思い出の一戦:アミール・カーン、ONEでの初試合
シンガポールのアミール・カーンは、ONEチャンピオンシップ本大会を代表するノックアウト・アーティストであり、ONEの最も輝かしいスターの1人だ。だがそんなカーンでさも、最初は一番下から始めなければならなかった。
6年前、カーンはシンガポールのメガジム「Evolve MMA」に参加し、世界最大の格闘技団体ONEと契約を結んだ。
最初の試合は2014年9月12日の「ONE:RISE OF THE KINGDOM」での、ジアン・カイチー戦だった。カーンはこの試合のことをよく覚えている。
「(ONEで)最も印象に残っている瞬間は、最初の試合だったと思う。初めてというのはいつも、最も記憶に残るものだから」
「カンボジアでの大会だった。ONEチャンピオンシップでの最初の戦いで、カンボジアに行ったのも初めてだった」
19歳の若きストライカーは、何を期待すればいいかわからないまま、コーチのヒース・シムズと父親と共にプノンペンに向かった。
ムエタイでの経験があり、いくつかのアマチュア大会で優勝していたが、プロの総合格闘家としては1勝0敗で、まだ未熟だった。
ONEはカーンにとって大きな一歩であり、到着するとすぐに違いを知ることができた。
「素晴らしい歓迎を受けた。その当時は自分は無名の選手だったから、本当に感動した」
「なぜ彼らは自分をとてもよく扱ってくれるのだろう?自分のような新人の選手にすら。自分はスーパースターのように感じた。本当にありがたかったし、うれしかった」
だがONEとその運営の規模の大きさは、ムエタイのシンガポール王者カーンに緊張をもたらした。
「全体のプロセスは楽しいものだったが、大きな団体で戦ったのは初めてで、自分に注目が集まっていて、神経質になった」
「全てのプレッシャーを感じ、考えられたのは、『早く試合を終えてここを出て、勝利を祝いたい』ということだった」
「試合の日、母といとこたちがホテルに会いにきてくれた。自分は震えていた。自分が何を一生懸命やってきたのかわからなかった!」
カーンは試合会場に向かったが、不安は試合が始まるまで消えなかった。
自分への消えない疑念により、カーンは危機感を感じた。この試合は、自分がここに所属していることを示すチャンスなのだとわかっていた。
「自分はプロのファイターだったが、その最初の試合の時は、ずっと続けていく才能があるかどうかわからず不安だった」
「ONEチャンピオンシップに参戦した時、総合格闘技を始めてまだ数年だった。ムエタイは長いことやってきたが、柔術やレスリングを加えて総合格闘技を始めたのは、3、4年くらいなものだった」
「世界最高クラスの選手と戦えるかどうかわからなかったから、ケージに入った時、頭にあったのは『大丈夫。ベストショットを出して、全力を尽くすだけ』ということだった」
試合が始まり、第1ラウンド中盤に近づいた時、カーンはジャブクロスを放ち、さらに右ヒザをボディに打ち込んだ。続いてパンチの嵐を降り注ぐと、相手はキャンバスに倒れこんだ。
8試合の経験があるベテラン選手を素晴らしい形で倒したことで、カーンの疑念は消え去った。こうして、ONEでそこから築いていく驚異的なキャリアの基礎を打ち立てたのだった。
「2分くらいで倒した。今までで最高の気分だった」
「とてもうれしかった。世界を支配しているように感じた。言葉では説明できない。お金では買えない類の幸せだった」
「その試合でいくら稼いだかということではなかった。大観衆と大きな団体を楽しむことができた、初めての経験だった。ONEのメダルを獲得できたのは、自分にとっては大きな成果だった」
https://youtu.be/9a4Azgk3tQI
あれから6年。カーンはこれまで、ONEで18試合に出場した。史上2位タイの試合数だ。今ではファンのためにパフォーマンスを披露することは自然になったが、カーンはONEでの初めての試合と、その試合が成功へのきっかけになったことを決して忘れない。
さらに、カーンは両親からの応援を受けるために、会場に来てもらっていた。両親を喜ばせることができたと、カーンにはわかっていた。
「息子としては、両親に誇りに思ってもらいたいものだ」
「両親を見るだけで、本当に自分を誇りに思ってくれているのが分かった。言葉で伝えてもらう必要はなかった。見ただけでわかったんだ」
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