【10/13大会】ONE初戦アルジャン・ブラー、エリートレスラー家系の誇りを胸に
息子が父親の足跡に倣うことはよくあることだ。ヘビー級戦士アルジャン・ブラー(インド)の場合、それはレスリングの世界でトップに立つことを意味していた。
ブラーの一家はブラーが生まれる前にインドからカナダに移住した。父親は立派なレスラーで、ブラーにとって憧れの存在だった。
だからブラーはやる気満々でレスリングに打ち込んだ。目標はいつの日か、世界チャンピオンになることだった。
10月13日(日)に東京・両国国技館で開催される「ONE: CENTURY PART II」で、マウロ・チリリ(イタリア)を相手にONEチャンピオンシップでのデビューを飾るブラーは、今でも父親のアドバイスを受け入れ続けている。
父親は、これまでの息子のスキルの進化を見届けてきた。そしてこれからも、コツやヒントを伝授していくつもりだ。
「今朝もご指導があったよ」と、ブラーは笑う。
「キリがないんだ。トレーニングキャンプに父が姿を見せると、部屋の空気が一変する。言われたことには従うしかない」
「中には父親がいない人もいる。こんなサポートを受けられない人だっているんだ。だから自分は毎日でもアドバイスを受けるようにしているんだよ」
ブラーは自分の家系に感謝しているのだが、それと同じくらい、父親がレスラーとして達成してきた多くの栄誉が、重い影として自分にのしかかっていることも感じている。
ブラーの父親は母国インドで何度もタイトルを獲得しており、1988年のソウル五輪ではインド代表に、1998年のコモンウェルスゲームズではカナダ代表に選出される直前までいった。
そんなレガシーに見合った活躍をするというのはなかなか大変そうである。しかしブラーは、周囲の声をブロックし、自分のスキルを磨くことに集中しようとしている。
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「恵まれているよ。大変だけどね」とブラーは言う。
「恵まれているという意味は、勉強は2回する必要はないということだね。成功も1度歩いたことのある道なら再現しやすいものだ。自分たちの文化圏ではそんなことわざがあるんだ」
「大変だというのは、自分が父親と同じ道を歩んでいて、いつも比較されてしまうということだ。こういう家系ではない人が経験するよりもうんと大きなプレッシャーや高い期待感があるから」
幸い、ブラーは常に父親の承認は取り付けてきた。
父親の指導もあって、ブラーは2007年のパンアメリカン競技大会では銅メダルを、2010年のコモンウェルスゲームでは金メダルを獲得、2012年ロンドン五輪ではカナダ代表選手に選出されたのだ。
そして今、ブラーがONEヘビー級世界チャンピオンへの道を歩み始めてもなお、父親の教えがやむことがない。
ブラーが総合格闘技という新しい道を踏み出そうとする時、その惜しみない応援があるかないかでは大違いがあるのだ。
「父は何も同じ道を歩ませようとしたわけではないんだ。あくまで自分の判断を応援してくれたんだ」とブラーは語っている。「ここからは自分の人生に新たな一章を書き加えることができる」
ブラーの成功のもうひとつの要因、それは家族全体を支えてくれている母親の存在だ。
「母には本当に感謝だ。家事一切を取り仕切ってくれている大きな存在なんだ」とブラーは言う。「父が父親でありコーチであることと、自分が弟子であり息子であることのバランスを取ってくれるのが母だ。全部やってくれている。本当に母のおかげだよ」
ブラーは、この上ない境遇に生まれ育ったのだ。
両親はこれからもブラーの夢を応援していく。その姿は、父親になったブラー自身の完璧なお手本となっている。
「物事を教える時には、自分でやってみせることで教えたい」とブラーは語っている。
「価値観に沿って生きていかなければならない。きちんとした生活を送らなければならない。父からはそのように教わっている。自分はそのことを子供たちに伝えているんだ」
「ONE: CENTURY 世紀」は、さまざまな格闘技から28人の世界チャンピオンが参戦する、史上最大の世界選手権格闘技イベントだ。フルスケールの世界選手権格闘技イベント2大会が同日開催されるのも、史上初めてのことである。
複数の世界タイトル戦、世界グランプリチャンピオンシップ決勝戦3試合、そして世界チャンピオン同士の対決をふんだんに取りそろえ、ONEチャンピオンシップが東京の両国国技館で新地平を切り拓く。