【5/20大会】ONEフライ級ムエタイ世界GP、出場選手8人を紹介
2018年1月、伝説のムエタイストライカーのサムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)がONEチャンピオンシップ初のムエタイマッチでジョゼフ・ラシリ(イタリア / モロッコ)と対戦した。格闘技界に衝撃が走った瞬間だった。
この試合は好評を博し、世界中のムエタイファイターがONEで自身のスキルを披露したいと思い描くようになった。フェザー級からストロー級まで、男女問わずベテランから10代の新鋭まで、多くの選手が集まってきた。
しかし、これだけの才能を持つ選手がONEに集結しても、純粋な面白みと深みにおいてフライ級に匹敵する階級はないだろう。
そしてこのフライ級で、格闘技ファン垂涎もののトーナメントが5月20日(金)の「ONE 157: Petchmorakot vs. Vienot」で幕を開ける。地上最強の8人のストライカーが集結し、ONEフライ級ムエタイ世界グランプリの初戦となる準決勝に出場する。
シンガポール・インドア・スタジアムで行われる大会を前に、この記事では出場する8選手を紹介する。
フライ級王者のロッタン
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)は、ONE史上最も圧倒的なフライ級ムエタイファイターで、グランプリではこの地位をさらに固めたいと意気込んでいる。
準決勝でジェイコブ・スミス(イギリス)と対戦するロッタンは、世界タイトルの金色のベルトに加え、このトーナメントの銀色のベルトも手に入れようとしている。
24歳のロッタンは、プロ戦績267勝42敗10分。2018年にセルジオ・ウィールゼン(スリナム)戦でONEデビューし、ユナニマス判定で勝利。その後の試合でも3連勝とした。
さらに当時王者だったジョナサン・ハガティー(イギリス)を倒して、ONEフライ級ムエタイ世界タイトルを獲得。以来、ハガティーとのリマッチで第3ラウンドTKO勝利を挙げるなど、3度防衛に成功している。
最近では他の競技にも取り組んでおり、キックボクシングルールでタギール・カリロフ(ロシア)にスプリット判定で勝利。そして、ルーツのムエタイに戻ってダニエル・ウィリアムス(オーストラリア / タイ)をユナニマス判定で下し、この試合は2021年のONEスーパーシリーズのファイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
さらに3月の「ONE X」では、12度MMAの世界チャンピオンに輝いたデメトリアス・ジョンソン(米国)と対戦。特別ルールのスーパーファイトではあったが、総合格闘技ルールも経験した。
残念ながらジョンソン戦はONEでの初黒星となってしまったが、ロッタンはこの試合を通じてどんな挑戦も受ける姿勢を示した。
このため、ONEフライ級ムエタイ世界グランプリの開催が発表された際、王者という立場であろうとも傍観するわけにはいかず、この階級の最高の選手と戦い、ベルトをもう1つ持ち帰るという目標を設定した。
もし、このトーナメントの途中で負けた場合、ロッタンはこの世界グランプリ優勝者と、世界タイトル防衛戦をすることになる。
タイトル奪還狙うハガティー
25歳のハガティーは、戦績18勝4敗。ロッタンにONEフライ級ムエタイ世界王座を奪われて以来、タイトル奪還を目指してきた。
そして、この目標に向かって着実に歩みを進め、直近2試合ではフライ級ムエタイ4位のモンコルペット・ペッティンディー(タイ)とフライ級キックボクシング4位の内藤大樹をユナニマス判定で倒し、今も世界タイトル挑戦者候補であり続けていると強烈にアピールした。
現在1位コンテンダーの地位を手にしたハガティーは、この競技で大物を倒すことができると証明してきた。2019年にはサムエーに番狂わせの勝利を挙げてタイトルを獲得。誰も予想していなかった偉業だった。
ハガティーは長年この階級の上位にとどまっており、グランプリ出場は当然のことだった。しかし準々決勝の相手は、ブラジルの強豪ボルター・ゴンサルベス。厳しい戦いになるかもしれない。
キックとムエタイ両立、内藤大樹
