思い出の一戦:ジヒン・ラズワン、故郷のデビュー戦で快勝
2018年3月9日、世界中の総合格闘技ファンに、ジヒン・ラズワン(マレーシア)という名の新しい戦士が紹介された。
ジヒンは地元マレーシア・クアラルンプールで開かれた「ONE:VISIONS OF VICTORY」で、プージャ・トーマル(インド)を相手にONEチャンピオンシップへのデビューを果たした。
総合格闘家としてのキャリアはその夜に大きな転機を迎えることになるのだが、トーマル戦のオファーをもらった当初、ジヒンは何を期待すべきかわからなかった。
「コーチ(メルビン・ヨー)にONE参戦のオファーを受けたと言われた時、自分のキャリアの中で『あぁ、また次の試合が決まった。準備しないとね』という感じだった」
「しばらくよくわからなかったが、戻って自分に言い聞かせた。『今回はいつもと違うものになるだろう』って」
「2017年の年末にかけてONEと契約していたから、デビュー戦が決まってうれしかった。その瞬間を長い間待ち望んでいた。母国での試合というオファーは自分にとって特別なことだった」
試合に備えるため、ジヒンは厳しいトレーニングキャンプをこなし、さまざまなスタイルに取り組んだ。
一方、ヨーはトーマルのスキルを何時間もかけて研究し、ジヒンがデビュー戦を白星で飾れるよう、最適なゲームプランを練り上げた。
「自分のキャリアのその時点で、あれは今までで最も大変なキャンプだった。それでも、準備は順調にいったし、いい形でクアラルンプールに入れた」
ジヒンはまだ、プロの総合格闘家としての生活に順応している途上であり、デビュー戦前の最後の数日間は、彼女にとって全く新しい経験となった。
ホテルのトレーニング施設で他のアスリートと一緒にテクニックを磨きつつ、ジヒンはメディアセッションにも参加する必要があった。
大会当日、ジヒンは会場に自身の入場曲が流れる瞬間まで、気分良く過ごしていた。だがその瞬間、信じがたいほどの現実が、現実味を帯びて彼女を襲った。
「もちろん興奮はしていたが、何千人もの人々が集まった大きな会場で戦ったのは初めてだったので、とても緊張していた」
「自分の入場曲が流れるのを聞いて、出ていく時間が来た時、さらに緊張し始めた。自分は非常に感情的な人間で、泣きたくなった。でも、落ち着くよう自分に言い聞かせた」
幸い、その状態は長くは続かなかった。
ジヒンはONEのケージ「サークル」のドアが閉まる音を聞き、やるべき時がきたと気を引き締めた。
ジヒンは第1ラウンドにすぐに、強烈な打撃や巧みな寝技でホームのファンを沸かせた。
「コーチに、トーマルがどういう風に来るかを正確に教えてもらっていた。ありがたいことに、全てはプラン通りだった。相手を倒し、サイドキックを避けるという計画だった」
「第1ラウンドが終わって、(コーチに)同じプランで行くが、フィニッシュするためにもっとうまくやらないといけないと言われた」
第2ラウンドが始まった瞬間、ジヒンはキックを放ってスリップし、キャンバスに倒れた。
だがジヒンはすぐに持ち直した。すぐさまテイクダウンに行き、トーマルの背中を取り、きついアームバーを決めた。がっちり決めたと思われたが、トーマルもなんとか抜け出す。
「彼女はタフで、最初のアームバーでもギブアップしなかった。でも隙を見つけて今度は三角締めに行った」
トーマルはこの三角締めから逃れることができず、第2ラウンド2分23秒でギブアップを余儀なくされた。
レフェリーがジヒンの手を挙げ勝利を宣言した時、ジヒンは「ジヒン!ジヒン!ジヒン!」と叫ぶ観客の、熱烈なエネルギーを感じた。
「信じられなかった。マレーシアでのデビュー戦でサブミッション勝ちできるなんて。これ以上なんて期待できないほど素晴らしいデビューだった」
「勝ったことで自身も深まった。結果が逆だったとしたら、ONEチャンピオンシップでの自分のキャリアは、全く違ったスタートになっただろうと思う」
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