【5/4大会】中国人初のK-1王者、ウェイ・ルイのこれまで
5月4日(土)の「ONE Fight Night 22: Sundell vs. Diachkova」では、現在20連勝中のキックボクサー、ウェイ・ルイ(中国)がONEチャンピオンシップデビューを遂げる。
タイ・バンコクのルンピニー・スタジアムで行われる同大会で、ウェイは元ONEバンタム級キックボクシング世界王者の秋元皓貴と対戦する。
その驚異的な戦績や衝撃的な打撃スタイルをまだ知らないファンに向けて、この記事ではウェイがONEにたどり着くまでの道のりを紹介しよう。
武術学校へ転校
ウェイは、中国の中東部・河南省で生まれ育った。
幼い頃の家計は苦しく、多くの人が当たり前のように使っている現代的な便利な道具や機械がないことも多かった。さらに学校では殴り合いのケンカに巻き込まれることもあったが、家の中では大人しくしていた。
最終的にはこうした行動が格闘技の道に進むきっかけになったという。
「学校ではケンカに巻き込まれることもあったが、両親は知らなかった。家の中では良い子にしていたから。そして学校でケンカをして、成績も悪かったから、武術の学校へ転校を勧められた」
ボクシングとキックボクシングや、クリンチワークを組み合わせた強力なキックで知られる中国武術の散打(サンダ)を、正式なトレーニングを少し受けただけでウェイはすぐさま習得した。
小さい頃から格闘技に夢中だったウェイのこうした進路選択を両親は応援してくれたそうだ。
「両親はいつも自分の決断を尊重してくれた。何かやりたいと決めたら、いつでも応援してくれる。自分で決める権利を与えてくれたんだ。ただ、母が出した唯一の条件は良い人間になること、だった」
キックボクシングとの出会い
天才的な運動神経を生かして、ウェイはすぐさま中国有数の散打の選手になった。
だが、それは自身と家族が切実に必要としていた経済的な成功には結び付かなかった。このため、ウェイはキックボクシングへの転向を決める。
「転向以外の道はなかった。散打のチームにいた頃は、試合で良い結果を残さないと収入が得られなかった。この道には未来がないと感じたんだ」
そして人気が高まっていたキックボクシングなら、より多くの報酬が得られ、家族の生活を支えられるのではないかと考えた。
最終的に、こうしてウェイは新しい競技への挑戦を決める。
「当時はキックボクシングは、商業的に一定のマーケットがあったんだ。そういう大会に出場できれば、いい報酬がもらえた。家族の経済的問題を減らすため、キックボクシングに転向することにした」
中国打撃界のスターに
キックボクシングへの転向は賢明な選択だった。ウェイはこの10年で69勝3敗というプロ戦績を築き上げ、世界有数のファイターと見なされるようになった。
2017年には強豪が競う「K-1 WORLD GP 初代ライト級王座決定トーナメント」で優勝し、中国人初のK-1王者に。
こうしてトップクラスのストライカーになったと同時に、中国のキックボクシングの強さを見せつけられた、とウェイは当時を振り返っている。
「これは、自分にとってだけではなく、中国のキックボクシング界にとって画期的出来事だった。自分のことだけではなく、中国のキックボクシングについて世界に知らしめることができた」
その後、ウェイは世界の団体で多くの成功を収め、印象的なノックアウト勝利を重ね、2018年から現在まで連勝をキープしている。
だがもちろん、難しい時期もあった。多くのプロのファイターと同様に怪我に苦しむこともあったが、立ち直る力と不滅の決意で常に乗り越えてきた。
ウェイはこう話している。
「プロのアスリートとして、一番厳しいことは怪我と失敗だ。これまでに何度も怪我をしたこともあったし、完全に回復できるか心配したこともあった。それに、一度しか失敗していないにもかかわらず、再び立ち上がれない選手もいることは知っている。けれども、自分は失敗から立ち直る方法を知っていた」
ONEチャンピオンシップ参戦
過去6年間にわたり、ウェイは自身の「大東翔ファイトクラブ」を中国一のチームにするべく育て上げてきた。
そして現在、ONEの世界的舞台で世界の強豪キックボクサーと戦い、さらなる名声と称賛を得たいと望んでいる。
「まずは、自分のチームのために戦いたい。そして、チームのさらなる名誉になりたい」
ONE参戦はチームの名声を高めるのみではなく、ウェイにとっては最高のアスリートと戦い、この競技の頂点に立つチャンスをもたらすことを意味する。
さらに、「ONE Fight Night 22」での秋元戦は、中国のキックボクシングをアピールする機会でもあるという。
「ONEチャンピオンシップは、世界の打撃界で一番影響力があり、価値のあるスポーツの団体だと思う。この国際的な大会で実力を証明して、中国パワーを世界に見せつけたい」