格闘技歴7年のアリ・モタメッドがONEとの契約を勝ち取るまで
アリ・モタメッド(イラン)がついに大きなブレークスルーを果たした。
28歳のモタメッドは12月4日に開かれたONEチャンピオンシップの登竜門大会「ONEウォリアーシリーズ(OWS)」で、7回目の勝利。ONEとの契約を勝ち取り、本大会への出場を決めたのだ。
モタメッドにとっては長い道のりだった。格闘技を始め、最初のパンチを放ったのは7年前だ。
この機会に期待の新星モタメッドについて紹介したい。
イランからマレーシアへ
モタメッドは、イランのテヘランで生まれ育った。最も人気のあるスポーツと言えば、フリースタイルレスリングとサッカーの2つだった。
子どもの頃はサッカーに打ち込み、10代になっても他のスポーツのことは考えたことがなかった。
モタメッドの父親は2010年、イランからマレーシアに移り、レストランを開くことにした。モタメッドも父親を手伝い、現地で学校に通った。
だが父親は新しいレストランのビジネスで思うように成功できず、やがてイランに戻ることを考え始めた。
その頃にはモタメッドは既に、マレーシアに馴染んでいた。親しい友人が何人もできて、いい仕事も見つけていた。だから彼はマレーシアにとどまることにした。
「父はマレーシアがあまり好きではなかった。父親は『イランに戻るつもりだ』という感じだったが自分は行きたくはなかった。マレーシアで自分の人生を始めたかったんだ」
格闘技との出会い
マレーシアに住んでいた2012年、モタメッドは新しい情熱に出会った。
「初めてパンチしたのはほぼ6年前だと思う。それまでは格闘技の試合なんか見たことはなかった。本当の戦いはね。自分が知っていたのは、映画に出てくるアクション俳優のブルース・リーやジャン=クロード・バン・ダムくらいだった」
「友人の一人がムエタイの選手だった。ある時、試合を見に来るよう誘われたんだ。見に行く前はそれが何なのか、何が起こるのか全く想像もつかなかった。でも試合を見に行って、1試合見て、これがやりたかったんだってわかった」
「その次の日にトレーニングを始めた。ジムに行き、トレーニングにトレーニングを重ねた。その日からずっと合宿をしているような感じだ。その最初の日からずっと、プロのように本気で取り組んできた」
モタメッドはサッカーが大好きだったが、ムエタイには他のスポーツにはない魅力をもっていた。人生に何か足りないと感じていたことが、ムエタイのトレーニングを始めて全て満たされた。リングで2人の選手の間で交わされる、純粋な戦いに惹かれたのだった。
ムエタイへの情熱はすぐに燃え上がった。そしてモタメッドは、マレーシアからタイに移り、プロとしてのキャリアを追求しないかという誘いを受ける。
彼はすぐに荷物をまとめ、ムエタイ発祥の地でトレーニングを受けた。そして打撃のスキルを磨いている中、新しい格闘技に出会ったのだ。
「最初の数ヶ月はムエタイだった。それ以前は総合格闘技が何なのかさえ知らなかった」
「(総合格闘技に出会った後)ムエタイよりも好きになった。だから代わりに総合格闘技を始めたんだ。だから自分は全てできる。ムエタイもやったし、ブラジリアン柔術もやった」
両親の支援を受けて
モタメッドは3年間、アマチュアで活躍する。その中で、後にONEのベテランとして知られるクリッサダ・コンスリチャイ(タイ)やエディ・カライ(マレーシア)を破った。そして2016年4月にプロになった。
衝撃的な勝利や屈辱の敗北など、いい時もあれば悪い時もあった。だが情熱を冷ますようなものは何もなかった。
モタメッドは夢を追いかけていた当初、両親にはそのことは隠していた。格闘技のことは隠していたのだ。だがやがて、両親に打ち明けることになる。
「最初、両親は自分が何をしているのか知らなかった。何をやってるのかきちんとは話さなかった。でもようやく打ち明けた時、両親は自分を支えてくれた」
「打ち明けたその日からサポートしてくれたが、両親には気を付けるように言われた。プロとしてではなくて趣味でやってほしいと思っていたんだ」
「でもその後、自分が強くなっていくのを見て、全面的に支えてくれるようになった。格闘技が大好きだったし、おかげでより良い人間になることもできたから」
登竜門大会で頭角
Ali Motamed's 🇮🇷 gutsy performance at ONE Warrior Series 9 earned him a six-figure ONE Championship contract!📱: Watch on the ONE Super App 👉 bit.ly/ONESuperApp🏷: Shop official merchandise 👉 bit.ly/ONECShop
Posted by ONE Championship on Friday, December 6, 2019
モタメッドの総合格闘技への情熱は2018年、OWSへの舞台へと彼を導いた。そこでモタメッドは大きなブレークスルーを果たす。
2018年3月のデビュー戦で、ジョン・ダウン(韓国)に衝撃のノックアウト勝ちを収めたのだ。
たが続く2試合では悔しさを味わった。2018年7月にマーク・フェアテックス・アベラルド(ニュージーランド)に僅差の判定敗けを喫す。さらに今年2月にはシネチャツガ・ゼルトセトセグ(モンゴル)にも破れた。
だごモタメッドはめげなかった。
「勝ち負けが大事なのではない。自分の持てる全てを出しきることが大事なんだ」
「結果は本当にあまり重要ではない。やるべきことができなかったとしたら、それは残念なことだ。でもそれでも構わない。次の試合に向けて頑張るだけだ、というのはあまり好きではない」
モタメッドの前向きな考え方は、最終的に彼を大きなの成功に導くだろう。
モタメッドは8月にユナニマス判定でゼチェリア・ランジ を破り、12月初めに吉野光をスプリット判定で下し、ONEとの契約を勝ち取った。
2020年にはOWSの勢いをそのままに、これまでに学んだことを生かしてメジャー大会の舞台で活躍するつもりだ。
「目標に触れ、夢に触れた。いつだって何かを吸収している。自分の好きなことをしているから強くなれるんだ」