【11/16大会】身長2㍍、クリークリャがONEデビューするまで
ローマン・クリークリャ(ウクライナ)には、トップクラスのキックボクサーになれるだけの資質が備わっていた。だが、正しい姿勢なくして世界チャンピオンになることはなかっただろう。
キックボクシングに専念したことで小さな町での人生から抜け出し、成功を収めるために世界を飛び回ることができた。そして今、キャリア最大の肩書きを得るチャンスを手にした。
11月16日(土)、28歳のクリークリャは、新設されたONEライトヘビー級世界タイトルをかけ、「ONE:AGE OF DRAGONS」のコーメインイベントでタリック・ケバベス(モロッコ)と対戦する。
中国・北京での試合前前、クリークリャは天から授かった身体的な才能を生かし、「格闘技の聖地」ONEチャンピオンシップにたどり着くまでの歩みを語った。
6歳から空手
クリークリャは、ウクライナ東部のクラスノフラードで生まれた。1990年代は激動の時代で、彼の故郷には何もなかったが、それでもしあわせで、気ままな幼少期を過ごした。
「多くの人たちが何も買えなかった。間違った話ではないけれど、限られた人だけではなくて大半が同じ状況だったから、貧しいのが当たり前だった」と、彼は当時を回想する。
「自由な時間があると、大半は外で遊んだね。道端で友達と遊んだ。ストリートが人生を学ぶ学校のような場所だった」
幼い頃から与えられたのは、格闘技に触れる環境だった。我が子をトラブルに巻き込まれないようにするには、ブロヴィック・マーシャルアーツクラブに通わせるのが最適と考えた父親の勧めもあり、6歳から空手を始めた。
「悪ふざけするような子供だったんだ」と、クリークリャは話す。
「わんぱくだったから、両親は規律を学ばせるのに道場は良いと考えたのだと思う。生徒が多い道場で、友達もたくさんできた。あの雰囲気が好きだったんだ」
空手を指導したコーチはメンターとなり、父親と共に、幼いクリークリャにアスリートとして成長するための基礎を叩き込んだ。
「自分が成功できた秘訣は、規律と献身性のコンビネーションにある」
「両親から優れた遺伝子を受け継いだおかげで、大きくて強い身体を得られた。けれど、父とコーチのおかげで一生懸命に空手に取り組めた。道場のこと、それから格闘技の精神をリスペクトしていた」
学業とスポーツ
2008年になると、クリークリャはウクライナ第2の都市、北東部のハルキウに移り住んだ。
物理学と天文学を学びたかった彼は、ハリキウ・ナショナル・インスティチュートに進学。そこで新たなジムに通い始めたことで、格闘技のスキルも次のレベルに移行した。
「家族にとっても良かった。正直なところ、野心があった人たちは、幸運を掴むためにみんなクラスノフラードを離れた」
「僕はマキシムズクラブに通い出して、マキシム·キヨコとヴィクター·デムチェンコの指導を受けるようになった。夢中になって練習したね。マキシムはワールドクラスの才能の持ち主だったんだ。1年後にはキックボクシングとムエタイも始めて、プロになることを考え出した」
クリークリャは2008年にキックボクシングのナショナルユース王者に輝くと、2010年にはムエタイのアマチュア選手権で銀メダルを獲得。だが、格闘技での成功により、学業を犠牲にした。
彼は「ボクシングと学業を両立させようと努力したけれど、長くは続かなかった。それからはジムで大半の時間を過ごすようになって、授業には行かなくなってしまった」と、当時を振り返った。
「それが2年続いて、ハリキウ国立自動車道路大学に転入した。スポーツで良い成績を収めると、学校側が試験をパスする手助けをしてくれる大学で、とても理解があった。学部長は、アスリートである自分を真っ先に認めてくれた」
この方法は双方にとって機能し、クリークリャは自動車エンジニアの学位を取得。学校も大学リーグのトップを維持できた。
数々のタイトル
ユースとアマチュアでの成功により、クリークリャは2011年にプロに転向する。その成長に感心した当時のコーチは、彼の人生において次の大きなステップに進むための道を用意してくれた。
「マキシムが、自分の試合映像を僕たちの地域で最も有名なアンドレイ・グリディンという指導者に見せたんだ」と、28歳になったクリークリャは話す。
「彼は素晴らしいジムの代表で、とにかく見る目が厳しい人なんだ。マキシムからベラルーシのミンスクにオーディションを受けに行けと言われた時は、すごくうれしかった」
若きヘビー級の才能を即座に見抜いたグリディンは、クリークリャを指導することに。
クリークリャは2013年にミンスクに拠点を移し、正式にチヌーク·マーシャルアーツクラブに移籍。そこで代名詞のテクニカルなスタイルに磨きをかけた。
新たなコーチのモットーは、テクニックとタイミングに欠点がなく、ダメージを最少に抑える“インテリジェントボクシング”。それを身長2メートルのクリークリャが実践したことで、彼は44勝7敗という戦績を残し、クンルン・ファイト(KLF)、A1、WAKO Pro、FEAグランプリ世界王座など数多くのタイトルを獲得した。
そしてONEへ
これまでの成功により、クリークリャは世界最大の格闘技団体からオファーを受けた。それも、考えられる中で最高のチャンスをデビュー戦で与えられる好待遇で迎えられた。
キャデラック・アリーナで勝ち名乗りを受ける結果になれば、彼は新設されたONEライトヘビー級キックボクシング世界王座を獲得する。
「キックボクシングでは多くのタイトルや栄誉を勝ち取れる。でも今は、ONEスーパーシリーズのタイトルこそ、全キックボクサーにとって最高の称号」と、彼は言う。
「11月16日に北京で勝てれば、僕のキャリアにとって最高地点に到達する」
「ONEをオンラインストリーミング、ライブ配信で見る人も多いだろうし、彼らはONEのハイレベルなアスリートを知っている。今回の試合は、自分にとって、そしてウクライナとベラルーシの格闘技ファンにとっても大きなものになる」
北京 | 11月16日 (土) | 18時(日本時間) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)