ONE選手秘話:リアム・ハリソン、初タイ修行で受けたショック

Liam Harrison IMGL1247 1

過去20年間に渡り、ONEスーパーシリーズバンタム級のリアム・ハリソン(英国)は、ムエタイの世界で名声を博してきた。

だが何千人もの熱狂的なファンの前で対戦相手を制圧するようになる遥か以前、ハリソンはムエタイのスターになることを夢みて、英国とタイの間を行き来していた。

「16歳か17歳の時だった。英国で試合を終えたばかりの時。ジッテイという名前のタイ人のトレーナーがしばらく来ていたんだが、彼に言われた。『きみはタイの自分のジムに来てトレーニングするべきだ』って」

「そうしているファイターはたくさんいて、タイでの試合や向こうで得られる経験などについて聞いていたから、ジムにいた他の人に言ったんだ。『それじゃあ、行ってやってみようか』って」

まだタイでのトレーニングに関する情報を入手するのが困難だった頃のことだった。そのため、ハリソンは自分が何に夢中になっているかをわかっていなかった。また、1日2回のトレーニングセッションがそれぞれ3時間続くため、彼はすぐに、発祥の地でムエタイを学ぶことは、故郷での経験とは全く違うことに気づいた。

「行ってみると、ただただショックだった。暑さも、トレーニング方法も。それに、自分とは全く体格の違う相手にあちこちに投げられた。あれはショックだった」と、34歳になったハリソンは振り返る。

「3週間だけしかいなかった。試合に出るつもりだったが、結局、戦うことはなかった」



ハリソンはその最初の旅行中、タイの歴史的なスタジアムで戦うことはできなかったが、その経験は彼に、非常に強い印象を残した。

「飛行機から降りて暑さと高い湿度の中に身を置くとすぐに、全く別の世界に来たと理解できる。精神的なものだ」

「備えることができるようなものではない。何度人から聞いていたとしてもね。あの暑さの中で3時間のトレーニングをこなし、何マイルも走るというのは。頭ではわかるかもしれないが、トレーニングを始めて10分で死にそうになるまでは、本当の意味に気付くことはない」

しばらくして、ハリソンは気候とトレーニングに順応した。そして彼は、学びにきたことを吸収することができた。

「ジムのトレーナーは、エリートレベルのスタジアムでチャンピオンになった人たちだった。自分は彼ら1人1人から、少しずつ色んなことを学んでいた」

「その3週間で得た知識の量は、英国だったら学ぶのに数ヶ月かかっていただろうし、自分が本当にこれをやりたいんだと分かっていた」

もちろん、ハリソンはタイ滞在中、その活気に満ちた文化も探求したいと思っていた。

「全てを見てきた。観光とか、そういう全ての事をやろうとしていた」とハリソンは思い起こす。「外に飲みに行く夜もあった。今まで行ったことのない場所だから、この素晴らしい国にいる間、ただジムの中に閉じこもっていたくはなかったんだ」

ハリソンはやがて涼しい英国に戻り、タイで学んだことをうまく生かすことができたものの、タイでのきついトレーニングが恋しかった。

「スパーリングをする中で、たくさんの小さなヒントやテクニックを学んでいたんだ。足払いやクリンチでの投げだ。でも英国に戻って、グループクラスにいると難しい。フルタイムのトレーナーが7人歩き回っているわけじゃないからね」

「タイにいて、他に何も心配することなしに、自分自身のトレーニングに打ち込めるというのが最高だった。パッドを蹴り、次にパートナーのために自分がパッドを持つ必要はなかった。7、8人の優秀なトレーナーが自分だけを見ていてくれたんだ」

それから1年半の間、欧州の大会で活躍を遂げる中で、ハリソンが考えていたのはタイに戻ることばかりだった。

ハリソンはまた、最強の選手になるためには、最強の相手を倒す必要があることも分かっていた。そして19歳の時、2年間タイに移り住み、ムエタイに打ち込んだ。

「タイに戻った時、 『他の全ての選手と同じように自分を扱ってほしい』と言ったんだ。最初の半年は、他のタイ人選手と同じようにジムのマットの上で寝た。そうやって生活していた。それが自分がやりたかったことだった」

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タイ人選手と同じように生活し、トレーニングし、試合に出る、というハリソンの熱意は報われ始める。そして、一流のスタジアムの選手たちと交流を深め、戦うようになった。

「たくさんの試合に出るようになった。スタジアムのチャンピオンやエリートレベルの選手たちと戦った。誰もが自分のことを知っていたから、とても素晴らしかった」

「自分が考えていたのは、『そうだ、これが今、自分がやりたいことなんだ。ここで名を上げてて、その経験を英国に持って帰って、もっと有名になりたいんだ』ということ」

ハリソンがONEのケージ「サークル」で夢の対戦の機会を得て、さらにONEバンタム級世界王者ノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)からベルトを奪うことができたとしたら、ハリソンはその名前をさらに上げることができるだろう。

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