【10/13大会】平田樹、柔道少女が五輪の夢からONEに至るまで
柔道でオリンピックに出ることが、平田樹の夢だった。だがその夢は度重なるケガにより、無惨にも打ち砕かれた。その代わりに平田は、ONEチャンピオンシップという活躍の場を手に入れたのだった。
ここまで無敗の平田が、世界にその才能を見せつける時がやって来た。10月13日(日)に東京・両国国技館で開かれる、格闘技史上、最大のイベント「ONE:CENTURY 世紀」第1部で、平田は石毛里佳との対戦を迎える。
弱冠20歳の平田は総合格闘技を始めてまだ1年余り。だが既に、この先何年もトップレベルで成功を収めそうな、スーパースターとしての貫禄を持ち合わせている。石毛に勝てば、トップへの道のりはさらに加速するだろう。
東京での試合に先立ち、平田が悲惨なケガから復活して、総合格闘技の新星に躍り出るまでを振り返る。
オリンピック
平田は東京で生まれ育った。父親や兄と一緒に格闘技を見始めると、すぐにそのとりこになった。
柔道を始めたのは6歳の時。兄と一緒だった。ヒーローを見習い、そして負けず嫌いの性格の赴くままに、トレーニングに熱中。以来、中学まで週6日を練習に費やしてきた。
「子どもの頃からずっと、柔道でオリンピックに出たいと言い続けてきた」
「柔道で好きなのは寝技。きれいに決まった時は最高の気分」
平田は技術だけではなく、日本の武道が培ってきた価値観も学んだ。
コーチも父親も非常に厳しかったため、平田は規律を重んじ、決められたルールに従うことを第1に育った。髪を伸ばしてはいけなかったし、試合は真剣勝負だった。「勝てなければ意味はない」-。何度も繰り返し、そう言われたものだった。
総合格闘技へ
この厳しいトレーニングと平田への期待は、代償を伴うものだった。膝のケガに悩まされることになったのだ。
中学1年の時、膝の前十字靭帯を断裂。翌年にはもう片方の膝でも前十字靭帯を断裂した。通常なら選手生命が危ぶまれるほどのケガで、どちらも手術と長期間のリハビリを余儀なくされた。
さらに2年後、今度は右膝の半月板の修復手術を受けることになった。3度目の手術だ。まだ高校生だったのに、早くもオリンピックの夢は断たれてしまった。
王者に向けて
横田はすぐに平田の才能に気づいた。そしてインターネットテレビ「AbemaTV」が配信する総合格闘技リアリティショー「格闘技代理戦争3rd シーズン」に、平田を送り込んだ。
「タイミングがすごくよかった。最初は通常の練習に参加していただけだったが、横田さんの勧めでテレビ番組にでることになり、トレーニングを強化した」
当時まだ19歳。総合格闘家になってまだ数か月だったが、1回戦から決勝までの3試合全てで、サブミッション勝ちを決めて優勝。ONEとのプロ契約を勝ち取った。
平田の衝撃的な強さは、海外の格闘技界からも注目を集めた。そしてONEへの参戦に向けて、シンガポールのメガジム「Evlove MMA」で技を磨くことになった。
今年6月のONEデビュー戦を前に、平田は2月と5月にシンガポールで集中的にトレーニング。優秀なコーチとトレーニングパートナーのおかげで、平田の総合的なスキルは格段に向上した。
おかげで平田は最高の仕上がりで、メジャー大会デビューを迎えた。アンジェリー・サバナール(フィリピン)を相手に、第1ラウンド2分19秒で一本勝ち。傷一つ負わずにリングを後にしたのだった。
メジャー大会
デビュー戦での圧巻の勝利により、平田は両国国技館で開かれる格闘技史上、最大のイベントへの出場を手にした。
「次の日本でのイベントに参戦したいと、もうずっと言い続けてきた。だから試合が決まった時は本当にうれしかった」
「とうとう大きな舞台で自分を証明するチャンスがやってきた。本当に楽しみ」
「自分のカードは早朝なので、ファンのみんなに会場に来てもらいたい。トレーニングも試合の時間に合わせて調整してきた。朝は強くないけれど、準備はできている」
平田はまだプロとしては1戦1勝のみだが、柔道を通じて小さい頃から実績を積み重ねてきた。今もその胸には大きな夢を抱いている。
「まずは『ONE:CENTURY 世紀』で完璧な勝利を挙げて、2020年か2021年には世界タイトル戦に挑戦できるようになりたい。今回のイベントでは、アンジェラ・リー(シンガポール)とション・ジンナン(中国)の女子アトム級世界タイトルマッチをじっくり見てみたいと思っている」
「いつか絶対、リーと対戦したい。彼女は19歳の時に世界王者になっている。本当にすごい人だし、尊敬している。彼女と戦って自分を試してみたい」
「自分は新しいタイプの女性アスリートになりたい。今までにはいなかったタイプのね」
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