【9/6大会】MOMOTAROーシャイな少年がONEの選手になるまで
リングネーム「MOMOTARO」として知られる小寺耕平。リングに立つ彼には自信がみなぎっている。
9月6日(金)にベトナム・ホーチミンで開かれる「ONE:IMMORTAL TRIUMPH」で、MOMOTAROはシットンノーイ・ポー・テラクン(タイ)と対戦する。ONEスーパーシリーズで最もスキルがあり、スムースな試合運びを見せる選手の一人となったMOMOTARO。昔の彼を知る人には、29歳となった今の彼の功績は、信じがたいことかもしれない。
MOMOTAROはかつて、抜群な運動神経にもかかわらず、自分の殻に閉じこもっていた。その殻を抜け出すきっかけになったのが、キックボクシングのジムに入門してONEチャンピオンシップへの道を歩み始めたことだった。
試合を前に、気弱な少年だったMOMOTAROがチャンピオンになるまでの道のりを紹介する。
スポーツ少年
MOMOTAROは東京近郊の埼玉・朝霞市に生まれた。運動神経抜群な少年で、5歳で空手を、8歳で野球を始めた。
学校の成績は今一つだったが、 特に陸上を始めてからは、それを補うものをスポーツの分野で見せた。
「勉強は得意ではなくて、体育の授業だけが好きだった。走ることが好きで、学校はそのために行っていたようなもの。体を動かすのが好きだったんだ」
その才能にもかかわらず、彼は引っ込み思案で、仲間との付き合いに自信が持てなかった。
「とても内気で、他人とうまくやってくのが下手だった。だから、すごく仲の良い人たちとだけ付き合っていた。それに女の子と話したことはほとんどなかった」
コーチの教え
大学に入ると格闘技が彼の救いになった。東京・池袋の「OGUNI GYM」でキックボクシングを始めたのだ。
トレーニングを始めた頃は、試合に出るつもりはなかった。だが才能の片りんを見せつけると、すぐに近藤彰コーチに説得されて、リングへと上がることになった。
「キックボクシングを始めたのは、体を鍛えたかったから。あと、女性にもてたかった!」
「プロになりたくて始めたわけじゃなかった。でもコーチが勧めてくれて、一か月後にアマチュアの試合に出ることになった。その試合に勝って、6か月後にはプロテストを受けた」
「その時もまだ、プロデビューは考えていなかった。でもプロのライセンスも悪くないかなって思ったんだ。コーチの言葉に従っておいて本当によかった」
近藤コーチは格闘技を教えるだけでなく、新しい場所に連れて行ったり、新しい人を紹介したりすることで、MOMOTAROの視野を広げた。彼はより社交的になり、人付き合いもうまくなった。
リングで選手の最大限を引き出す、コーチとしての力量だけでなく、プライベートな部分でも彼を導くその人柄も相まって、近藤コーチはMOMOTAROのキャリアにとって不可欠な存在となった。
「最初に自分にキックボクシングを教えてくれた人だし、今も彼が一番自分をよく理解してくれる。一緒にONE来てほしかったんだ。世界最大の舞台にね。」
日本のトップ
MOMOTAROはキックボクシング、シュートボクシング、そしてムエタイで、戦いに夢中になった。リング名「MOMOTARO」は、彼が昔話の「桃太郎」に似ているからと、コーチが名付けてくれたものだ。
勝利に勝利を重ねて、MOMOTRAOの名は有名になっていった。 ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)のフェザー級王者、WBCムエタイの日本フェザー級王者の座を手にし、日本トップの格闘家の一人になった。
「過酷なトレーニングを乗り越えて掴む勝利の感覚は最高。試合後のお祝いに、友人と食事に出かける時が一番好き」
「だから続けられる。やめられない。この一連のサイクルがやみつきになる」
彼は勝ち続け、そして東京の後楽園ホールで、WBCムエタイ国際フェザー級の世界戦に挑むチャンスを得た。
MOMOTAROはスペインのカルロス・コエロ・カナレスを第2Rノックアウト勝ちで下し、世界チャンピオンのベルトを獲得した。これまでのキャリア最高の瞬間だった。
「あのタイトル戦は、今までで一番きつかった。ものすごい時間と労力をつぎ込んだから。周りのみんながトレーニングを手伝ってくれて、気を配ってくれた。プレッシャーも大きかった」
「試合の前、考えたんだ。みんながこれだけしてくれたのに、負けたらどうしようって。無事に勝てて、ベルトを着けられてほっとした」
万全を期して
MOMOTAROは既にONEで一度、勝利を挙げている。ケニー・ツェを判定勝ちで下した一戦だ。しかし彼は今、もう一段、上を目指したいと思っている。
これまで数々の功績を積み重ねてきたが、格闘技は仕事の傍らでやってきた。
だが、ムエタイ世界王者を何度も経験したシットンノーイを倒してトップに上り詰めていくために、万全を期して集中できる環境を整えることにしたのだ。
「ONEで勝つことだけに専念するため今年5月、仕事を辞めた。今は一日に2回トレーニングしている」
「フライ級はタレントの宝庫。自分の目標はそのベルトを手にすること。」
目標はチャンピオン。さらにMOMOTAROは、ONEに参戦することで、世界中から集まった強豪と戦って自分を試したいと思っている。
「秋元皓貴を倒したジョセフ・ラシリと戦いたい。秋元が敗れたのはその時が初めて。本当に驚いた。だから彼と戦って自分自身を試したい」
「ジョナサン・ハガティーや他のヨーロッパの選手は、自分と彼らの戦闘スタイルからすると、面白い対戦になるだろう」