【9/6大会】決めゼリフは「Here we go!」ONEリングアナのドミニク・ラウ

Dom Lau ONE Championship Cage Announcer

ONEチャンピオンシップのリングアナウンサー、ドミニク・ラウはいつも大きな意義のある仕事をしたいと思っていた。子どもの頃、それは消防士かパイロットになることだった。

「燃え上がる建物からみんなが逃げ出してくる時、消防士達は逆にその建物の中に向かっていく。そこが大好きなんだ。だから消防士になりたかった。彼らは現代の英雄だ」と、香港生まれのラウは語る。

「それに、パイロットは世界で一番クールな職業だと思う。何百万ドルもする飛行機を時速500マイルの速度で操縦できるんだ。どんなふうに飛行機が飛ぶか、着陸はスムーズか、機体は安定しているか。すべてにベストを尽くしているかどうかが、誰かにとって大きな意味を持つ」

それから何年も経った今、ラウが働くのは燃えさかる建物の中でも、飛行機のコックピットでもない。代わりに、彼はONEのリングアナウンサーとしてケージのセンターに立つ。

リングアナウンサーの仕事には燃えさかる炎と戦うほどのリスクはないように思えるかもしれない。だが、そこにはまた別の種類の難しさがある。

「カメラが回り始めると、すべてがリアルタイムで世界に中継される。観客の大歓声がスタジアムに響いて、両側には戦う準備のできた選手たちがいる。そこからはノンストップだ」と、38歳のラウは言う。

「選手の名前は絶対に正しく発音しないといけない。プロとして当たり前だからというだけでなく、選手の出身国のファンのためにも」

だが、声を使ってファンの心をつかむ仕事は初めてというわけではない。ビデオジョッキーとしてキャリアをスタートしたラウは、東南アジアの有料チャンネル「E! News Asia」や香港を拠点とした東南アジアの有料テレビネットワークの「Cannel V Asia」に定期的に出演していた。近年ではこの6年、アジア各国で放送されている「Asia Pop 40」の司会を務めていた。

テレビやラジオでだんだんと有名になり始めていたラウだが、自分がいつの日かONEチャンピオンシップの大会でリングアナウンサーをすることになるとは夢にも思わなかった。

「スーツに身を包み、地球最強の王者たちの名前を高らかに叫ぶ自分なんて、想像すらしなかった」と、ラウは打ち明ける。

けれど、今、ラウはまさに「スーツに身を包み、王者たちの名前を高らかに叫ぶ」プロとして知られている。彼のキャリアにおいて、米国のプロレス団体・WWEの伝説的リングアナウンサー、ハワード・フィンケルの影響も少しあるとラウは言う。

9歳のラウは、背が低く、禿げ頭で口ひげをふさふさとたくわえ、黒いスーツと蝶ネクタイに身を包んだ男が、ハルク・ホーガンやアンドレ・ザ・ジャイアントのようなお気に入りのレスラーたちの名前を大絶叫でコールするところをいつもテレビで見ていた。

「フィンケルの声が大好きだった」と、今はONEリングアナウンサーを務めるラウは語る。「リングに上がるやいなや、深いバリトンの声がスタジアムに響き渡る。あのとどろくような声を聞くと、誰もが振り向いた」

フィンケルは特別に革新的なことをしたわけではない。だが、新たに世界チャンピオンとなったばかりの選手の名前をコールする時に「new(新)」という単語を強調してみせるというシンプルな工夫が、彼の仕事を印象深いものにした。

同じように、ラウも「Here we go!(行ってみよう!)」という決まり文句で知られている。数年前にONEのイベントのオープニングで自然に出てきたフレーズが、それ以来、何度も登場するようになった。

決まり文句とともに、ラウは観客を「英雄たちの伝説の世界」と呼ぶ空間に誘う。

「自分が一番大切にしているのは観客席のファンだ。会場の興奮はそのままに、アナウンスによってつながりを生み出したい」と、ラウは言う。

「観客席からは、戦闘態勢のアスリートが二人リングに立っている様はまるで神話の世界みたいに見える。自分の仕事はそこに人間らしい要素を取り戻すことだ」

消防士かパイロットになるという子どもの頃の夢は叶わなかったが、リングアナウンサーの仕事はとても重要だとラウは感じている。

「自分のやっていることは誰かにとって大きな意味を持つ。たとえ、千人のうちたった1人しか聞いていなかったとしても、全員が耳を傾けているかのように心をこめて仕事をするんだ」

観客たちは、数人といわず、ほとんどがラウの声に耳を傾けているように見える。

Dominic Lau announces inside the ONE Championship ring

フィリピン、マニラでのある夜のこと。サークルの照明が消え、音楽はフェードアウトし、アスリートたちの勝敗も決定された後、ラウはモールオブアジアの外に立っていた。

バスに乗ろうと一歩足を踏み入れた時、遠くでファンたちが叫んでいるのが聞こえた。「Here we go!」

思わず、微笑まずにはいられなかった、とラウは話す。

「こういう瞬間は、決して忘れられない。とても有り難い気持ちになる。自分の仕事には意味があるとしみじみ思わせてくれる」

ベトナム初のONEの大会、9月6日(金)にホーチミンで開催される「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」で、ファンたちはまたラウの決まり文句を聞くことができる。

ホーチミン | 9月6日 (金) | 19時半(日本時間) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)

 

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