【9/7大会】手塚裕之と対戦、ラグビー出身のイシ・フィティケフがMMA転向で見つけた「幸せ」
9月7日(土)の米国大会「ONE 168: Denver」で日本の手塚裕之とウェルター級MMAマッチで対戦するイシ・フィティケフ(オーストラリア / トンガ)は、プロラグビー選手になるという夢を抱いていたが、それが叶わないと知ったときに本当の幸せを見つけることができた。
フィティケフは31歳。ニュージーランドの北島に位置するオークランドで育ち、14歳でオーストラリアのシドニーに移った。豪ナショナルラグビーリーグ(NRL)のクロヌラ・サザーランド・シャークスでプレーした後にMMAに転向。これまでの戦績は8勝1敗。
当初、ラグビー選手になるという夢が叶わないと気づいた瞬間について、フィティケフはONEチャンピオンシップにこう話している。
「昔、トヨタカップという大会があった。とても大きな大会で、トップチームで試合をする一歩手前という位置付けだった。NRLの下部の大会のようなもので、そこでプレーした選手のほとんどが1部に選ばれる」
「トヨタカップの選考に落ちて、何をすればいいかわからなくなった。代わりに、他のクラブでトレーニングをする代わりに、これ(格闘技)が自分がやるべきことだと思った」
このことは、フィティケフにとって大きな痛手だった。だが、現在振り返ってみると、選考に落ちたことで新たな道を切り開くことができた。
そして、ラグビー選手になれないという厳しい現実を突きつけられることがなければ、MMAへの転向はなかったかもしれないとコメントしている。
「かなり辛い出来事だった。子供の頃はラグビーリーグの選手になることしか考えていなかった。周りもみんなそうだったから。友達はみんなラグビーリーグでプレーして、ラグビーリーグの選手を尊敬していたから」
「今年は選考で落ちた、と聞かされたときは顔を殴られたような気分だった。でも、どんなことにも理由があるんだ。もし選ばれていたら、いまやっていることをすることはなかっただろう」
「切り替える時期だったんだ。子供の頃から格闘技もやりたかった。勇気を出して、そしてついにやることにしたんだ」
「格闘技は人生観を変えてくれた」
イシ・フィティケフは、いまもラグビーが好きだ。だが、現在では格闘技のほうがより深いものを得られると考えている。
けっしてキャリアの一番の選択肢ではなかったが、MMAに重点を移したことで自身の持ち味を引き出すという新しい目標ができた。
フィティケフはこう説明している。
「スポーツ選手になるだけじゃなく、人間として成長するためにも、この道を行く必要があったと思う。この道のりが、自分自身を見つけるための場所に導いてくれたような気がする」
「精神的にも肉体的にも現在やっていることが幸せだ。エリート級のアスリートというだけではなく、格闘技は自分の心やメンタリティ、人生観を変えてくれた。自分の実力を信じて、諦めないことを学んだ」
「逆境に立ち向かい、忍耐力を持つことも学んだ。ラグビーリーグでプレーしていた頃はわかってはいたけれど、本当にそういう立場になるまではちゃんとわかっていなかったんだ。人生がかかっているし、顔にパンチを食らったら『ああ、これが現実だ』って思える」
フィティケフは現在でもラグビーに関わっており、チームスポーツならではの仲間意識を感じつつ、新たなスキルも活用している。
シドニー近郊を拠点とするNRLのカンタベリー・ブルドッグスのコーチを務め、自身の経験を生かして、大柄な選手を相手にグラップリングやレスリングを取り入れたテクニックを教えている。
「プレーをしなくなっても、ラグビーに関わりたいと思っていた。コーチのアレックス・プラテスのように、コネクションがあるいい人間に囲まれて恵まれていたし、ラッキーだった」
「MMA的なものは教えていない。ただ、シンプルなタックルのテクニックや、いい姿勢、リフトの技術を教えている。やりすぎはよくない。結局は、選手たちはファイターやレスラー、グラップラーじゃないんだ。ラグビーの選手なんだから、あまり複雑なことはしないほうがいい」