【1/31大会】ペッダム、ムエタイ好きの父の夢を叶えるまで
ペッダム・ペッティンディーアカデミー(タイ)は、ムエタイのスターなど夢のまた夢と言えるような貧困の中で育った。だがペッダムにはいつも、夢の実現を後押ししてくれる最大のファンの存在があった。
タイ東北部のウボンラーチャターニー県で育ったペッダムを、初めてのトレーニングに連れて行き、試合があるたびに同行して応援したのは、「セイン(Ceing)」と呼ばれていた彼の父スーラセー・ウォンカン(Surasee Wongkhan)だった。
ペッダムは今、1月31日(金)に開かれる「ONE:FIRE & FURY」でMOMOTAROこと小寺耕平との対戦を控えている。父親はタイにいるかもしれないが、心はONEスーパーシリーズの歴史に名を刻もうとするペッダムと共にある。
ペッダムが8歳でムエタイを志した時、父親は喜んだ。一番近いジムは3マイル(約4.8キロ)離れた場所にあったため、ペッダムは父親のバイクの後ろに乗って通ったものだった。
「小さい頃は毎日、父がジムに連れて行ってくれ、トレーニングを見ていた」と21歳になったペッダムは振り返る。
「少し大きくなった後は1人で行かせてくれた。でも地方での試合を含めて、ほとんどの試合を見に来てくれた」
父親自身はムエタイをやってはいなかったが、ムエタイが大好きで、息子の将来の成功を夢見てもいた。
地元の寺院で3人息子のうちの長男が戦うのを見ながら、いつかペッダムが、自分のお気に入りの選手のようにスタジアムで戦うようになり、全国で放映されるようになることを願っていた。
「父は試合をしたことはないが、ムエタイが大好き。いつもテレビで見ている。ほぼ全てのチャンネルで、全部見ているんだ」
「父は『ムエフィーム』と呼ばれる技術的な選手や、リングでのIQが高い選手が好きなんだ。カルハー・ソー・スパーワン(Karuhat Sor. Supawan)が父のひいきの選手の1人だ」
ペッダムは、ムエタイの強豪を数多く輩出しているタイ東北部のイーサーン地方で、揉まれながら経験を積み、首都バンコクのムエタイジム、ペッティンディーアカデミーからスカウトを受ける。
父親の祝福を受け、ペッダムはフルタイムで選手としてのキャリアを追求するためバンコクに移った。そしてペッダムがまだ16歳の時に、父親の生涯の夢が実現したのだ。
「(タイの地上デジタルテレビ局の)『True4You TV』で放映されるイベントで試合をすることになった。5ラウンド制のムエタイの試合で、相手はマンナッチャイ・ルーマカムワン(Manachai Lukmakamwaan)だった。その試合に判定で勝ったんだ」
「父は本当に興奮していた。村のみんなに、自分の息子が試合をするから見てくれって、応援してくれって言ってまわっていた」
「その試合の後、大丈夫かって電話をくれた。ケガしてないかって。大丈夫だって言ったら、次はもっとうまくやれって言われた。もっと一生懸命に練習して、集中しないとだめだって。父の夢を叶えることができて本当にうれしかった。あの試合のことは一生忘れない」
そこからは上がり調子だった。ペッダムは、ルンピニースタジアムと世界ボクシング評議会(WBC)のムエタイ部門で世界タイトルを獲り、2018年にONEチャンピオンシップに参戦する。そしてONEフライ級キックボクシングの世界タイトルも手にした。この成功を通じて、ペッダムは家族を支えることもできた。
ペッダムは今、世界的な団体に所属してアジア全域で試合をこなしている。フィリピン・マニラで待ち受けているMOMOTAROとの一戦と同様に。もうペッダムの父親は、かつてのように、息子のそばで応援することはできない。
だが彼はいつも電話の向こうで、ペッダムに愛情、アドバイス、そしてサポートを送り、ONEスーパーシリーズのムエタイで世界タイトルを獲得する、という目標の実現を応援している。
「父は試合を見に来ることはできないが毎回、試合前に電話をくれ、頑張れって言ってくれる。もし試合をテレビでやるときは、絶対に見逃さないよ」
「チャンピオンなんだから、今まで以上にトレーニングしないとだめだって、父に言われた。自分のキャリアをしっかりと追及することや、自分が誰だか決して忘れないようにすることを、父はいつも思い出させてくれるんだ」
マニラ|1月31日 (金) |ONE:FIRE&FURY|公式アプリで生中継(無料)|日本公式Twitter|日本公式Instagram