格闘技トレーニングを進化させる3つのテクノロジー
テクノロジーは私たちの暮らし方、働き方、そして遊び方を変えてきた。そして今、格闘技のトレーニングも、テクノロジーによって変貌を遂げている。
先進的で小型なウェアラブル・デバイスから、シンプルだが大型の機器まで、アスリートたちはゲームを完成されたものにするために、あらゆるものを利用している。
この記事では、格闘家が試合に備える方法を変えてきた、3つのテクノロジーについて紹介する。
#1 心拍計
心拍計は、胸と手首に装着するデバイスだ。胸のバンドに付いている小さな電子センサーでトレーニング中の心拍数を計り、手首の装置で確認する。
心拍数を理解することは、格闘技のトレーニングを最大限に生かすことにつながる。
たとえば、スパーリングや重いサンドバッグを打つトレーニング中には心拍数が上昇し、特定の強度に達する。特定の心拍数ゾーンを長時間、維持することで、スタミナや体調が向上する。
トロイ・ウォーゼン(米国)の高強度なレスリングのスタイルは、トレーニングによって強化された、信じがたいほどの耐久力の証だ。
「心拍数をエアロビック・ゾーン(「最大心拍数ー年齢」などで算出した最大エアロビック心拍数より低い領域)でトレーニングする必要がある場合は、心拍数をどこに保てばいいかが自分でわかる」と、シンガポールのメガジム「Evolve MMA」に所属するウォーゼンは説明する。
「心拍計は、トレーニングをしすぎていないか、正しいトレーニングでやっているかを確認する上で、より確実な科学的アプローチを提供してくれる」
アレクシ・トイヴォネン(フィンランド)も同様に、心拍計を使ってトレーニングセッションを最適化している。
「全てのアスリートにとって非常に有益であり、全てのスポーツ選手にとってほぼ必須であると思う」とトイヴォネンは強調する。
「限界を押し上げているのか、有酸素能力の範囲内にあるのか、あるいはラウンド間でどれだけ速く回復しているのかまで知るのは非常に困難だ。心拍計を使用すると、トレーニングによって必要な効果が得られているかどうか、物理的にわかる」
#2 インタラクティブ・トレーナー
インタラクティブ・トレーナー(双方向通信機能が付いたトレーニング機器)は、高強度のムエタイやキックボクシングのトレーニングを可能にしてくれる。インストラクターが近くにいない場合でも、このマシンがあれば、より効果的なトレーニングを行うことができる。
インタラクティブ・トレーナーには、加速度計を備えた打撃用パッドがいくつか付いており、パワー、精度、打撃数、タイミングなどをリアルタイムに表示してくれる。
こういった高度な測定により、進捗状況を確認したり、改善が必要な領域を見つけたりすることができる。さらに、作業する領域に応じて、様々なトレーニングをカスタマイズすることもできる。
ウォーゼンはインタラクティブ・トレーナーが、特にストライカーにとって、比類のないトレーニング方法を提供する、革新的な機器だと考えている。
「精度を高めたり、様々な角度から打撃やコンボを打ったりすることができるから、素晴らしいものだと思う。従来のサンドバッグではできなかったようなことだ」
「それに、コーチがパッドを持つ必要がない。スキルを磨き、現実的なコンビネーションを使うことができる」
#3 グラップリング・ダミー
ブラジリアン柔術や、総合格闘技をトレーニングしている人なら、グラップリング・ダミーは組み合う相手を見付けられない場合の、次善の選択肢になるだろう。
これはシンプルだが実用的な製品であり、腕と脚を備えた人間の胴体に似せて作られ、サンドバッグどほぼ同じ重さがある。だがこれはグラップリング(組み技)やレスリングのためだけのものではない。ダミーをぶら下げてキックやパンチのターゲットにすることもできる。
全米大学レスリング協会(NCWA)のチャンピオンに輝いた実績を持つウォーゼンは、セントラルフロリダ大学に在学中から、グラップリング・ダミーの進化を目の当たりにしてきた。
「しばらく前から存在しているが、現在では遥かに進化している」
「グラップリング・ダミーは現在、操作する腕、足、きちんとした頭さえ持っている。パートナーがいなくても、実際に攻撃したい特定の場所を訓練したり、動きを練習したりできる」
トイヴォネンの場合、グラップリング・ダミーを使用することで、誰かをケガさせる心配なく思いっきり総合格闘技のトレーニングができるという。
「グラウンドパンチのトレーニングをする時、チームメイトを全力で攻撃することは実際にはできない。つまり、ダミーは、そういうトレーニングをする時にサンドバッグの代わりになる優れた製品だ」