【11/22大会】セージ・ノースカットの姉コルビーがONEデビューするまで
11月22日(金)、コルビー・ノースカット(米国)は弟のセージ・ノースカットの後を追い、ONEチャンピオンシップデビューを果たす。
ノースカット姉弟は、ONEライト級世界王者クリスチャン・リーと姉のONE女子アトム級世界王者アンジェラ・リーと同じような格闘技界での成功を目指している。その目標への次の一歩となるのが、シンガポールのインドア・スタジアムで開催される今大会の「ONE: EDGE OF GREATNESS」だ。コルビーは、この大会でフライ級の試合でプトゥリ・パドミ(インドネシア)と対戦する。
36回、空手の世界チャンピオンとなったコルビーは、ONEで勝ち抜いていけるだけの卓越したストライク技を持つ。バックにはエリートチームがつき、彼女の勝利を後押ししている。
ONEデビュー戦に先駆け、26歳のコルビーは、格闘技を始めたきっかけや、どのようにONEで成功するために必要なツールをすべて兼ね備えたエリート格闘家として育て上げられたかについて語った。
幼い頃から競技生活
ノースカットの体には格闘家の血が流れている。父親のマークはシュリ流空手の黒帯で、子どもたちがトレーニングを始められる年齢になるとすぐに格闘技を教え始めた。
コルビーは父の指導の下、7歳でトレーニングを開始。弟のセージもそのすぐ後に4歳で格闘技を始めた。
ノースカットは、両親と兄弟と共に世界を巡ってトップレベルの対戦相手と戦い続け、空手とキックボクシングのランキングをどんどん登りつめていった。
「それが自分の子供時代だった」と、ノースカットは語る。「弟と私はこの両親のもとに生まれて本当に幸運だった。私たちが世界中を旅して試合に出るためにできる限りの時間とお金を費やしてくれたのだから」
「ロシア、アイルランド、クロアチア、イタリア、どこでも考えられるすべての場所で私たちはトーナメントに参加した。週末に友達と遊んだりパーティーに行ったり、そういう普通の子供時代ではなかった」
「トレーニングをして、週末は試合に出て、家族といつも一緒だった。とても楽しかった」
格闘家になるための代償
トレーニングと試合ばかりしていたノースカットは、思春期から大人への成長過程も他の若者たちとは違っていた。
米国の高校生の多くが楽しむようなことはあまり経験できなかった。卒業パーティーのプロムにも出なかった。常に格闘技と勉強だけに集中していたからだ。
「時々、振り返って、『プロムってどんな感じだったんだろう?』と考えることはある。その時はメキシコでトーナメントに参加していたの」と、テキサス出身のノースカットは語る。
「自分の育った過程の何ひとつ、変えようとは思わない。みんなと同じような子供時代じゃなかったことには本当に心から感謝している」
高校を卒業したノースカットは難しい決断を迫られる。当時、格闘技界では女性には男性ほどの機会が与えられなかった。そこで、ノースカットは大学での勉強に力を注ぐことにしたが、格闘技は彼女の人生の大きな一部のままだった。
「高校を卒業したばかりの18歳の時、大学に行くか格闘技でプロになるかを考えた」
「その頃、女性格闘家の報酬は高くなかったから、格闘技をキャリアにできるのか、大学に行くべきなのかわからなかった。それから数年間はアマチュア試合に出場して、トレーニングに長時間を費やした。結局、大学には戻って卒業はしたけれど」
「ずっと、プロの格闘家になるのが夢だった。でも最初の頃はそれで十分に稼いでいけるのかが心配だった。あの頃から考えると、今こんなに多くのことができるなんて本当に素晴らしい」
弟のセージは大学に通いながらプロの格闘家として活動を始め、トップレベルの試合に出場したが、コルビーは異なる道を選んだ。しかし、最終的に総合格闘技にフルタイムで取り組み始めた時、姉弟は同じ夢を生きることになった。
プロデビューと試練
空手のプロとして、またアマチュア総合格闘家として成功を収めてきたノースカットは、2017年、総合格闘技プロデビューを果たした。
デビュー戦は思ったようにはいかなかった。第2ラウンドでTKO負けという、予想外の結果となったのだ。総合格闘家としての将来に不安を覚えたノースカットだが、結局は決意をさらに強めることとなった。
「プロデビュー戦での敗北は、(格闘技のキャリアにおいて)間違いなく最もつらい瞬間だった」と、ノースカットは認める。
「自分がどこで間違ったのか、どうしたら向上できるのかじっくり振り返って考えさせられた。もちろん、初めての試合だということはわかっていた。でも、『本当にこれがやりたいことなの?』と自分に問いかけざるを得なかった」
「もうそんな気持ちにはなりたくなかったから、自分を変えようと決めた。実現できて本当に嬉しい。あの頃は、幸せだとは感じられなかった。今はすべてに心から感謝している」
自分を変えるための行動の一つとして、ノースカットはテキサス州からカリフォルニア州に移り、新たなコーチ陣の下でトレーニングを始めた。11月22日の試合でその結果を披露するつもりだ。
「今回の試合は、まったく新しいチームで臨む。今所属しているのはTJ・ディラショーがトレーニングをする『Treigning Lab』で、コーチはマーク·ムニョス、サム・カラビッタ、フアン・アーチュレッタ。夫のレイモンド(ダニエルズ)も同じジムでトレーニングしている」と、ノースカットは話す。
「新しいコーチと新しいチームの下でトレーニングをしてきた。今回の試合では今までとはがらりと変わったコルビーを見せられると思う」
世界タイトルを目指して
ONEデビュー戦への準備を進めるノースカットが見すえる目標は高い。リー姉弟の成功を目の当たりにした今、長期的には弟と共に世界王者になることを目指している。
これまでのキャリアでストライキングを極めてきたノースカットは、キックボクシングでONEスーパーシリーズにも参戦したいと考えている。だが、今考えているのは総合格闘技のことだけだ。
「今、ONEの女子総合格闘技ではフライ級の世界タイトル保持者はいない。ぜひ、今後の数年で試合を重ね、フライ級女子総合格闘技初代世界チャンピオンになりたいと思っている」と、ノースカットは話す。
そしてまた、弟のセージと共にONEの大会に出場する機会も心待ちにしている。子どもの頃は何年も一緒に大会に出て戦ってきた。
「もちろん、それが実現したら本当に嬉しい」と、ノースカット。
「弟は少しの間、怪我で試合ができない状況だけれど、最後の試合の前にそうなったらいいねと話していた。彼と同じレベルになって、一緒に大会に出場するのが目標だ」