【10/13大会】ホノリオ・バナリオが警察官から格闘家へ進路修正した理由
ONE元フェザー級世界王者ホノリオ・バナリオ(フィリピン)は、夢に生きている。
フィリピンで最も人気のある総合格闘技ジム「チーム・ラカイ」でトレーニングする毎日。そして10月13日(日)には、東京・両国国技館で開かれる「ONE:CENTURY 世紀」の第2部で日本格闘技のアイコン青木真也と対戦する予定だ。
30歳のバナリオは今や、世界最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップのスター選手。だが昔は、プロの格闘家になるとは思ってもみなかった。
「子どもの頃は、警察官に憧れていた。とても立派に見えたんだ。この国のために働きたいと思った」
「それが当時の自分の目標だった」
バナリオは国民を守りたいと思っていた。麻薬や暴力を街から一掃し、警察を取り巻く否定的なイメージを消したかった。
だからバナリオは大学で犯罪学を学び、夢を叶えるための道を歩み始めたのだった。
「警察官に関する悪いニュースがあふれていた。汚職や、権力を笠に着た嫌がらせなどね」
「自分の地元では、きちんと教育を受けていない人は、本当に警察官を怖がっていた。警察の評判が悪いから。自分は警察官になって、このイメージを変えたかったんだ」
「今では、警察は規律が取れているし、汚職なんかがあれば上層部や政府がきちんと処分している。正しい方向に向かっていると思う」
バナリオは2009年に犯罪学の学士号を取得し、警察学校の試験にも合格した。夢を実現するまであともう少しというところまできた。
だがすぐに、彼は人生の岐路にいることに気づいた。
バナリオは大学で、ウーシューのプログラムのトップ選手だった。ウーシューの全国ジュニアチームにも選ばれたほどだ。そのジュニアチームのコーチは、チーム・ラカイのコーチでもあるマーク・サンジャオだった。やがてバナリオはサンジャオの元でトレーニングを始め、2010年2月に総合格闘技デビューを果たした。
バナリオは格闘技の天性の素質があった。目標を考え直すには十分すぎる才能だった。
「伝統的な家庭では、学んだ分野に関連する職業に就くものだと思われている。でも世の中にはいろいろな職業があって、やってみないとなれないものもある」
「自分が選べる道は警察官になることだけではないと、示したかった」
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バナリオは慎重に選択肢を検討した。そしてすぐに、格闘家になりたいという気持ちが無視できないほど強いことに気づいた。
彼はこれを自分に対する挑戦だと受け止めた。家族に何かを証明するためだけでなく、新たな夢を追い求める挑戦であると。
「格闘技は自分が選んだ道。どんなに困難であっても、本当にやりたかったんだ」
「自分は格闘技が大好き。格闘技を通じて、自分の国に栄誉をもたらすことができた。だから辞めたくなかった」
「警察官になれる人は多いだろう。でも世界チャンピオンになれる人は多くない。格闘家を志すのは一握りだし、その中でトップレベルまで至る人はごくごくわずかだ」
バナリオはキャリアを変えたが、もともと達成したかった目標をあきらめたわけではない。
ONEの総合格闘家として、母国フィリピンや自分のファンのために戦うことができるのだ。
「かつて自分が警察官に憧れていたのと同じように、今では総合格闘家に憧れる若者もいる」
「自分としては、格闘技が持つ美徳を実践することで、意義のあるロールモデルになれるよう最善を尽くしている。格闘技を通じて国を代表することができるから、そういう意味ではフィリピンのために働いていると思っている」
「警察官は国民を守ることで国に仕えている。自分たちは格闘家として世界の舞台で国を代表して戦い、フィリピン人の誇りを示すことで国に仕えている」
バナリオは両国国技館で、フィリピンを代表して青木と対戦する。
日本格闘界のアイコンに真っ向勝負を挑むのは、バナリオにとっては挑戦であり、楽しみでもある。出来たかもしれないことを考えるより、ただ進み続けるだけだ。
「後悔はない。ただベストを尽くして格闘界で実績を積み重ね、この道を歩み続けたい」
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「ONE: CENTURY 世紀」は、さまざまな格闘技から28人の世界チャンピオンが参戦する、史上最大の世界選手権格闘技イベントだ。フルスケールの世界選手権格闘技イベント2大会が同日開催されるのも、史上初めてのことである。
複数の世界タイトル戦、世界グランプリチャンピオンシップ決勝戦3試合、そして世界チャンピオン同士の対決をふんだんに取りそろえ、ONEチャンピオンシップが東京の両国国技館で新地平を切り拓く。