ミーシャ・テイト通信:タイの屋台フードで祝った誕生日
ミーシャ・テイトは、ONEチャンピオンシップ副社長であり、総合格闘技で数々の世界タイトルを手にした女子格闘技界のパイオニア。不定期にお届けしている「ミーシャ・テイト通信」、今回はタイで過ごした誕生日についてー。
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まったく最高の誕生日だった。
今回は、アメリカから海外に移住して迎える初めての誕生日。一言でいえば、これまでとはだいぶ違う一日になった。
毎年、友達や家族と一緒にお祝いするのが常だったけれど、シンガポールに引っ越したばかりの私たち一家は、アメリカにいた時と同じような深い友情を周りの人たちと築くまでにはまだいたっていなかった。
私の誕生日の2日前、私たちは「ONE: DREAM OF GOLD」のためにバンコクにいた。大会が終わると、ジョニー、アマイアと我が家のメイド、それから私は、誕生日を祝うためにプーケットに飛んだ。
アメリカの馴染みの顔ぶれがいなかったのは寂しかったけれど、タイで過ごす時間は素晴らしい休暇となった。タイは本当に楽しい国だ。
(※「素晴らしい誕生日だった」という文章が添えられたミーシャ・テイトのインスタグラム)
母と私の誕生日は同じ日なので、時差があったけれどゆっくりおしゃべりをした。母は私に「アジア時間での誕生日おめでとう」と言ってくれたし、私は母の「アメリカ時間での誕生日」に連絡した。2日間続けてお互いの誕生日を祝い合ったのだ。
2日間のバケーションで滞在したのは、パトンビーチ近くのリゾートだった。ビーチでマッサージを受けて、新鮮なフルーツのシェイクを飲んだ。タイのビーチは本当に美しくて、人々もとてもフレンドリーだった。
ビーチでのマッサージは最高だった。海がすぐそこにあるのだから。波音に包まれてマッサージを受けるのは、すごくリラックスできた。うとうとしてしまったほどだ。今回の旅行のハイライトのひとつだった。それに、アマイアもビーチが大好きで、自然の中で過ごす時はいつもとても楽しそうなのだ。
残念だったのは、トゥクトゥクに乗らなかったことだ。アマイアが一緒だったし、赤ちゃん連れでのトゥクトゥクが安全かどうかいまいち自信がなかったから。
アマイアが眠っている時、ジョニーと私はスクーターを借りて出かけた。観光スポットをいくつか巡って、カタビーチにも行った。すごく楽しかった。でも、トゥクトゥクはタイ文化の重要な一部だから、タイに行くなら一度は乗らないといけないと思う。
ジョニーは私にHeavenで食事をしたいかと尋ねた。ビーチを見下ろす高い丘の上にあり、息をのむような美しい景色を楽しめるレストランだ。前回の旅行で一度連れて行ってもらったので、今回は予約はキャンセルしてほしいとお願いした。
誕生日にはいろいろなストリートフードを食べたかった。だから、屋台がたくさんある小さな市場に行くことにした。様々な食べ物を試すことができて、最高だった。
最初に食べたのはパッタイ。タイにいる時の私の主食だ。それから、ポークリブのバーベキューに、マンゴーともち米のデザート。これは、間違いなく私のお気に入りのデザートのひとつになった。本当にいろいろなものを試したけれど、素晴らしかったのは、すべてが目の前で新鮮な材料で作られていたことだ。
様々な食べ物にトライするのはいつだって好きだ。一度、タイでコオロギを食べたこともある。でも、昆虫を食べるのはそんなに好きだとはいえない。心理的なものかもしれないけれど。どんな味がするのか考えすぎてしまった。あまりに思考が働きすぎると、美味しいと思えなくなってしまうものだ。
日本で牛タンを試したこともあるし、前回、パトンビーチに来た時は鶏レバーを食べた。ただ、ひとつだけ絶対に試さないだろうと思うのは、バロット(孵化しかけた卵)だ。私にとっては、聞いただけでも気分が悪くなりそうな食べ物だから。
アジアの食べ物は大好きだけれど、あまり好きになれない点をあげるとしたら、盛りつけの仕方だ。たとえば、魚は目がついたままでお皿にのっていたりするし、アヒルの頭もそのままついていたりする。アメリカではそういうものを見ることはない。美味しそうにカットされた鶏の胸肉のように食欲をそそる眺めとはいえない。
美味しい食べ物と素晴らしい景色に加え、今回の旅行の忘れられない思い出は、アマイアの服を孤児院に寄付したことだ。
アマイアは1歳3ヶ月なので、もう着られなくなった服がたくさんある。ずっと寄付したいと思っていたのだが、本当に必要な人のもとに届くようにしたかった。
前回、プーケットを訪れた時、ジョニーと私は孤児院を見学に行った。両親を亡くした子供たちが、日々の暮らしを楽しみ、笑顔で幸せそうにしているところを見て、心を動かされた。つらい出来事を経験してきたのに、子どもたちの表情はそれをまったく感じさせなかった。
子どもたちは私たちが見学に来たことをとても喜んでくれた。昼食やお菓子を買ってあげたが、それは彼らにとってはめったにない贅沢なのだった。言葉の壁はあっても、子どもたちは私たちに話しかけ、一緒に遊んで、楽しんでいた。自分たちの人生に欠けているものがあることを知らないみたいで、それが、とても美しかった。子どもたちはしなやかに立ち直る力を持っていて、どんな状況にでも適応する準備ができていた。
彼らの暮らしを少しだけでも良くするために自分が何かをすることができるのは、魔法みたいに感じられた。
ジョニーはスペシャルな演出が得意だ。いつもやりすぎるくらい思いやりと優しさにあふれている。
ジョニーはサプライズで私をエレファントリタイアメントセンターに連れて行ってくれた。鎖で象をつなぐことはせず、象に乗ることもできない。そのかわり、象と一緒に過ごすことを楽しめるパークだ。彼は本当に私のことをわかっている。動物が大好きな私は、動物がひどい扱いを受けることには心から反対なのだから。
旅行に出発する前にまで、ジョニーはこっそり作らせた家族のポートレイトをサプライズで贈ってくれた。とてもユニークで、私たち家族の写真が木にまでプリントされているのだ。
つまり、ジョニーと娘とともに誕生日を過ごせること、私が本当に必要としていたのはそれだけだった。それ以外はすべて、嬉しいおまけみたいなものだ。ジョニーとアマイアと一緒にいると、シンプルだけれど人生で一番大切なものを思い出すことができた。そう、家族だ。