【1/22大会】ジェームズ・ナカシマ「自分を信じる力」で全米の頂点
イリノイ州の小さな街出身で今や総合格闘技で世界の舞台で勝負するようになったジェームズ・ナカシマ(米国)は、脅威の心肺能力と粘り強さ知られる。そして、これらの資質によって、ONEライト級世界タイトルマッチにいつか辿り着けるかもしれない。
だが、ナカシマは、ONEチャンピオンシップのスターになったものの、いつも高く評価されていたわけではない。実際、高校レスリングのタイトルを獲得しても、アメリカの一流大学からお呼びはかからなかった。
この記事では、ナカシマの大学時代のエピソードを振り返ってみよう。
ナカシマは高校時代のコーチの助言を受け、州内に留まってリンカーン・カレッジに入学した。ヘッドコーチのデイブ・クレムが率いるリンカーン・カレッジのプログラムに入り、最終的には2009年の全米チャンピオンへと成長した。
そこでナカシマを新たな高みへ導いたのは、クレムだけではなかった。アシスタント・コーチのスティーブン・ブラッドリーと、アイオワ大学の伝説的存在のT.J.ウィリアムズの2人からもナカシマは大きな影響を受けた。ナカシマは、マットの上でテクニックを学び、精神的にも鍛えられたのだ。
「(ブラッドリー)と会うたび『お前は全米チャンピオンになるからな』って言ってくれた。100%自分を信じてくれる人がいてくれて、しかもそれを毎日繰り返してくれたことは重要だった」と、ナカシマは振り返る。
「T.J. も本当に自分のことを信じてくれて、初日にT.J. がいてくれたのも覚えている。近寄って行って、質問して、彼の頭の中を探ろうとした。以来彼は、自分のことをよく世話してくれた」
「信じることが全てなんだ。ブラッドリーとT.J. に囲まれて、いつもポジティブに、自分がどこまで行けるかを話してくれて。それが2009年の最大の収穫だった。自分を信じていた」
ナカシマは全米短期大学体育協会(NJCAA)の全国タイトルを獲得したが、それは簡単なことではなかった。トーナメント初戦では苦戦したが、6—4で勝利を収めた。
「初戦は、少し硬くて、接戦だった」と、ナカシマは振り返る。
「なぜかよくわからないけれど。無理をしていたのかもしれない。自分の悪い癖は、無理をしすぎることで、試合の序盤にファイヤーマンズキャリーをしたのを覚えている。絶対にそんな技はしないのに。だからそれがちょっと変な感じで、相手に得点が行った」
「延長戦に入って、相手がガス欠になったから、延長第3ピリオドでテイクダウンを決めて、マットを降りた」
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この逆転勝利の後、ナカシマは落ち着きを取り戻し、主導権を握った。次の試合では、ノースアイオワ州のブレット・ロセデールを11—7で敗った。
「すぐに相手を追い込んだ。相手はどこかルーズなレスラーだったから、すぐにやすやすとポジションを取らせてくれた。試合中にちょっと妙なことをされたけれど、たいしたことじゃなかった。叩きのめしてやった。そこで調子が出た」
次はノースアイダホ州のセリック・ベルで、ナカシマとは違ってその前の2戦でピンフォールを決めていた。難しい試合だったが、コーチからの肯定的な言葉がナカシマの自信につながっていた。
「やつ(ベル)は、相手を頭から投げていたよ。父はT.J.に『なあ、ジェームズは、奴とやりあえるか?』って聞いたんだ。T.J.はまたこう言ったよ。『ジェームズはこのトーナメントの全員に勝てる』って」
「やつにはよく食らいついた。実はベルをすぐに投げていたし。肩をいからせてセンターに戻ったのを覚えている」
ナカシマは3連勝して決勝戦に進出し、アイオワ・セントラル・コミュニティー・カレッジのブラッドリー・バンクスと対戦することになった。試合の直前、ちょうどバンクスの兄のキャリントンは全米タイトルを獲得した。
だが、ナカシマは兄弟王者の誕生を阻み、トーナメントの第1シードのブラッドリーを倒す気で満々だった。
「(ブラッドリー)はあらん限りの力で戦ってきた。トーナメントの割と楽なヤグラの方を勝ち抜いてきたから。何もしていなかったんだ。体勢を低くしてディフェンスをしていただけだった」
そのディフェンスのため、延長戦に突入し、より早く逃げ切った者が全米チャンピオンになることになった。
「すぐに相手が出たので、自分はもっと早くしないといけなかった。なかなか出られなくて、あと10秒というところで勝負に出た。真ん中に戻って、スイッチをして、2点取って勝てた。そのスイッチのおかげで」
最終的にナカシマはポジティブのパワーでタイトルを獲得した。そしてさまざまな一流のレスリングのプログラムから声がかかった。
しかしウィリアムズはすぐにナカシマをミズーリ州のセントルイスであった全米大学体育協会(NCAA)選手権に連れて行った。最高の同年代のアスリートを見させるために。その中で特に目立っていたのが、その後4度世界チャンピオンになり、ロンドン五輪で金メダルを獲ることになるネブラスカ大学のジョーダン・ブローシュだった。
「T.J. は自分以上に自分のことを信じてくれていた。『こういうトレーニングパートナーが必要だ。あいつ(ジョーダン・ブローシュ)はお前を押し上げてくれるぞ」
コーチの助言に従い、ナカシマはブローシュのいるネブラスカ州に移った。
その5月、ナカシマは卒業した3日後にネブラスカ大学のキャンパスにいた。
「夏の間はトレーニングして、みんなに気に入ってもらえた。シーズンが始まる前に奨学金までもらえたんだ」
しかし、2009年のNJCAAの全米タイトルを獲得だけが、ナカシマの歴史の中で、輝かしい瞬間ではない。例えば、昨年11月、ONEウェルター級世界チャンピオンのキャムラン・アバゾフ(キルギス)に挑戦したこともある。
そして今回、ナカシマは階級を下げてトップに向けて再び歩み始める。1月22日(金)の「ONE: UNBREAKABLE」では、ライト級4位コンテンダーの青木真也と戦うのだ。
ナカシマがもし日本の伝説である青木に勝てれば、階級の王者のクリスチャン・リー(シンガポール)への挑戦の道も開けるだろう。
かつてのナカシマを知る者ならば、ありえないチャンスと思ったかもしれない。だが、ナカシマは自分を信じる力でここまでたどり着いたのだ。
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