ロッタン、スタンプの弟にムエタイを指導
ONEフライ級ムエタイ世界チャンピオンのロッタン・ジットムアンノン(タイ)は世界中の若手ストライカーたちに影響を及ぼす存在だ。だが、それだけではない。身近にいる熱烈なファンに対しても、絶大な影響を与えているのだ。
そのファンとは、ロッタンのガールフレンドであるONEアトム級ムエタイ世界チャンピオンのスタンプ・フェアテックスの弟だ。
22歳と同年齢のロッタンとスタンプは、2019年3月の両国大会をきっかけに急接近し、交際開始。それぞれのトレーニング拠点が150キロ離れているなどの障害を乗り越えつつも、この1年順調な交際を続けている。
この間、ロッタンはスタンプの家族とも関係を深めた。特に、13歳の弟ショーグンとは特別な絆を培ったようだ。
「家を訪ねたら、走ってきて飛びつかれるんだ。自分のことをお兄さんと思っているのかも」と、ロッタンは話す。
スタンプは、家族ととても仲がいい。実際に、ムエタイを始めたのは父の影響だ。
父からスタンプと同様にタイの伝統に触れる機会を与えられたショーグンは、7歳の時からリングで戦い始めた。ロッタンはこのショーグンの才能を見抜き、先生役になったのだ。
「ボクシングを教えた」と、ロッタン。「将来性があるし、やる気に溢れている。総合力もあるし、いいテクニックも持っている。スタンプのお父さんのFacebookのライブ中継でトレーニングしているのを見た。自分のようになってくれればと思う」
その願いは叶うことになりそうだ。
昨年、ロッタンはスタンプの故郷・タイ中部のラヨーン県で、ショーグンの試合を見るためだけに大会を主催した。
ショーグンがリングに入った時、ロッタンはまるで若き日の自分を見ているような気持ちになったという。
「ショーグンはその日勝ったんだ」と、ロッタンは笑う。「まるで自分のような戦いぶりだった。パンチとキックをたくさん駆使してね」
ムエタイへの情熱を通じて距離を縮めた2人だが、その関係は今や競技を超えたものになった。
ロッタンとスタンプは所属ジムでトレーニング漬けの生活を送っている。そのため、カップルとして一緒に過ごす時間や、家族と会う機会はそうそうない。
小さな弟と特に仲がいいスタンプにとっては、とても辛いことだ。
そこで、ロッタンはショーグンをデートに巻き込む、という方法でこの問題を解決した。ショッピングモールや、映画館、食べ放題のレストランなどに連れ出しているという。
ロッタンは、ショーグンの学校が休みの時に自身が所属する「ジットムアンノン・ジム」にも連れて行き、国内最高級のトレーニング施設の雰囲気に触れられるよう取り計らった。その前に真面目な話もしたようだ。
「ショーグンには、年上の人を尊敬して、大きなジムとはどんなものか知らなくてはいけないと教えたんだ」と、ロッタン。
「振る舞い方を教えて、人の話を効かなくちゃダメだよ、って言ったんだ」
現在、タイでは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、夜間の外出を原則禁止するなどの措置が取られている。この間、ロッタンはスタンプの故郷でスタンプとその家族たちと過ごすことにした。
「最近は家にいて、庭でちょっとしたトレーニングをしている」
「みんなで携帯でゲームをするのも好きだし、一緒にムエタイのビデオを見たり、料理をしたりしている」
こうした状況下でもロッタンはポジティブな態度で、ショーグンとの絆を深めている。
「ショーグンは知り合った時からすごく上達したんだ。いいスタンスも、ボクシングもクリンチも持っている。ウェイトが45キロになったら、バンコク中のスタジアムでチャンピオンになれるように応援するよ」
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