【10/13大会】ブランドン・ベラ、空軍仕込みの自律心で2階級王者へ
ブランドン・ベラ(フィリピン)はONEヘビー級世界王者としての自分に誇りを持っている。だが、アメリカ空軍でのキャリアがなければ、世界タイトルを手にすることもなかったかもしれない。
フィリピン系アメリカ人のベラは10月13日(日)、東京・両国国技館で開かれる「ONE: CENTURY PART II」で、2つの世界タイトルを持つ王者アウンラ・ンサン(ミャンマー)とライトヘビー級の王座を賭けて対戦する。彼は軍隊での経験のおかげで、格闘技界のトップに立つために必要なあり方を身につけることができたと感じている。
「自分の今の職業が世界チャンピオンだとはね」と、41歳のベラは言う。
「ここにたどり着くまでにどれだけのエネルギーと時間を費やしただろう。正しい方向への後押しがなかったら、どんな風に道を誤ったかわからない」
ベラはバージニア州ノーフォークで生まれ育った。世界最大の海軍基地がある街だ。アメリカの都市では軍隊のライフスタイルの影響が多く見られるが、ベラの生い立ちにも計り知れない影響を及ぼした。
ノーフォークのオールド・ドミニオン大学を辞めようと決めた時、ベラは子どもの頃の夢を思い出し、アメリカ空軍に入隊した。
「(大学では)時間を無駄にしているように感じた。全額給付の奨学金をもらっていたが、自分の居場所ではないと感じた」と、ベラは説明する。
「ただふらふらしたり将来のない仕事に就くよりも、自分が何をしたいのかしっかり見極める必要がある。若かったけれどそれはわかっていた。入隊を決めたのは、良い導きが得られると思ったからだ」
「子どもの頃から軍隊が好きだった。航空ショーや戦艦ショーを見に行くのが大好きだった。だから、入隊するのはとても自然なことに感じられた。それに、世界中でいろいろなものを見ることができた」
アメリカ空軍で過ごした期間に、ベラは人生が変わるような経験をした。コロラド州のオリンピック・トレーニングセンターでフルタイムでトレーニングをする機会を得たこともその一つだ。
1999年、重傷を負ったベラは健康上の理由で除隊となった。それが、新たに出会った格闘技への情熱を追うきっかけとなった。
民間人として生きることは初めは難しく感じられた。だが、軍で過ごした時間が格闘技で上達するための道をつくってくれた。手抜きは許されず、厳しいトレーニングによってのみ成功を手にできる世界だ。
ベラは軍隊でのチームワークや仲間との絆を恋しく思ったが、ジムの仲間たちとの間に同じような絆を結ぶことができた。そしてまた、軍隊時代に培った姿勢も報われることとなった。
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「トレーニングにおいても人生においても、規律を持てるようになったのは軍のおかげだ」と、ベラは語る。
「規律とは、見張られていなくても、やるべきことをしっかりやるということだ。それがトレーニングに打ち込むということであっても、減量中だからチョコレートを食べないということであってもね」
「自分の仕事が何なのか、自分は理解している。何が必要で何がリスクかも。若い頃にそれを学ぶことができて有難いと思う」
「それが、軍隊が教えてくれた規律のあり方だ。自分が何かをするのは、そうすべきだから、そして自分は責任を重んじるからだ。多くの人はそういう考え方を失ってしまったのだと思う」
ベラはONEでの試合に備える時にも、自分の中に深く刷り込まれた価値観を頼りにし、活用している。両国大会でのアウンラ・ンサンとの世界タイトルを賭けた試合に向けて準備をしている今は特に。
軍から学んだもう一つのことは、他者を助け、守りたいという強い願いだ。
ベラは現在、家族の故郷であるフィリピンに住んでいる。アメリカ空軍での経験が、人々への揺るがぬ義務感を与えてくれた。
軍での彼は、自分自身だけでなく人々のために戦った。今では、自分個人の成功以上の目標のために試合に出場する。
「自分だけのためじゃない。自分より大きな全体の一部になるんだ」と、ベラは語る。
「自分はもう軍には属していない。それでも、格闘家としてのキャリアと2つ目の世界タイトルへの道は自分だけのものではない。自分は人生と呼ばれる劇の中の役者に過ぎないんだ」
「自分は全体の一部であるだけだ。自分のやることとその結果が、みんなにとって良きものであればいいと思う」
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「ONE: CENTURY 世紀」は、さまざまな格闘技から28人の世界チャンピオンが参戦する、史上最大の世界選手権格闘技イベントだ。フルスケールの世界選手権格闘技イベント2大会が同日開催されるのも、史上初めてのことである。
複数の世界タイトル戦、世界グランプリチャンピオンシップ決勝戦3試合、そして世界チャンピオン同士の対決をふんだんに取りそろえ、ONEチャンピオンシップが東京の両国国技館で新地平を切り拓く。