【10/13大会】ボルター・ゴンサルベスがムエタイでスラム街を抜け出すまで
ボルター·ゴンサルベスはブラジルのスラム街で生まれた。だが、不屈の精神と成功を目指す決意が彼を世界最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップ参戦へと導いた。
21歳のゴンサルベスは東京・両国国技館で開催される「ONE: CENTURY 世紀」の第2部となる「ONE: CENTURY PART II」でムエタイフライ級世界王者ロッタン·ジットムアンノンに対戦を挑む。この大きなチャンスは、貧困からムエタイの世界的スターに登りつめた彼のキャリアの頂点ともいえる。
10月13日(日)にゴンサルベスが戦う舞台は、彼が生まれ育った質素な環境からはこれ以上ないほどかけ離れている。史上最大級の格闘技イベントで何百万という大観衆の前で試合をするのだ。
両国国技館でサークルに足を踏み入れる日を目前に、貧しい子ども時代から世界的な格闘家になるまでの壮大な道のりをゴンサルベスが語る。
スラムの貧困
ゴンサルベスはブラジル·フォルタレザのファヴェーラ(スラム街)で生まれ、両親と弟とともに暮らしていた。大部分は幸せな子供時代を過ごしたといえる。
「子供の頃は、ただ友達と遊ぶのが楽しかった。外に行ってファヴェーラのほかの子供たちと遊んだり、凧を上げたりサッカーをしたりしていた」と、彼は語る。
だが彼の住む貧しいスラム街では、生き延びることすら困難になる時もあった。
「家族との暮らしで一番つらかったのは、食べるものがない時だった。米やちょっとしたソーセージすらもないんだ」と、ゴンサルベスは思い出す。
大きくなるにつれ、一家のおかれた状況の現実がひしひしと感じられるようになったゴンサルベスは、家族を貧困から救うためにはストリートでぶらぶらするよりも生産的なことに時間を使わないといけないと気がついた。
家族のつらい境遇が、成功を目指す最大の動機となったのだ。
「この体験が、勤勉で、夢想家で、意志の強い今の自分を作り上げる原動力となった」と、3度ムエタイ世界王者に輝いたゴンサルベスは言う。
「もうあの生活には戻りたくない。家族の暮らしも自分の暮らしも、変えてみせると誓った」
人生を変える
ゴンサルベスは、ファヴェーラから抜け出すためのベストな方法は格闘技だと信じていた。
5歳の時に父のアシスが初めて空手のクラスに連れて行ってくれた。だが、ゴンサルベスは早々にムエタイのクラスに移った。ムエタイの方が、彼の負けず嫌いの性質をうまく伸ばしてくれたからだ。
「ムエタイを始めた頃、一番気に入っていたのはスパーリングだった。挑戦するのが好きだったんだ」
試合に参加し始めるのに長くはかからなかった。そこでゴンザレスは自らのリングでの実力を知り、将来の成功への可能性を見出したのだ。
「最初の試合は引き分けだった。勝ちはしなかったが、自分は競うことが好きだと気付かせてくれた体験だった」
「8歳だった。試合をした時に、これが自分のいるべき世界だと感じた。その時、自分に言い聞かせたんだ。『初めての勝利を手にするまでは戦い続ける』と」
「初勝利を収めた後、家族を救い出せるかやってみようと思った。これで名を立てられるかもしれないと思ったんだ。もっと大きな挑戦を目指して、キャリアを立てることができると思った」
「試合に参加し始めて、ベルトを勝ち取ることで人生を変えられると気づいたんだ。今回の東京でもそうするつもりだ」
タイでの成功
ブラジルのランキングでトップに登りつめたゴンサルベスは、ついに周囲の勧めに従い、ムエタイの故郷であるタイに渡りキャリアを継続することにした。
父親と現在の所属先である「Blackthai CT」のコーチの助けを得て、彼は「八肢の武術」ムエタイが生まれたタイに飛び、プーケットのシッソーンピノーンに居を構えた。
あっという間に恐ろしく強い選手として知られるようになったゴンサルベスは、65勝5敗というめざましい記録を積み上げ、世界タイトルをいくつも勝ち取った。
「コーチはいつも、お前はいつか世界チャンピオンになるだろうと自分に言い聞かせ、自分はそれをずっと信じていた。その時が来るまでトレーニングを重ねていただけだ」と、ゴンサルベスは言う。
「神と家族の助けのおかげで、夢がかなった。父のサポートは大きかった。そして、コーチのアンデルソン・デンタオは、自分が夢を叶えられるようにタイに行かせてくれた」
タイの権威ある大会のベルトをいくつも勝ちとったことは本当に嬉しかったが、21歳のゴンサルベスは満足していなかった。成功を重ねるにつれ、夢も大きくなった。今は、これまでで一番大きなベルトに狙いを定めている。
「スラム街の少年でしかなかった自分が今は世界タイトルを賭けて戦っている。強さと信念があれば、もっと大きな成功を手にできると気がついたんだ」と、ゴンサルベスは語る。
夢想家の意思
ゴンサルベスは今、ONEスーパーシリーズ、そして、ONE史上最大級のイベント「ONE:CENTURY 世紀」において、これまでで最大のプラットフォームで自らの力を見せる機会を得た。
今回はメインカードで、自分よりもだいぶ経験豊かで、ONEでは負け知らずのフライ級王者ロッタンを相手に世界タイトルを賭けて戦う。
常に不利な状況を乗り越えてきたゴンサルベスにとっては、それもためらう理由にはならない。不可能なことはないのだと示す新たな機会だ。
「夢想家には強固な意志もあると世界に証明したい。世界最大の大会で戦うのだから。世界王者としてベルトを手にするつもりだ」と、彼は言い切る。
ゴンサルベスは自分自身のためだけに戦うのではない。これまでの道のりを一歩、一歩、支えてきた家族とコーチの存在が彼の原動力だ。
「父には本当に感謝している。たくさんのサポートを与えてくれ、いつも助言をくれる。そして、自分が一番感謝している人、コーチに出会わせてくれた」と、ゴンサルベスは語る。
「この2人の男性と、それから神の存在がなければ、自分は今頃どうなっていただろうと思う。彼らが自分にしてくれたことに恩返しをするのが人生最大の夢だ」
東京・両国国技館 | 10月13日 (日) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)
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「ONE: CENTURY 世紀」は、さまざまな格闘技から28人の世界チャンピオンが参戦する、史上最大の世界選手権格闘技イベントだ。フルスケールの世界選手権格闘技イベント2大会が同日開催されるのも、史上初めてのことである。
複数の世界タイトル戦、世界グランプリチャンピオンシップ決勝戦3試合、そして世界チャンピオン同士の対決をふんだんに取りそろえ、ONEチャンピオンシップが東京の両国国技館で新地平を切り拓く。