【6/8大会】格闘界のサラブレッド、エイドリアン・リーのこれまで
今年3月に18歳になったばかりのエイドリアン・リー(シンガポール / 米国)は、世界的格闘家の兄と姉に続きONEチャンピオンシップで大活躍をしようと意気込んでいる。
リーは6月8日(土)の「ONE 167: Stamp vs. Zamboanga」で待望のプロMMAデビュー戦を迎え、ライト級MMAマッチでアントニオ・マンマレッラ(オーストラリア)と対戦する。
リーは、元ONE女子アトム級MMA世界チャンピオンのアンジェラと現ライト級とウェルター級MMA世界チャンピオンのクリスチャン、そして女子アトム級で活躍した故ビクトリアの弟で、未来のスターとして期待されていた。
タイ・バンコクで行われる同大会を前に、この記事ではリーのこれまでを振り返る。
3歳から格闘技
リーは米ハワイ州オアフ島で、シンガポール人の父と韓国人の母の間に生まれた。
その他の3人のきょうだいと同様にすぐに道場に連れて行かれるようになり、幼い頃からトレーニングを始めた。
リーはこう説明している。
「歩けるようになってから、ずっとマットの上にいるよ。3歳ごろからトレーニングを始めていたと思う」
早くからトレーニングを始め、家族全体が熱心だったこともあり、リーは格闘技に自然と親しんでいった。
このため、若者らしい娯楽を楽しむこともあるものの、生活の中心は常に総合格闘技なのだそうだ。
「普段はMMAに関連したことばかりやっているけれど、たまに週末にゲームをするのも好きなんだ」
競う楽しみを知って
いまでこそONEのケージ「サークル」でキャリアを積み上げたいと強く願っているリーだが、当初は気軽な思いから大会出場を始めた。
父親のケンは護身術と健康のためにトレーニングするよう勧めていたが、大会に出場するかどうかは子供たちの意思に任されていた。
そしてリーはパンクラチオンやアマチュアMMA、レスリング、キックボクシング、サブミッション・グラップリングなどの大会に試しに出場するようになり、そこで勝利のスリルに夢中になってしまった。
競うことが大好きというリーはこうコメントしている。
「MMAのトレーニングはいつも楽しかった。けれども、大会に出るようになってから本当の意味で好きになった」
「何年もかけて着実にだんだんと上達してきた。けれども、MMAに本当に集中するようになってこれが本当にやりたいことだと決めたとき、自分のスキルは大きく伸びたと思う」
姉や兄がONEで活躍したり世界チャンピオンになったりするのを目にし、リーはMMAで生計を立てることを意識していた。
だが、意外にもリーは自身がアマチュアでチャンピオンになるまで、きょうだいと同じように成功できるとは考えていなかったと言う。
「13歳で世界選手権で優勝したとき、自分にも本当にできるかもしれないって思ったんだ」
家族の絆
リーの躍進において、一番重要な要素は家族だった。
両親はコーチであり、一番のサポーターだった。さらに先に道を切り拓いた姉や兄からは節目ごとに重要な助言をもらった。
アマチュアのトーナメントからプロデビューに至るまで、応援してくれる環境に恵まれていたのだ。
「大きなトーナメントは、いつだって緊張するものだ。けれども幸運なことに自分のきょうだい全員はそうしたことを経験しているから、いつだって応援してもらえた」
「兄(クリスチャン)はあらゆる段階で自分を支えてくれた。主に、目標に集中し続けて気を散らさないように、ということを教えてくれた」
「アンジェラは平静でいること、メンタルとフィジカルの両方の健康をちゃんと維持するようにってちょっと教えてくれた」
しかしながら、リー一家は大きな喪失も経験した。
リーは一番歳が近い姉のビクトリアが18歳で亡くなるまで仲が良かった。いまでもビクトリアの思い出からインスピレーションを得て、モチベーションにしているという。
「姉(ビクトリア)とはとても仲が良かった。年も近くて何をするにも一緒だったから」
「自分が姉を尊敬していた理由のひとつは、その意志の強さだった。目標に集中していて、強い意志を持っていた」
ONEデビューへ
アマチュアとしてさまざまな格闘技で活躍したリーは、17歳でONEと契約を結んだ。
リーは、兄のクリスチャンから世界タイトルマッチへの準備のための重要なトレーニング・パートナーとして何度も名前を挙げられており、6月8日のプロデビュー戦に向けての準備は整っているようだ。
「プロ転向は自分で決めたことじゃない。コーチの意見には関係なく、自分は転向する準備ができていた。チャンスがあれば飛びつく準備はできていた」
「プロになる準備は整ったとしばらく前から思っていた。けれども、コーチがちょうどいま、自分のスキルが仕上がったと信じてくれたんだ。だからプロとしてのキャリアを始めることにした」
リーは大きな野望を抱いているが、悪い意味での背伸びをするつもりはない。
懸命な努力があれば目標は成し遂げられると信じているが、それでもタイ・バンコクで行われるマンマレッラ戦から一歩一歩踏み固めていくべき道があるということも知っている。
「いまはアントニオ・マンマレッラを倒すことしか考えていない。だが、その後はライト級チャンピオンになるつもりだし、もしかしたら2階級制覇だってするかもしれない」
「もちろん、これまでに出た試合の経験は、プレッシャーに立ち向かうのに役立つだろう。けれども、ただ自分のやってきたトレーニングを信じて、チャンスが訪れたときのために準備は万端にしておくつもりだ」