ONE選手秘話:ウィラチャイ、マイケル・ボルトンにムエタイ紹介
米国のミュージシャン、マイケル・ボルトンは、力強い歌声と素晴らしい作詞で音楽好きによく知られているが、彼が大の格闘技好きということはほとんどのファンに知られていない。
タイの総合格闘技のパイオニア、シャノン・ウィラチャイがそのことを目の当たりにしたのは2017年、ボルトンが格闘技ジム「バンコク・ファイト・ラボ」にトレーニングにやってきた時だ。
ボルトンが東南アジアに来たのは、彼のリアリティ番組「ボルト・オブ・タレント」のためだ。この地域トップのシンガーソングライターに、レコード契約と世界ツアーのチャンスを提供するものだった。この一環で、ボルトンは新しい弟子たちに自分の正しさを証明するため、ウィラチャイのジムを訪れた。
「コンサートで演奏するのは戦いのようなものだと説明するために、ジムにやってきた」とフェザー級総合格闘家のウィラチャイは振り返る。
「試合では相手をノックアウトする必要があり、コンサートではパフォーマンスで観客をノックアウトしないといけない」
セッション中、ウィラチャイはボルトンをいくつかの簡単なテクニックを披露し、ボルトンの熱意に感動した。
「とても素晴らしい人だった。本当に落ち着いていて、ものすごくおしゃべりというわけではないが、格闘技での経験について話してくれた時、本当に好きなんだなということがわかった」
「若い頃から空手をしていたが、ムエタイはやったことがなかったと言っていた。空手スタイルのプッシュキックを見せてくれたが、力強かった」
ONEチャンピオンシップのスター選手ウィラチャイは、さまざまなスタイルの格闘技に精通しているが、ボルトンがせっかくタイにいるのだから、ムエタイの強さを見せるのが適当だと考えた。
典型的なムエタイのテクニックと言えば回し蹴りであり、ムエタイ選手は他のどの打撃系格闘技よりも強力な回し蹴りを放つ。そこでウィラチャイは、仲間のコーチの1人を連れてきて、グラミー賞を2度受賞したボーカリスト、ボルトンに披露した。
「トレーナーや現役選手たちの中から1人を呼んできて、10~20回ほどキックを見せた」
「ボルトンは、小柄だがパワフルな選手を見て『おー』という感じだった。彼はもう一度見たがった」
しばらくして、撮影スタッフが必要な映像の全てを撮り終えて、ボルトンを連れて行こうとした。
ボルトンはもっと見たがり、結局すぐに行かなければならなかったが、最後に一撃を見せていった。
「テレビのスタッフは、すぐに終わらせたがっていた」とウィラチャイは説明する。
「彼らが入ってきて『もう行かないといけない』と言った時、ボルトンが『ボクシング用に全部着替えさせておいて、もう終わりって言うの?』と言ったんだ。彼がもうちょっと長くいたそうにしていたのが分かったよ」
「そして、彼はもう一度サンドバッグにキックした。あれはすごくいいやつだった。でもその時にはもう、行かないといけなかった」
ウィラチャイは67歳のボルトンと再び一緒に何かをやることはないかもしれないが、もしそのチャンスがあったら大歓迎だ。つかの間の出会いだったが、ボルトンのムエタイへの情熱に火が付いたと信じている。
「一緒に過ごしたのは非常に短い時間だった。でも彼が格闘技にとても情熱的だいうことはわかったよ」