ONE公式ランク3位、タン・リーのこれまで
タン・リー(ベトナム/米国)は、多様な派手なテクニックで、米国のハードコアな格闘技ファンを魅了した後2019年5月、ONEチャンピオンシップにデビューした。以来、ONEでの戦歴を完璧な3勝0敗、先日発表されたONE公式アスリートランキングで総合格闘技フェザー級3位に選ばれた。
リーは、デビュー戦の「ONE:FOR HONOR」でユサップ・サーデュラエフ(ロシア)と対戦し、第2ラウンドでノックアウト勝ち。続く8月の「ONE:DREAMS OF GOLD」でも、ONEフェザー級元世界王者の朴光哲を、88秒でノックアウト。今年1月の「ONE:A NEW TOMORROW」で、リーは高橋遼伍と対戦し、第1ラウンドでノックアウト勝ちを決めている。
この記事では、現在34歳のリーのONEに参戦する以前の足跡を紹介する。
ファミリービジネス
リーの父親はベトナムから移住し、米国・ケンタッキー州で母親と出会った。リーはオーエンズボロという小さな町で生まれ、5歳の時、父親が精錬所で配管工の仕事を見付けたのを機に、家族はルイジアナ州ニューオーリンズ引っ越した。
リーの父親はテコンドーの選手でもあった。わずか8歳の時にベトナムでトレーニングを始めたのだ。父親はやがて「Moon College Taekwondo」という道場を開き、今でもそこで教えている。
リーが歩けるようになるとすぐ、父親は自分のスキルを教え始めた。そしてリーは優秀だった。
「子どもの頃は格闘技道場で過ごし、トーナメントに参加するためにあちこちに出かけた」とリーは語る。
「素晴らしい家族と格闘技の学校があったから、そこで育つのは素晴らしいことだった。良くないことに巻き込まれないようにしてくれたし、毎日大好きなことができた」
「こういう恵まれた環境で育ち、しかも学んだことを生かせるのは本当にうれしい」
クレイジーな決断
リーは弟と共にテコンドーを練習して育ったが、自分のスキルを生かして家族を養うことは考えていなかった。
青年期を通してトレーニングを続け、気力に満ち溢れていたリーに転機が訪れたのは、26歳の時だった。ある週末、ルイジアナの地元の総合格闘技のイベントを見に行ったことがきっかけとなり、総合格闘技の世界に飛び込むことにしたのだ。
リーは当時、フルタイムの仕事をしていたが、すぐに決断し、全く新しいキャリアを進むことになった。
「クレイジーな話だよ。地元の試合をいくつか見に行って、自分と友達のカルロス・ベラは『これって格好良いよね、自分たちもやらないと』って感じだった」
「それで2、3か月後に、自分達は試合に出るようになった。ボクシングや柔術、レスリングなど、他の種目もトレーニングしないといけないとわかっていたが、そういうトレーニングをせずに戦った」
「自分たちはただクレイジーだった。やろうと決めて、それが自分の人生になった」
怪我から復帰
アスリートとして人生を歩み始めてから7年の間に、個人としても格闘家としても、試練を経験した。
プライベートでは辛い離婚を経験した。10歳の息子と離れるのは余計に辛かった。だが彼と元妻は今も共に、息子を支えているという。
一方、格闘家としてのキャリアでは、度重なるケガに悩まされていた。中でも酷かったのは2014年のケガだ。
ルイジアナ州での大会のメインイベントに出ていたリーは、序盤の打撃の応酬の最中、相手のパンチを食らいアゴ2か所を骨折したのだ。それでもリーは痛みを乗り越えて試合を続け、なんと見事に第1ラウンドでのノックアウト勝ちを決めた。だが、そのダメージにより1年以上試合から遠ざかることになった。
ケガがプラスになったことが1つあるとすれば、総合格闘技が自分にとってただの趣味ではないと気づいたことだ。リーはプロとしてやっていきたかった。
「大変だった。トレーニングができない、話せない、ワイヤーでアゴが閉じられている、食べるのはストロー、日常的に好きなことができない。特に、忙しくてアクティブなライフスタイルを送っている人にはね」
「ただソファに座っているというのは、精神的にも肉体的にも辛い」
「そこから戻って来られたというのは、自分の人生の中でも好きな時期。総合格闘技を本当にやりたくて、本当に好きだというのがわかったから。ああいう経験があったのは大きなことだった」
トップを目指して
リーはケガから復帰して試合に戻ると、4連続ノックアウト勝ちを収め、米総合格闘技団体「レガシー・ファイティング・アライアンス(LFA)」フェザー級王者のタイトルを獲得。これを契機にONEへの道が開けた。
ONE初戦を前にリーは、ONEフェザー級世界タイトルの獲得を目指したいと目標を語っている。
「総合格闘技は適当にやるだけなら、やる価値はないと思う。本気でやるなら、ベストを目指したいと思うだろう」
「それこそが格闘技の目的。真の可能性を見出し、なり得る限り最高の格闘家になることがね。それが大事。最も過酷な対戦相手を求めている」
「それ(王座獲得)がONEに参加した理由。自分のスキルのレベルを証明し、世界最強になりたい」
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