【12/6大会】澤田龍人がONEストロー級の新星になるまで
サブミッションのスペシャリスト、澤田龍人は小さい頃から、自分の人生は格闘技に捧げることになるだろうと分かっていた。それが期待されていた道とは違うものであったとしても。
澤田は高校を中退して総合格闘家になった。仲間のほとんどが大学への進学を選ぶ中、澤田の選択は正しかったと言える。24歳の今、ONEチャンピオンシップのストロー級の最有力株の一人にまで成長したからだ。
12月6日にマレーシア・クアラルンプールで開かれる「ONE:MARK OF GREATNESS」で、ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)と対戦するのを前に、澤田がこれまでを振り返る。
伝説に魅せられて
澤田は東京・目黒区で、3人兄弟の真ん中として育った。家族は両親と兄、妹。仲の良い家族だった。
澤田がレスリングを始めたのは4歳の時。父親に連れられて日本の総合格闘技の伝説、桜庭和志と、ブラジルの総合格闘家ホイス・グレーシーの試合を見に行った後のことだ。
桜庭は総合格闘技のパイオニアでありレジェンドだ。相手の強さを上回るテクニックを駆使し、自分よりずっと大きい選手を倒すのが持ち味で、”IQレスラー”と呼ばれた。桜庭は身長156センチと小柄で、155センチの澤田は今も自分のヒーローとして桜庭をモデルにしている。
「いつも桜庭選手を尊敬してきた。今でも彼のようなファイターになりたいと思っている」
「彼は小柄だが大きな選手を倒す。それに本当に観客をとりこにしてしまうんだ。そういうスタイルの戦い方に、いつも惹かれてきた。サブミッション勝ちして喝さいを受けるような」
運命に引かれたかのように、澤田の格闘家としての人生は格闘技ジム「高田道場」で始まった。桜庭を生んだことで有名なジムだ。
初めてマットを体験した日から、澤田は後に大成功を収めることができるようなメンタリティを発揮した。
「レスリングは始めるのに何もいらないというところが好き。全く強くなくてもいい。諦めずに続ければ、強くなれるし上手になれる」
敬意と自尊心
澤田は学校が好きだったし友人と遊ぶのも好きだった。だがいつも放課後のトレーニングを楽しみにしていた。東京にある別の有名ジムに入門した時は、特にそうだった。
総合格闘技ジム「Abe Ani Combat Club(AACC)」で、澤田は阿部裕幸、さらに女性格闘家のパイオニアである藤井惠に師事。これにより格闘技の幅を広げることができた。
だがAACCではトップ選手というだけでは十分ではなかった。指導の重要な要素を占めるのが、自尊心と敬意を持ってより良い人間なるよう努めることだった。正しく挨拶できるようになることは、サブミッションの練習と同じくらい重要なことだった。
「2人と素晴らしいコーチだ。たくさんのことを教わった」
「トレーニングをしっかり続けるよう、それにいつでも全力で取り組むよう、いつも励ましてくれた。
澤田は総合格闘家としてのキャリアを夢見ていた。その夢を追求するために学業を中断し、総合格闘家としての道を進んだ。
「高校1年生の時にレスリング部に入って、自分が本当にやりたいことが総合格闘技だということに気づいた。だから学校をやめてAACCでのトレーニングに戻った」
澤田はこの頃、自分の決断が正しかったのか迷うことがあったと言う。だがそれはすぐに立証された。
敗れても敗れても
AACCの優秀なコーチの下、澤田は技を磨き続け、空手で黒帯を、ブラジリアン柔術で紫帯を獲得した。
2013年にプロデビューし、5勝のうち4勝をフィニッシュで獲得。2年後には修斗世界タイトルに挑むチャンスを得た。だが後にONEストロー級世界王者となる内藤禎貴(のび太)の前に敗北を喫す。
「最も大変なのは敗北を克服すること。どうやってやる気を維持して前向きになるかというのは、いつも難しい」
「負けてフラストレーションが溜まっている時は、次の試合のためにもっとハードにトレーニングをすることにしてきた」
澤田は再びトップに挑戦する機会を得るが、後のONE世界王者猿田洋祐に敗れるという同じような展開になる。
だが澤田は、負けた相手へのリベンジを期すため、いつものようにまた一からやり直した。だが今回は、澤田を一段上のレベルに引き上げる、別のチャンスが待っていた。
夢は世界チャンピオン
澤田は昨年、ONEの若手登竜門「ONEウォリアーシリーズ」に参戦する機会を得て、2試合を第1ラウンドでのサブミッション勝ちで終えるという結果を残す。そしてONE本戦への切符を手にした。
世界最大の格闘技団体ONEへのデビューを前に、澤田は今年2月にシンガポールに移り、メガジム「Evolve MMA」でトレーニングを積んだ。そして世界クラスのチームと共に技を磨いた。
「Evolveのチームメイトとコーチには、いろいろなサポートをしてもらっている。自分が強くなるために、あらゆることをやってくれる」
「結束の強いチームのような雰囲気を感じる。彼らにはいつも感謝している」
シンガポールでの厳しいトレーニングのおかげで、今年8月のONEデビュー戦ではアジス・カリム(インドネシア)を相手に第1ラウンド69秒という衝撃のフィニッシュ勝ちを収めた。
澤田は現在3連勝。ストロー級でこのままランクを上げていけると確信している。
「自分の戦いのスタイルはいつも、最初からフィニッシュを狙っている。このスタイルをファンに見せて喜んでもらいたいと思っている」
「ONE世界チャンピオンのベルトに挑戦できるように、1試合1試合、勝ち続けたい」
クアラルンプール | 12月6日 (金) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)