【10/9大会】アミール・カーン、末期癌の父のため「フィニッシュを」
2カ月前、アミール・カーン(シンガポール)の一家はいつも通りの生活を送っていた。しかしある日、父親のタジュディーンの様子がおかしくなった。
10月9日(金)の「ONE: REIGN OF DYNASTIES 」で、ラウル・ラジュ(インドネシア)とライト級総合格闘技マッチで対戦するカーンは父親の健康を心配ながら、床に就くのを手伝った。
そこで、父親は激しい発作を起こした。
「震え始めたんだ」と、カーンは振り返る。
「救急車を呼んで、病院に着いたら、意識を取り戻した。CTスキャン、脳の断層写真撮影、MRI、医者は膨大な検査をした。数週間後、生体検査に行った」
カーンの家族は検査結果を待ったが、医者がタジュディーンの脳から何を採取したかくらいしか推測できなかった。
「母は病院で看護師をしている」というカーン。
「彼女は脳腫瘍か癌の可能性があると言った」
そうした知識はあったものの、カーンの一家が診断を知った時には不信感でいっぱいになった。 タジュディーンはステージIVの癌、すなわち中枢神経系に急速に影響を与える病気である脳のリンパ腫を患っていたのだ。 行動や性格の変化、発作、そして数ヶ月以内に死を引き起こす可能性がある。
「絶望のどん底だった」と、カーンは話す。
「医者は3カ月から6ヶ月だと言った。だが何もわからない、そうだろう?大まかな推測にすぎない。長くは生きられないだろうと言った」
「自分が落ち込んだり、この状況に影響されたりすることを父は望んでいないので、毎日を大切にして前向きになろうとしている。それに、もしかしたら長く生きるかもしれないしね」
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Posted by Singtel Dash on Sunday, February 3, 2019
医師に治療に関する希望を尋ねられた時、カーンの父親は決断を下す必要に迫られた。
「苦痛になるから、父は化学療法を受けないことに決めた。苦しみながら最後の瞬間を生きたくないんだ。 だから自分たち希望を尊重して、ベストを尽くそうとしている」
昨年プロの格闘家としてキャリアの転換を多く経験したカーンは、楽観的でいようと努める。
敗戦や、新型コロナウイルスによるトレーニングの制限、そして父親の病気…。カーンは最も冷酷な現実に直面させられた。多くの場合、人生は予測不可能なのだ。
「自分たちは悪い時もあるが、事実を受け入れ、適応し、成長する必要がある」と、カーン。 「知っておかなければならないのは、悪いことが起こっても、克服して立ち止まらないこと。人生をただ過ぎるがままにしておくことはできない」
実を言うと、カーンが10代の頃苦しんだトゥレット症候群への対処でも、試合での課題を克服する場合でも、タジュディーンは決して息子に諦めることを許さなかった。
例えば、カーンが15歳の時、父親と一緒にタイを訪れた時のこと。プーケットであった初めてのムエタイのタイトルマッチに向けて2カ月間トレーニングをしたのだ。
カーンは「4ラウンド懸命に戦って、最後のラウンドで疲れてきたからやめたくなった」と、振り返る。
「でも諦めようとするたびに、父を見たらそこで応援しているんだ。試合を続ける強さをくれて、結局は試合に勝った」
「父と分かち合った、キャリア初の勝利の瞬間だった」
それが最後ではなかった。
ムエタイの後、カーンは総合格闘技に転向し、2014年にONEチャンピオンシップに参戦した。
過去6年で、カーンは12勝を挙げ、ONEの史上最多ノックアウト記録を8とし、ONEライト級世界王者のクリスチャン・リー(シンガポール)と並んでいる。
カーンにとって記録更新は最優先ではない。だが、その見事なフィニッシュで、父親がどのように感じたか知ることでモチベーションを高めてきた。
「試合に出るときは、父を連れてきて、試合の週を一緒に過ごす。すごいKOをすると自分以上に一番喜んでくれる」
「いいパフォーマンスをしたときは、いつも世界一誇らしい父親になる。友達や家族に教え回って。だから毎回試合ではそれを再現しようとしている。自分はいつもそういう瞬間を一緒に大切にするんだ」
父親は命をかけた戦いを続けている。一方、カーンは今回の試合では、いつも通りのKOアーティストぶりをファンに披露すると約束する。ONEでの最多ノックアウトでリーを超えたいからではない。いつもインスピレーションを与えてくれた父親を勇気付けるチャンスが少しでも欲しいのだ。
「父のためにいい勝ち方をしたい。ただ勝つだけじゃなく、(ラウルを)フィニッシュする。誇りに思ってくれるだろうし、喜んでくれるだろうから」
「父を幸せにして、父の目に喜びを見られたら、自分にとって一番の幸せ。父を気にかけ、愛しているから」
今も昔も、カーンの目標は同じだ。ただ、緊急性は高まった。
「自分の目標はまだ世界チャンピオンになること。目標達成した自分を見てもらうため、父にはここにいてほしい」
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