【9/7大会】米国大会で箕輪ひろばと対戦、サンジャル・ザキロフのこれまで
9月7日(土)の「ONE 168: Denver」で日本の箕輪ひろばとストロー級MMAマッチで対戦するサンジャル・ザキロフ(ウズベキスタン)は、北米のゴールデンタイムの時間帯で配信される同大会に向けて準備を進めている。
ザキロフにとっては、自身も世界最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップに所属する最高の選手と肩を並べる存在だと証明するチャンスだ。
ザキロフは21歳。ここまで毎週恒例のルンピニー大会「ONE Friday Fights」シリーズで3勝0敗としており、エキサイティングな選手としての評判を高めている。箕輪との一戦を前に、この記事ではザキロフがONEチャンピオンシップにたどりつくまでの道のりを紹介しよう。
「負けず嫌い」な子供時代
物心ついたときからザキロフは体を動かすことが大好きだった。
ただ、勉強は苦手で、役に立たないことだと思っていたことを学ぶために教室にいても面白くなかった、とONEチャンピオンシップに明かしている。
「学校については疑問を抱いていた。人生の成功に役立たないだろうと思っていたから。だからよく授業をサボって、ほとんどジムにいた」
「体育の成績も落第の一歩手前の評価だった。けれども、勉強が嫌いだったわけじゃない。家ではよく本を読んでいた」
生まれつき負けず嫌いだったザキロフは戦いながら生まれ育った。この経験から現在世界的団体で活躍する総合格闘家になったのだ。
「子供の頃に関して唯一覚えていることは、負けることが嫌いだったということだ。どんな小さなことでもだ。どんなことでもナンバーワンになりたかったんだ」
「年上の子供たちに、路上で大人と喧嘩させられた。断ることはできなかったから、戦うしかなかった」
5歳からテコンドー
ザキロフは5歳からテコンドーを正式に学び始めた。
ウズベキスタン各地で開催された数々の大会で成功を収めたものの、この時期について複雑な思いを抱いている。コーチの厳しい教え方は苦手だったが、このために現在ファイターとして駆使している不屈の精神を養うことになったからだ。
ザキロフはこう説明している。
「最初にやった格闘技はテコンドーだ。5年間この競技に捧げた。テコンドーは嫌いだった。コーチには手ひどく棒で殴られて、精神的に追い詰められた」
「多分、このおかげで精神的に強くなれたのかもしれない」
ザキロフはテコンドーですぐさま有望な選手となった。やがて柔道や総合格闘技のトレーニングも始め、10代の間はアマチュアの大会でタイトルを獲得し続けた。
2021年、18歳でプロデビューをし、12勝0敗という完璧な戦績を打ち立てた。
こうしてMMAで成功したのは当然のことだったとザキロフは受け止めていると言う。
「他の選手とはどんな大会でもだいたい一歩先をいっていたから、いつも自分は他とは違って多くのことを成し遂げられるとわかっていた」
修行資金のため「ずっと働いていた」
世界トップクラスの指導を受けられる欧米のファイターとは違い、ザキロフはMMAがまだ発展途上だったウズベキスタンで必要なトレーニングを受けるのに苦労した。
夢を追い求めるため、しばしばダゲスタン共和国などロシア連邦のさまざまな地域へ足を運んだ。費用はかかるが、質の高いトレーニングを受けるために、喜んで代償を払った。
「ウズベキスタンのMMAには、他の8割の格闘技と同様にスポンサーがつかない。トレーニングキャンプや大会、準備にはお金がかかるから、ずっと働いていないといけなかった」
「それに、格闘技で怪我をし、手術を受けたこともある。健康とお金を犠牲にしたともいえるが、後悔はしていない」
一流のファイターへの階段を駆け上りながら生活費を稼いでいたこの時期が一番キャリア上で辛かった、とザキロフは振り返る。
「とても大変だった。事前特訓の資金を稼ぐために、警備員、配達員、ウェイター、アイスクリーム販売など、懸命に働いた」
「結局、稼いだお金はダゲスタンとモスクワへのトレーニング旅行に費やした」
ONEチャンピオンシップへ
北米のゴールデンタイムで配信される大会初出場が間近に迫っているが、現在のザキロフは生活費を稼ぐために臨時の仕事を探す心配はしていない。
昨年8月の「ONE Friday Fights 28」では、デイブ・バンギギ(フィリピン)にTKO勝ちでONEチャンピオンシップのデビュー戦を飾った。さらに、ONE以外でも4勝、「ONE Friday Fights」シリーズで計3連勝とし、ONE本戦出場への契約金を勝ち取った。
そして今回の「ONE 168: Denver」では、MMAストロー級有数の強豪として知られる4位コンテンダーの箕輪と対戦する、という大きなチャンスを得た。
ザキロフはこれまでの急激な成功と現在抱いている自信についてこうコメントしている。
「最初のチャンスは『ONE Friday Fights』だった。対戦相手の戦績は9勝1敗だったが、このチャンスを逃してはいけないとわかっていた。実力を証明するためのチャンスだったから」
「ONEに参戦して、ランキングのトップ5の選手と戦うことに関しては、コメントの必要はないと思う。相手を倒して、自分が得るべきものを得るために出場するんだ」