【5/6大会】ロッタンの挑戦者、エドガー・タバレスのこれまで
エドガー・タバレス(メキシコ)は、逆境を乗り越え、不屈の精神を築き上げた。
5月6日(土)の「ONE Fight Night 10: Johnson vs. Moraes III」で行われる王者ロッタン・ジットムアンノン(タイ)とのONEフライ級ムエタイ世界タイトルマッチでは、タバレスはその強みを生かすことだろう。
タバレスは、ONEデビュー戦にして世界で最も恐れられているストライカー・ロッタンが有する世界タイトルに挑戦するという大きなチャンスを手に入れた。しかも、その舞台は歴史的なONE初の米国大会だ。
同大会まで1ヶ月を切った今、この記事ではタバレスのこれまでを振り返る。
いじめられっこ
4人きょうだいの第1子として生まれたタバレスは、仲の良い家族の中で育った。
両親は愛情深く、幸せな子供時代だったそうだが、難しい時期もあった。
現在28歳のタバレスは、いじめられた経験についてこう明かしている。
「自分が知っているファイターは全員いじめられた経験があると思う。自分もいじめられたけれど、学校じゃなかった。いとこや家族、そして友達からいじめられて、それがすごく嫌だった」
近しい人間からのいじめだったためか、タバレスはひどく傷ついた。
しかし、信仰を通じて最終的には自身をいじめた人々を許すことができたという。
「すごく傷ついた。両親は叔父や叔母とトラブルになるのを嫌がったからだと思うが、何もしてくれなかったから。このことは深く心に引っかかっていたと思う」
「けれども神との出会いで、必要だった自由を手に入れられた。だからこの瞬間はいい気分だ。自由を感じている。自分をいじめたいとこや友達を抱きしめる自由がある」
経験を強さに変えて
いじめられた経験を通じてタバレスは、幼い頃から立ち直る力やメンタルの強さを身につけ、それをやがてリングの上で発揮するようになる。
最初にテコンドー、次にボクシングとムエタイを始め、精神的な強さは戦いの武器になることに気づいた。そしてすぐさま格闘技の魅力に取りつかれたという。
「殴られてもいい。当てられてもいい。傷つけられてもいい。けれども、自分を止めることはできない。自分には夢や、やるべきこと、目標があるから。これらが自分のモチベーションになっている」
テコンドーを経験したため、10代でムエタイはあっという間に上達。さらにボクシングのスキルに重点を置いて打撃を磨き上げていった。
やがてアマチュア戦に出場するようになった。しかし、初めてのキックボクシングマッチの相手は意外な相手だった。自身の弟だ。
タバレスはこのときの経験をこう振り返っている。
「弟は同じ時期に始めたから、とてもおかしな感覚だった。自分の方が1歳年上で、一緒に始めて一緒にトレーニングをして、初めて試合が組まれたときに、2人とも対戦相手に出場を辞退されたんだ」
「弟と『対戦相手がいないんだ』と話していた。だから2人で戦うことにした。その夜で一番注目された試合だった。それが初試合で、弟が相手だったから楽しいものではなかった。けれども、リングに入って、観客が叫んでいるのを見るのは気分がよかった」
2年間のブランク
ムエタイ戦士として頭角を現しはじめたころ、タバレスは重い病気になった。
17歳で肝炎になり、2年間競技ができなかった。しかし、信仰のおかげで乗り越えられたと話している。
「肝炎になってもトレーニングした。肝炎になっても試合をした。何も知らずに肝炎を抱えていた。けれども病気に気づいたときは、肝臓は悪くなっていた。とても悪かった。2年間競技から遠かった」
「トレーニングをしながらムエタイを教えていた。けれどもファイターとしてのキャリアはストップした。怖かったからだ。けれども神の加護のおかげで、回復できた」
そしてタバレスは、メキシコのトップムエタイ選手としてカムバックを果たすことになる。2022年にはメキシコ人初のWBCムエタイ・インターナショナル王者に。そしてONEチャンピオンシップの目に留まることになった。
ここまで苦しい時期もあったものの、2人の重要な人物からインスピレーションを得たという。
「父は問題があっても大丈夫だと言ってくれた。お金も何も無くても、ベストを尽くさないといけない、すべてを乗り越える方法を見つけなければいけないって。父はとても努力家で、努力する人間になれと教えてくれた」
「もう1人、自分のヒーローだと思うのは、義理の父だ。彼も努力家だけど、愛することを教えてくれた。傷つけられても、愛さなければいけないって。愛を与えなければいい人間にはなれない。悪い人はたくさんいるし、この世界にはたくさんの悪がある。愛がある人間になることで、変化をもたらすことができるって」
「ロッタンを圧倒する」
世界的な実績を有するタバレスだが、5月6日のロッタン戦はキャリア最大の試練となる。
ロッタンは、通算250勝以上を挙げており、ONEの打撃競技では負けなし。フライ級ムエタイ王者として頂点に長く君臨している。
しかし、タバレスはこうした試練にも前向きだ。
「メキシコでは『トマール・エル・トロ・ポル・ロス・クエルノス』という言葉がある。角をつかんで牛を抑え込むんだ。ロッタンが野獣だと知っているが、その野獣を圧倒してやる」
長年ロッタンとの対戦を熱望していたというタバレス。
ついにその夢が叶うことになるが、アップセットを起こしてベルトを奪うためには最高のコンディションで臨まねばならないとわかっている。
タバレスはこうコメントした。
「ロッタンと戦うのが楽しみだ。ONEの世界タイトルをかけて戦うのは夢だった。神からの贈り物だ。だから、狙いに行く。待ちたくはない。この夢に向かってハードワークをしないとけいない」