下し新王者に!
そして、いよいよ迎えたメインマッチ。王者·青木真也と挑戦者·クリスチャン·リーによるONEライト級世界タイトルマッチである。天才的な格闘センスを持つリーは、3月に行なわれた日本大会のあとで、青木真也によって次期挑戦者に指名された。
若く、才能に溢れるリーと、これまで10年以上に渡って格闘技界を牽引してきた36歳の青木真也。様々な想いが工作するなかで、闘いの鐘が鳴る。
1Rは、完全な青木ペース。リーは打撃を仕掛けようとするが、青木が巧妙に距離を詰め、倒される。グラウンドの攻防で、“跳関十段”相手に主導権を握ることは難しい。リーは、肘打ちに耐えながらもがくが、青木が腕十字を極める。苦しみに顔を歪めるリーと、冷酷に締め上げる青木。誰もが試合が終わったと思った瞬間、驚異的なバネで青木を押し返し、リーが脱出に成功した。しかし、それでも青木の優位は変わらない。再びリーを倒し、いつ、どの瞬間にフィニッシュが決まっても不思議ではない状態が続く。
2Rでも、青木は積極的に間合いを詰めていく。そして、その刹那。リーの左が青木に入り、次に右が当たる。コーナーに倒れ込む青木。気がつけば、レフリーが試合を止めていた。
格闘技史上に残る大逆転劇。リーが持つ、無限のポテンシャルが、円熟の寝業師を倒した。
これで、青木真也はわずか2ヶ月弱でタイトルを失い、クリスチャン·リーがONEライト級世界王者に輝いた。敗れた青木は、自分の指名を受け、自らに勝利したリーを讃え、「自分がしてきたことと、このタイトルを君に託す」と話した。
これで、日本人王者は再びいなくなってしまった。
しかし、青木真也とクリスチャン·リーの闘いは、緊張感に溢れ、総合格闘技の醍醐味がすべて詰まったような試合だった。