【1/31大会】リト・アディワンが「チーム・ラカイ」で才能開花するまで
リト・アディワン(フィリピン)は、自分の人生の夢を叶える方法はないと思っていた時期もあった。だがやがて、ある総合格闘技チームと出会いその才能を開花させたのだった。
26歳のアディワンは1月31日(金)にフィリピン・マニラで開かれる「ONE:FIRE & FURY」で、ポンシリ・ミートサティート(タイ)と対戦する。アディワンは何年もの間、フィリピンや東南アジアを周りながらアスリートとして生計を立てようと試み、そして最終的に、その運動能力の可能性を解き放つ、最良の方法を見つけたのだった。
アディワンは首都マニラの北方約250㎞にあるバギオ市の郊外の町で生まれ育った。7人兄弟の末っ子で、若い頃は農場で父親を手伝っていたが、いつかアスリートになる日をいつも夢見ていた。
クラスメートはみんなバスケットボールをしていたが、アディワンが興味があったのは格闘技。アディワンの小さい頃はちょうど、フィリピン出身のボクシングのスーパースター、マニー・パッキャオが台頭してきた時期で、アディワンは10歳の時、パッキャオに憧れてボクシングを始めたのだった。
高校時代にはアマチュアレベルで優れた才能を発揮し、大会では学校代表にも選ばれた。だがやがて、大きな変化を経ずにボクシングに留まるなら、活躍のチャンスは限られていることに気づいた。
だが幸い、新しいスポーツでキャリアを始める機会がすぐそこに待っていた。
「バギオでは誰もちゃんとしたボクサーになれないとわかったんだ。だってマネージャーがいなければあまりチャンスがないから」
「コーチに言われたんだ。別の分野に移らないと、ボクシングで得たものが無駄になるって。それで、自分はボクシングのスキルがウーシューに役立つと考えたんだ」
「ジムでトレーニングしていた時、バギオ大学のコーチの一人がスカウトしてくれた。大学の代表チームに入るよう誘ってくれて、奨学金も提供してくれた。こうやって全く違う生活が始まったんだ」
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アディワンはバギオ大学で教育学を学び始め、ウーシューの大学代表チームでの活躍により、全国チームにも選ばれた。
だが学業とスポーツの両立は困難で、アディワンはどちらか1つを選ぶように迫られた。これまでの人生で思い描いていた夢を考えれば、難しい決断ではなかった。
「今でも学位を取得したいと思っている。でもあの時、これがまず最初にやりたいと決めたんだ」
「もう少し年を取ったら、学位を取って、先生になろうと思えるかもしれない。でももうその頃には今みたいに戦うことはできないだろう。あの時、これが自分の追求したい道なんだって思って、飛び込んだんだ。結果がどうであれ、後悔することはないとわかっていたから」
アディワンはトレーニングのかたわら、生活のために建設現場で働き、やがて海外で働くチャンスを手に入れた。
アディワンはマレーシアとタイでのコーチとして働き、格闘技にフルタイムで関わる充実した生活を送っていた。だが、彼が本当に望んでいた、選手としてキャリアに集中して取り組むことはできなかった。
6勝2敗という十分な戦績を築いたが、自分の期待を上回ることはできなかった。そしてフィリピンに戻って初めて、名門格闘技ジム「チーム・ラカイ」と出会い、いつも望んでいたような活躍を始めることができたのだ。
ONEチャンピオンシップの人材育成・発掘のための大会「ONEウォリアー・シリーズ(OWS)」にスカウトされたのち、ジムでの努力が実り、OWSきっての有力選手の一人となった。
「チーム・ラカイで際立っていたのはチームワーク」
「彼らはお互いに改善し合うことに重きを置いているんだ。それはアスリートとして必要なこと。自分の経験では、それは他のチームに足りないものの1つだと思う。たとえ他の全ての設備やリソースを持っていたとしても、自分ばかりに集中して他のチームメイトを顧みないような選手ではだめなんだ」
「チーム・ラカイでは、お互いを次のレベルに上げたいと思ってた。より経験のある選手たちが他を手伝い、結果としてチーム全体が強くなっているんだ」
アディワンはOWSでの3勝により、ONE本大会への契約を勝ち取った。そして2019年10月に迎えた、格闘技史上最大の大会「ONE:CENTURY 世紀」で、池田仙三(仙三)を破り見事なデビューを遂げた。
今やアディワンはONEで着実な成果を挙げ、「パッキャオのような世界的なスーパースターになる」という子どもの頃の夢は手が届くところまできた。その夢を叶えるため、チームと協力しながら、為すべきことに集中して取り組んでいくつもりだ。
「今の目標は、試合の度に、アスリートとして、そして人間として、より進歩しているところを見せること」
「将来的には、世界タイトルを手にし、世界最強中の最強の選手と戦っていきたい」