【10/13大会】フライ級WGPでこれまでに学んだ5つのこと
これまでに6試合が行われたONEフライ級世界グランプリ(WGP)は前評判通り、2019年のベストマッチ級好勝負の連続となっている。
そしてトーナメントは10月13日(日)に東京・両国国技館で開催される「ONE:CENTURY 世紀」の第1部のコーメインイベント、“マイティマウス”ことデメトリアス・ジョンソン対ダニー・キンガッド戦でついに待望のクライマックスを迎える。
ここでは、東京・両国国技館での決戦を前に、ここまでのトーナメント戦から我々が学んだことを振り返り、世界グランプリ・チャンピオンシップと、ONEフライ級世界王者アドリアーノ・モラエスへの挑戦権を争うこの決勝戦の行方を占ってみることとしよう。
#1 DJだって苦戦する
3月のONEデビュー戦がいきなり世界グランプリ公式戦となった”DJ”の愛称で知られるジョンソンにとって、ここまでの道のりはけして安易なものではなかった。
準々決勝でジョンソンは、勝負師、若松佑弥と対戦。ところが若松は洗練された打撃の速射砲で、ジョンソンに思いもよらないダメージを与えたのだ。若松はグラップリングでもすばらしいディフェンスを披露、多くのファンが思っていたよりも長い時間にわたって、危機を回避し続けたのであった。
パウンド・フォー・パウンド(体重が同じだと仮定した時の最強選手のこと)と目されるジョンソンは、準決勝ではオールラウンダーの和田竜光と対戦、ここでも苦戦を強いられている。
第1ラウンドの大半を支配したのはDEEPフライ級世界王者の和田であった。和田はジョンソンのバックを取ると、グラウンドでのコントロールを掌握。“マイティマウス”がグラップリングでピンチに陥るなど、これまでほとんど見られることがなかったシーンだ。
欧米のファンは、ジョンソンならONEでの試合を快勝で駆け抜けると思っていたであろうが、これまでのところジョンソンにとっては、キャリア有数の苦戦の連続となっている。そして今回、ジョンソンが史上最大のピンチに見舞われないとは限らない。
#2 キンガッドは「不屈」
キンガッドにとっては、必死の戦いを強いられてのトーナメント勝ち上がりだった。
準々決勝で老かいなベテラン、池田仙三と戦ったキンガッドは、プレッシャーを受けても冷静さを失わず、池田の強力な攻撃をしのぎ切る柔らかさを見せつけ、池田が付いてくることができない速いペースの展開で試合を支配し、判定勝ちを収めた。
準決勝のリース・マクラーレン戦でのキンガッドは、母国のファンが悲鳴を上げる中で大ピンチに陥る。試合開始わずか1分で、マクラーレンはテイクダウンを奪うと、そこからフルマウントに移行したのだ。
キンガッドは、スタミナ消費もいとわずスクランブルで何度も脱出を試みるものの、ポジションはますます悪化するばかりであった。
しかし、5分間にわたって圧倒されてもまだスタミナをたっぷり残していたキンガッドは、ひるまなかった。23才のフィリピン武術チャンピオンであるキンガッドは、そこから2ラウンドにわたって逆襲に転じ、強烈な打撃のコンビネーションとサブミッションの仕掛けで、スプリット判定勝ちを上げたのだ。
つまり、両国国技館でのジョンソン戦でキンガッドがピンチに陥っているように見えても、キンガッドにはまだまだ、試合の様相を一変させるエネルギーとスキル、そして折れない心があるということなのだ。
#3 DJの順応力は抜群
この世界グランプリの開催が発表された時、ジョンソンが優勝候補に上げられたのももっともなことだった。何しろジョンソンには、12度にわたって総合格闘技の世界チャンピオンになったという実績があるのだ。そしてジョンソンは、その強さを見せつけている。
ピンチに陥ることもあったジョンソンだったが、そのたびに試合のコントロールを握り直し、納得の強さで逆境を乗り越えて見せたのである。
ジョンソンは若松戦では最終的にはギロチンチョークで締め落とし、和田戦では後半にギアを上げると、レスリングと打撃で試合を優勢に進め、ユナニマス判定勝ちを収めたのだ。
ジョンソンは、総合格闘技のスーパースターにふさわしい多くのスキルと、グラウンドでの効果的なヒザ蹴りや、リングでの戦いへの順応など、新しい環境への適応能力を見せつけた。
キンガッドがどんな勝負を仕掛けようとも、史上最強アスリート・ジョンソンの敗戦を予想するにはかなりの勇気が必要になりそうだ。
#4 決勝も名勝負は確実
これまでのところ、退屈なシーンなど1つもなかったONEフライ級世界グランプリ。総合格闘技の名勝負の要素満載の決勝戦でも、そこは変わることがなさそうだ。
経験豊富で畏敬すらされている世界王者が、急上昇中の若き才能を迎え撃つのだ。ジャイアントキリングが達成できるのかという点に注目が集まる。
オールラウンダーのジョンソンは、豪快なフィニッシュを狙いに来る傾向がある。これに対してキンガッドは、勝ち星のほとんどが判定勝利であり、15分間をフルに使ってたくさんの見どころを詰め込んで、ONE随一のエキサイティングなアスリートとして認められてきた。
10月13日の対戦はふだんより2ラウンド多い5ラウンド戦で行われる。これまで以上に多彩で鮮やかなアクションが期待できるだろう。
#5 “想像以上”あり得る
このトーナメントに何らかの予測を立てていたほとんどの人は、さまざまに予測が外れたしまったことだろう。
若松の打撃がジョンソンに通用しないと思っていた人は、間違っていたことになる。ジョンソンが和田に楽勝すると考えていた人も、予想を撤回する羽目になったわけだ。
最初の2戦でのピンチを見て、多くの人がキンガッドの勝ち上がりはないだろうと見たのだが、その数分後にはキンガッドは人々の考えを改めさせていたのだ。
10月に日本で行われるこの歴史的トーナメントの決勝戦に、皆さんがどんな予想を立てていようとも、おそらく考え直した方がいいだろう。この物語には、必ずあと1ひねりがあるに違いないのだ。
東京・両国国技館 | 10月13日 (日) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)