【12/6大会】“猫耳”と国旗持ち試合に—ジヒンが戦う理由
ジヒン・ラズワン(マレーシア)はアジアでトップレベルの女子総合格闘家に早々と仲間入りを果たした。
ウーシュー世界チャンピオンの経歴を持ち、ONEチャンピオンシップで既に4度勝利。今やONE女子アトム級世界王座挑戦にさえ手が届きそうな勢いだ。
しかし、彼女にとって自身の栄光以上に重要な意味をもつことがある。マレーシアとマレーシア国民の代表として世界最大の格闘技団体で戦うのがそうだ。
いつも国旗を強く握り締めてリングに向かうジヒン。リングアナウンサーのドミニク・ラウが彼女を紹介すると、感情が一気に揺れるという。
「リングアナウンサーが『マレーシア代表』と言うたびいつも動揺する。ONEの試合ではいつもそう」。これまで無敗のデニス・ザンボアンガ(フィリピン)との12月6日(金)の「ONE: MARK OF GREATNESS」での対戦を前に、打ち明けた。
緊張と動揺に直面しながらも、地元ファンの歓声ですぐに元気を取り戻すのがジヒンの強さだ。
2018年3月。インドの最強女子総合格闘家の1人、プージャ・トーマル(インド)とのONEデビュー戦で、それは初めて起きた。
「リングに向かうとき私はとても緊張していた。どうすればいいかわからなかった。ONEのような大きな団体で戦うとも思っていなかったし」
「世界の舞台で戦うのは初めてで、観客も私のことを知らなかった。だけど彼らは地元の選手、それも女性選手の存在をとても喜んでくれているようだった」
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ジヒンは目を見張る戦いにより、第2ラウンドの中盤、トーマルを三角締めで下した。
プロとしてわずか2試合目で、彼女は世界の舞台で勝利のマレーシア国旗を掲げた。
「自分は何か大きなことを人生でなし遂げたいとずっと思ってきた。みんな子供はそうだと思うけど」
「10代の頃、その夢はしばらく忘れていた。でもトレーニングを始めて、総合格闘技でただ戦う以上のことができると気づいた」
これだけ若くして国を背負っているからこそ、彼女は神経をすり減らすこともある。
それでもリングへ向かうとき、ジヒンはそんな心の内を見せることはない。
「最後の数回の試合では、涙と必死に戦わないといけなかった。私と同じことを21歳でしている人はほとんどいないから」
「格闘家だから、私は強いはずだと思われる。でもそうじゃない。トレーニングのときや国旗を背負っているとき、私はとても弱気になる」
「でもケージのドアが閉まれば対戦モードに変わる。対戦相手に私の気持ちを悟られたくないから」
ほかのスポーツ選手と同様に、国を代表していることが今ではジヒンがONEで戦い続ける最大の理由のひとつだ。
ジヒンが試合にいつも持っていくものがある。「猫耳」のヘッドホン、それからマレーシア国旗だ。
「国旗は持ち運ばないといけない。ほとんどの格闘家がそうするから伝統なんだろう。彼らは国旗を背負う意味がわかっているから」
ジヒンはあと数勝でONE女子アトム級世界王者への挑戦権を獲得、ひいてはマレーシア人として初めての総合格闘技世界王者への道が拓ける。
それだけでなく、ジヒンは夢を追う彼女の同胞たちに大きな影響を与える存在だということも自覚している。
期待の新星は今、大きな舞台を目の前にし、それをみすみす無駄にする気もない。
「もちろん戦うからには勝ちたい」とジヒン。
「マレーシアで最初の世界王者になるという夢は今もある。だけどすべてのマレーシアの人に『私のようになれる』と知ってもらえるようにこの機会を使いたいとも思う」
「ゼロからのスタートだったけど、ONEチャンピオンシップで夢を追い続けてきたから今の私がある。だから同じようにONE: MARK OF GREATNESSでデニス・ザンボアンガに勝つ。必ず見てね」
クアラルンプール | 12月6日 (金) 19時(日本時間) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)