2019年第3四半期、ONEスーパーシリーズ戦ベスト5
ONEスーパーシリーズは2019年早々から名勝負の連続で、期待値は高まるばかりだが、7月から9月にかけての試合もまたしても好勝負の連続だった。
5ラウンドにわたる世界タイトル戦も、3ラウンド戦で行われる速攻猛攻も、ONEチャンピオンシップで行われるムエタイ戦、キックボクシング戦はスリルとサスペンスに満ちているのだ。
万が一見逃してしまったという方のために、ここで名勝負5戦を振り返っておくことにしよう。
#1 トンナ、プレッシャーに屈せず逆転勝利
「ONE: MASTERS OF DESTINY」(2019年7月、マレーシア・クアラルンプール)で行われた森本義久とのフライ級キックボクシング戦の第1ラウンドで、ジョッシュ・トンナは森本のシャープなパンチと蹴りの連打を浴びていた。しかし、スロースターターとして知られているトンナは、またしてもここから逆襲に転じる。
第2ラウンドに強烈な右のパンチをさく裂させたトンナは、そこから森本をどんどん追い詰めていく。
森本も最終ラウンドに優勢を取り戻そうとするが、トンナはプレッシャーに屈さず、効果的な攻撃を打ち返し、ユナニマス判定勝ちをものにしたのだった。
#2 ペトロシアンとペットモラコットの再戦
5月の疑惑の結末を受けて、ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)とペットモラコット・ペッティンディーアカデミー(タイ)の「ONE: MASTERS OF DESTINY」での再戦には異常な緊張感が漂っていた。
どの程度のミスまでは許容範囲であるのかまでをも知り抜いた両選手だけに、試合は世界チャンピオン対決らしいスムースさには欠けていたものの、それを補って余りある激しい戦いとなった。
いつもは完璧なテクニシャンのペトロシアンが、柄にもなくパンチで突進していくと、ペットモラコットもそれにつられるかのような重いパンチで応戦する。
試合が進むにつれ、ペトロシアンが近距離戦で攻めどころを見いだし、5月の試合で苦しめられたペットモラコットのヒザ蹴りに、必ずカウンターを合わせ始める。さらにペトロシアンは、重いローキックを織り交ぜ、少しずつペットモラコットのスピードを奪っていく。
3ラウンドにわたる動きっぱなしの攻防の結果、ペトロシアンがユナニマス判定勝ちを収め、ONEフェザー級キックボクシンググランプリの準決勝に駒を進めたのであった。
#3 ロッタン対ハガティー、文句なしの名勝負
「 ONE: DAWN OF HEROES」(2019年8月、フィリピン・マニラ)での、ロッタン・ジットムアンノン(タイ)とジョナサン・ハガティー(英国)のONEフライ級ムエタイ世界タイトル戦は、あらゆる期待に応えてみせた一戦だった。
ONEスーパーシリーズのフライ級で最もエキサイティングな両選手は、5ラウンドにわたって全力を出し尽くした。先に優位に立ったのはハガティーで、ジャブとボディキックを使った超一流の距離のコントロールで、ロッタンを寄せ付けない。
その後ハガティーはヒジうちも織り交ぜてくるが、ロッタンは前進を止めず、やがて強力なフックとローキックで反撃の足がかりを見いだす。
ターニングポイントは第4ラウンドにやってきた。ロッタンがどっしりとした右フックでハガティーをノックダウンしたのだ。ところがハガティーはフィニッシュされない。どうにかして回復し、結局試合は難しすぎる判定決着へともつれ込む。
どちらが勝ってもおかしくない接戦だったが、ロッタンのノックダウンが決定打となり、ユナニマス判定勝ちを収めたのだった。
#4 バンプリーノーイとノーランの真っ向勝負
「ONE: DREAMS OF GOLD」(2019年8月、タイ·バンコック)で行われたバンプリーノーイ・ペッティンディーアカデミー(タイ)とリアム・ノーラン(英国)の72 kgキャッチウェイト・ムエタイ戦は、文字通りやられたらやり返す熱戦となった。
序盤はノーランが重いパンチのボクシングコンビネーションとすぐれたディフェンスに、強烈なローキックを交えて優勢に立つ。しかしバンプリーノーイのコンディションがすばらしく、ダメージを受けているのに全く慌てるところがない。
第2ラウンドに入るとバンプリーノーイが攻勢を強め、ノーランのタイミングを見切ると、カウンターパンチをヒットさせ始める。
そして決着は第3ラウンドに持ち越される。ノーランが跳び二段蹴りがヒットするものの、ジャッジはWMCムエタイワールドチャンピオンのバンプリーノーイの手数をわずかに優勢であったと評価、接戦をマジョリティ判定勝ちで制した。
#5 ファーベークがセルバンテスを制する
「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」(2019年9月、ベトナム・ホーチミン)で行われたウェルター級キックボクシング戦の第1ラウンド終盤、サンティーノ・ファーベーク(オランダ)はほぼ勝利を手中に収めていたかに見えた。
ファーベークは強烈な右でジュアン・セルバンテス(英国)からノックダウンを奪い、ここからセルバンテスがばん回していくことはもはや至難の業だったのだ。
しかしセルバンテスは諦めなかった。第2ラウンド、セルバンテスは前進を止めなかったが、それでもセルバンテスの攻撃はファーベークの強烈な反撃に阻まれた。事態が変わったのが第3ラウンドで、セルバンテスの驚きの飛びヒザ蹴りがさく裂すると、そこからファーベークにほぼ3分間にわたる無慈悲な打撃の雨あられを浴びせ続けたのだった。
打撃をアゴにまともにもらいながらも、どうにかダウンを免れて試合を終えたファーベーク。判定の結果、序盤の優位を守り切ってファーベークがONEデビュー戦をマジョリティ判定勝ちで飾ったのだった。