アギラン・ターニのコーチが明かす強さの秘密

Agilan Thani KLDC9475

アギラン・ターニ(マレーシア)がONEチャンピオンシップにデビューして以降、コーチのブルーノ・バルボーサはいつもターニのコーナーに付いてきた。ターニが世界屈指のウェルター級アスリートの一人になれたのも、バルボーサあってこそだ。

ターニの総合格闘技は、ブラジリアン柔術を基礎としている。マレーシア・クアラルンプールのジム「Monarchy MMA」のブラジリアン柔術コーチとして、バルボーサはターニを圧倒的な強さを誇るグラップラーに仕立て上げ、そのおかげでターニはウェルター級では最多のサブミッション勝ちを誇る。

だがバルボーサはターニにとっては単なるコーチではない。友人であり、メンターであり、そしで何でも話せる存在でもある。24歳のターニが、格闘家としての将来に疑問を抱いた厳しい時期を経て強くなるのを支えてきた。

ターニは現在、心身ともに健康であり、才能と努力を生かしてメジャー大会の舞台で力強く活躍できると、バルボーサは期待している。

バルボーサへのインタビューで、どのようにターニと強い絆を築いたかや、過去数年のターニの進歩などを解き明かす。

ONEチャンピオンシップ:ターニがこんなに素晴らしい選手になったのは、何によるものだと思うか?

ブルーノ・バルボーサ:アギラン(ターニ)が他の選手と比べ際立っていることの1つは、努力だ。自分が初めてマレーシアに来た2013年から彼を知っている。彼はいつだって向上心を持っている。

このことはファイターにとっては一般的なマインドセットだが、彼の場合はかなり違っている。疲れた時にトレーニングをやめる選手もいるが、彼はその段階に達してもやめない。



ONE:教え子が初心者から世界的なトップ選手になるのを見るのはどういう気分か?

バルボーサ:とてもいい気分だ。その背後には達成感がある。国際大会で活躍する他の教え子と同様、いつでもアギランが総合格闘技の試合でコーナーに付くのは素晴らしいことだ。

雰囲気は素晴らしく、最終週までの合宿全体が非常に激しいものだった。一旦トレーニング合宿モードになると、彼が非常にハングリー精神に満ちたファイターに切り替わるのがわかるだろう。合宿から試合まで、ベストな状態でいるから、とてもうれしい。

アギランは特別な男だ。自分たちは彼を「ジムの子ども」と呼んでいたが、今では彼はもう、そんなに小さくなくなった(笑)。 彼は自分にとって特別な教え子の1人。なぜなら、彼は物事をすばやく吸収するだけでなく、(自分自身とMonaruchyジムの共同創設者でコーチのサミル・ムラベは)アギランから多くのことを学んでいるからだ。

彼が負けているのを見てきたし、それは自分達にとっても本当に辛いことだったが、彼は常に戦えることを証明したいと願っている。彼が負けるとき、彼は1人で負けない。自分たちも一緒に準備をしてきたのだから、私たちにとっても敗北だ。

ONE:ターニがどのように成長してきたかもう少し聞きたい。

バルボーサ:彼と数年を過ごしてきたが、本当に呑み込みの早い選手だ。

教え始めて5年以上が経った。白帯から茶帯になるまで、練習を始めた最初の日と同じくらい一生懸命学び続けている。その上、彼はいつも、状況に対処するために様々な方法を試している。

例えば、特定の位置から脱出する方法について、動きをいくつか教えているとする。彼は言われたようにやるが、いつでも別の方法も探そうとする。先ほど言ったように、こうして自分も彼から学ぶことができるんだ。

ONE:過去数年間、ケガと戦うターニを見るのは辛かったか?

バルボーサ:体の調子が悪くなり、少し苦しんでいるのは知っていたが、自分はいつも、状況の厳しさに応じながら、彼の決断をサポートしようと思っていた。

その間、彼はトレーニング中は気分が良いといつも言っていたが、試合では全く異なるアギランだった。何年も彼を見てきた人は、別人のようだとわかるだろう。例えば、彼はテイクダウンができなかった。

ONE:その期間中の彼へのアドバイスは?

バルボーサ:彼はタフな子で、諦めるということがない。彼に言ったんだ。「戻ってきて昔のようにやりたいなら、自分の体を大事にして、自分の面倒を見ないといけない。やるべきことをやれ。そうやって初めて戻ってくることができるんだ」って

ケガと付き合うのはいつでも大変だ。でもきちんと回復させることが一番だと、彼に教える必要があった。

彼が心配していたのは、手術を受けたら長期間、試合に出られないということだった。スポンサーや他のあらゆることを心配していた。お金を稼ぎ、家賃を払ったり食べ物を買ったりしないといけないと言っていた。

ONE:同様の状況を経験したと聞くが、ターニの参考になるようなことは?

バルボーサ:ああ。自分が23歳の時だった。両膝を手術する必要があると医者に言われたが、今のアギランと同じことを心配していた。医者のアドバイスに従ってうまくいった。

ONE:昨年はそれまでと非常に違っていた。厳しい試練を経験しながらも、2つの大勝利を挙げた。違いを生んだのは何だと思うか?

バルボーサ:最も改善したてんは自律心だ。それまでは自律できていなかったということではなくて、もっと賢く物事にアプローチし始めたということだ。

アギランは誰よりも早くジムに来て、誰よりも遅くまで残っている。コンラッド(ファーラン、ジムの打撃とコンディショニングのコーチ)は彼に新しいプログラムを与え、アギランは徹底的にそれに従った。

今は、コンラッドが彼にトレーニングをしないように言えば、アギランはトレーニングをしない。自分自身のケアがきちんとできるし、それは彼の自律によるものだ。精神的にも身体的にもとても良くなった。彼が勝っている時は全てが簡単だが、問題は負けている時。それは彼が自分たち(コーチ)を必要としている時だ。

ONE:2019年のターニのパフォーマンスをどう評価するか?

バルボーサ:彼は完全に新しいアギランだ。自分には、彼が通常に戻ったように見える。ハイレベルで本当にタフな総合格闘家を相手に、グラップリング(組み技)をテストしてきた。

自分は彼のブラジリアン柔術のコーチであり、自分の仕事は彼のゲームに穴を見付けて修正すること。今のところ、彼は通常通りにトレーニングできている。コンラッドのトレーニングプログラムには本当に感謝している。もちろんアギランの自律とトレーニングにもね。

ONE:今年のウェルター級でのターニをどう見るか?

バルボーサ:かなり良いだろうが、自分達は焦って行きたくはない。

ONE:ターニや他の教え子にとって、自信を父親のような存在だと思うか?このような関係を築くことはどのように重要だと思うか?

バルボーサ:自分を彼らの父親だと思っているし、それが好きなんだ。彼らを尊重し、自分も尊重してもらえるということだからね。

コーチになるのは簡単ではない。なぜなら、アスリートの人生について、知りたいと思う以上のことを知ってしまうからだ。彼の痛みを感じ、一緒に多くの時間を費やす。そして、少なくとも自分にとっては、父親と息子の関係を持たないことは不可能だ。

彼らが負けたら、彼らは悲しいと感じるから、自分は彼らを励ますために寄り添わないといけない。彼らが勝てば、彼らと一緒に祝う。多くのことが起こるから、選手が通常のジムの外での生活と、選手としてのジムでの生活とのバランスを狂わせないように、見ていないといけない。

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