内藤は26歳。キックボクシングとムエタイの両方で34勝9敗という素晴らしい記録を積み重ね、立ち技競技を巧みに両立させてきた。
2019年にONEに参戦して以来、ムエタイルールではアレクシ・セレピソス(ニュージーランド)、ルイ・ボテーリョ(ポルトガル)、サバス・マイケル(キプロス)を相手に3連勝。ハガティーを相手に唯一の黒星をつけられたが、すぐさまキックボクシングでワン・ウェンフェン(中国)に勝利し、盛り返した。
その後、元ONEフライ級キックボクシング世界王者ペッダム・ペッティンディー(タイ)にムエタイルールで勝利し、キャリア最大の勝利を挙げて、トーナメント出場者に選ばれた。
左キックが武器、スーパーレック
26歳のスーパーレック・キアトモー9(タイ)は、フライ級ムエタイとキックボクシングの2位コンテンダー。“キッキング・マシーン”というリングネーム通り、左キックを武器に127勝29敗4分の戦績を築き上げ、ONEではキックボクシングとムエタイで5試合している。
ムエタイでラオ・チェトラ(カンボジア)、ボテーリョ、パンパヤック・ジットムアンノン(タイ)に3連勝としてONEでのキャリアをスタートさせ、その後キックボクシングにも参戦。ファディ・カレッド(チュニジア)を倒し、ONEフライ級キックボクシング世界王者のイリアス・エナッシ(オランダ / モロッコ)とはフルラウンドの戦いを繰り広げた。
スーパーレックは、キックボクシングのタイトルこそ逃したものの、ムエタイの世界チャンピオンに4度なっており、今回はルーツのこの競技に舞い戻ってくる。
もし、準決勝で内藤を倒すことができれば、究極の目標であるONE世界タイトル挑戦へ大きなステップとなる。
真価発揮なるかゴンサルベス
23歳のハードヒッター、ゴンサルベスはONEで0勝2敗だが、これは驚異的な危険なストライカーを相手にしてきたためだ。今回のトーナメントでは、ONEの上位のフライ級選手と対等に渡り合えると証明したいと望んでいる。
2019年10月に東京で行われた歴史的大会の「ONE CENTURY 世紀」でデビューし、ロッタンとフルラウンドの一進一退の攻防を繰り広げ、惜しくもスピリット判定で敗れた。
続いてWBCムエタイチャンピオンのMOMOTARO(小寺耕平)と対戦したが、第2ラウンドでフィニッシュ負けを喫した。
65勝7敗という豊富なキャリアを持つゴンサルベスだが、ONEではまだその真価が発揮されていない。今回のハガティー戦では本来の力を発揮できるかが見どころだ。
経験豊富、復調期すマイケル
WBCとWMCのムエタイ世界チャンピオン、23歳のマイケルは、ONEでのキャリアは順調とは言えなかったが、見逃せない選手だ。
デビュー戦では、経験豊富なシットンノーイ・ポー・テラクン(タイ)を圧倒。その後ONEでの2試合では沈んだが、41勝4敗の戦績を有するマイケルは、チャンスさえあれば一瞬で調子を上げることができるに違いない。
ニューカマーのナセリ
アミール・ナセリ(イラン / マレーシア)は、グランプリのダークホースと言われているが、これはONEの試合にまだ出場したことがないからだろう。しかし、その経歴を一眼見れば、他のトーナメント出場者に劣らぬ脅威だとわかる。
ナセリは30歳、過去に140ポンド級でオムノーイスタジアムのタイトルを獲得しており、タイ人以外でオムノーイのベルトを獲得した2人目の選手となった。タイの2019年キングズ・カップでも優勝し、歴代の名選手センチャイとはフルラウンドの戦いを繰り広げた。
準々決勝でマイケルに勝利すれば、ナセリは世界中のファンや他のフライ級選手からも注目されるに違いない。
英国チャンピオンのスミス
英国チャンピオンとして同国のムエタイ界の頂点に立ったスミスは29歳、戦績10勝1敗1分。昨年ロッタン戦でONEデビューをする予定だったが、新型コロナウイルス規制のためにこの試合はキャンセルされた。
そして、今回ついに王者ロッタンと対戦する機会を得た。もしロッタンに勝つことができれば、すぐさま世界的なスーパースターになり、トーナメントでの上位進出も期待できる。
だが、これまでにONEで9人のストライカーを倒してきたロッタンを相手に勝ち星を挙げるのはそう簡単なことではないだろう。