長南亮が語る、佐藤将光と若松佑弥の成長
長南亮は、元総合格闘技のチャンピオンで、世界級のアスリートを次々と生み出しているジムのオーナーでもある。
経営する東京都練馬区の「Tribe Tokyo MMA」の成功の秘密はいくつもある。
例えば長南は、これまでに多くの強敵と対戦し、北米の団体でチャンピオンになったアンデウソン・シウバをサブミッションで倒したこともある。ダン・ヘンダーソンら伝説的な選手と共に米国のジム「チーム・クエスト」でトレーニングをしていた時期もあり、自身のジムでは海外と国内での経験を生かして指導している。
また、長南は自身のトレードマークである次々と攻撃を繰り出すスタイルばかりでなく、誠実さ、人格、そして規律といった価値観も、指導するアスリート達に教え込んでいる。率直な性格と、努力とトレーニングの一貫性を重んじる態度はよく知られており、そのアドバイスは時に手厳しい、
そんな長南のジムのトレーニングに参加する佐藤将光と若松佑弥は、そこで得たスキルやその考えを体現し、ONEチャンピオンシップのアスリートとして活躍している。
レベルアップ後押し
修斗バンタム級世界チャンピオンの佐藤は2018年、齊藤曜を相手に黒星を喫した後、長南のジムでトレーニングを始めた。
佐藤はトレーニングと試合に対するアプローチを練り直したいと考え、毎週行われている過酷なトレーニングセッションでに参加したいと申し出た。
そこから佐藤の飛躍は始まった。同年11月に齊藤と再戦し、TKO勝利でリベンジを果たしたばかりか、これまで連勝を続けている。
「寝技の逃げの部分や、止まってはいけないところで止まったりしていた」と、長南は当時の佐藤を振り返る。
「うちのジムに練習に来た時に、彼に足りないと思ったことをアドバイスして、自分のジム(佐藤が代表を務める「Fight Base」)にも持ち帰ってやってくれたんじゃないかな」
佐藤は、謙虚で誠実なトレーニングに対する姿勢で、今日世界で最も期待されるバンタム級アスリートの1人になった。すでにエリートレベルにあるアスリートでも、弱点克服に取り組むことで、さらに成長ができるという証拠だ。
「(佐藤のスタイルが)オールラウンダーになったと思う」と、長南は語る。
「打撃は勝負できるけど、寝技になると抑えられちゃうと言う弱点を大分克服できたと思う。色々できて、色々考えて、いろんな技をチョイスできる。ストライキングで勝負したり、グラウンドで勝負したり、うまくコントロールできてる」
総合力を高めた佐藤は、「格闘技の本拠地」ONEで世界タイトルに挑むのに必要な技術ばかりではなく、心構えも手にした。寡黙な32歳の佐藤は、昔ながらの「侍スタイル」でトレーニングに挑む、真剣でストイックな格闘家なのだ。
長南は、6連勝中の佐藤が、ONEバンタム級世界チャンピオンのビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)に今年中にも挑戦できると信じている。
「ONEのタイトルに近いと思うので、ビビアーノと戦って勝ってほしい。コロナがなければ、今年中盤と思っていたが、収束したらそのときに試合をするのでは」
“問題児”をヒーローに
佐藤はすでにスターとしての地位を確立した状態で指導を受けた。一方、若松は、“問題児”だった若松を一から格闘家に育て上げた。
「19歳の時に九州からうち(のジム)に来た。九州で、すごいヤンキーで、向こうで暴れまくって手がつけられなくて」と、長南は若松について語る。
だが、可能性を見出した長南は、若き才能をチャンピオンの資質を有する格闘家にまで育て上げた。
「前はアップダウンが激しかった。ガーッと責めるときは強くって、やられるときは弱いっていう。スタミナを全部使い果たしたり。今は考えて動けるようになってきていると思う」
「(練習中は)細かいところを教えている。打撃のコンビネーションとか、グラウンドでの逃げ方とか。まだ進化している」
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Posted by ONE Championship on Monday, September 9, 2019
若松は爆発的で鋭い打撃スタイルで人気を獲得した。戦績の12勝のうち、判定勝ちは2つのみだ。
口数が少なく、控えめな性格からは想像もつかないほど、素早く雷のような攻撃に出る。そんな若松の資質について、長南はこう断言する。
「(若松がどれほど特別かは)あまり言う必要はない。試合を見れば分かる」
若松は、そのKOパワーでONEの舞台に辿り着き、そのスピードとタイミングで世界中の観客を魅了している。長南は、その隠れた才能を6年前に見出していた。
「初めて会った時からスピードがあった。鍛えたらこいつは強くなると思った。あとはちゃんと練習するかしないか」と、長南は出会いを振り返る。
「パンチ力がずば抜けて強いし、センスがある。それでたくさんKOしてきた。2階級くらい違うパンチが打てる」
長南は、かつては問題児だった若松が今やインスピレーションを与える存在になっているとも付け加えた。
「(若松は)変わったと思う。来たときは子供だったので。よく怒ってたし、よく練習来なかったりということも、最初の頃は多かった。でも今自分に何が必要かっていうのは分かっていると思うから。全て自分が見てきて、大きく変わったなって。若い子たちも彼みたいになりたくて、入門してきている。見本になる人間になりつつある」
2019年、東京・両国国技館で行われた「ONE: A NEW ERA 新時代」であったONEフライ級世界グランプリ1回戦。若松は12度フライ級世界チャンピオンになったデメトリアス・ジョンソン(米国)を相手に自身の力を試す機会が訪れた。
長南は、若松がこの機会に備え、十分な準備を重ねてきたと信じていた。結果は第2ラウンドでサブミッション負けだったが、世界の強豪を相手に十分戦える力があると証明できたと言う。
「あのときは自分たちの方のチャレンジだった。自分も世界最強の男がどんなものか分からなかったから」と、長南は振り返る。
「俺たちは通用するのかどうかっていうところから、2人で勝負しにに行って、通用するところは通用したと思う。(ジョンソンを)苦しめることもできた」
「最後のチョークの前の展開で、もっとプレッシャーかけれれば。テイクダウンディフェンスができればもっと苦しめられたし、KOの可能性もあり得たんじゃないかなって」
長南は、若松がONEでフライ級の頂点に立つための道のりを辿っていると信じている。そこにたどり着くまでには、これからも実力を証明し続けなくてはいけない。
「(若松は)王者になる可能性がある。ならなければならない」と長南は話す。
「できればタイトルに近づけるカードを組んでほしい。一番強敵と思っているのが、リース・マクラーレン(オーストラリア)」
長南のような指導者に恵まれた若松の未来は明るいだろう。
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