青木真也のONE入門:無観客試合を振り返って
格闘技は観客を入れてやるもの。当たり前のことになっている感覚です。
僕が子供の頃に魅了されたプロレスは観客と共に大会を作り上げていたし、格闘技もファンとして見ていたときも観客の盛り上がりと共に大会を楽しんでいました。サッカーだって、野球だって、アーティストのライブだって、観客の盛り上がりが演者のパフォーマンスを更に盛り上げる要素は多分にあります。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ONEの2月のシンガポール大会「ONE: KING OF THE JUNGLE」では初の無観客試合を開催。僕が記憶している限り無観客試合を開催した格闘技の大会は、ファンになった10代の頃から25年間例がないことです。
入場料ばかりに頼るのではなく、このスポーツが一段上に上がって世界各国に放送する最大級のスポーツイベントになったからこそ、無観客試合が開催できるので、格闘技というスポーツをずっと見てきた者としては不謹慎かもしれないが誇らしくも感じます。
僕はキャリアの中で無観客試合をしたことは一度もないです。なので想像の域を超えません。選手のとしての心構えとしては「いつでも どこでも 誰にでも」自分の100パーセントのパフォーマンスを発揮することが大事なので、選手としてのパフォーマンスは観客の有無に関係しないように作り上げるでしょう。
選手としてはパフォーマンスに影響することはないのではないかと僕は考えるし、実際に大会を見ても選手のパフォーマンスはいつもと変わらないものがそこにはありました。
実際に出場した選手に話を聞いてみると普段と変わらなかったとの話を聞くし、試合をすること自体に緊張感が伴うものだから、普段の試合と変わることはないのだと思います。むしろ会場の盛り上がりがない分だけ、感情のコントロールはスムーズにできるので、あがり症の選手のとっては好材料になるとさえ思っています。
僕は「AbemaTV」でシンガポール大会の試合の解説をしていたので、イベントとしては普段と変わらないクオリティのものを見せてもらって満足でした。無観客試合でも変わらないクオリティを出す選手、スタッフの力量と気合に頭が下がる思いで放送を終えました。
ただファン時代に観客として会場で熱狂していたとき。選手として大歓声の中でイベントを観客の皆様と一緒に作り上げたとき。あの熱狂と興奮は何ものにも代えがたい経験だと思っています。スポーツでも音楽でも演劇でも醍醐味は会場でライブで体験することだと思っています。
放送のクオリティが飛躍的に上がってどこでも動画で観れる時代だからこそ、実際に会場で体験する価値が上がっていると思います。この傾向が今後もっと加速していくと思っていて、便利になって放送のクオリティが上がれば上がるほどに体験としての会場での観戦が価値を上げるはずです。
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Shinya Aoki showcased supreme grappling skills en route to a TKO win at 2:16 of Round 1! TV: Check local listings for global broadcast
Posted by ONE Championship on Friday, July 27, 2018
僕自身も選手として経験したフィリピン大会(2018年7月の「ONE: REIGN OF KINGS」)の観客の盛り上がり、母国日本で試合をしたときのファンと共に物語を創っている感覚。これは格闘技がスポーツと並行して、芸事や物語にある魅力だと思っています。大会はファンと一緒に創るものだと僕は思ってやっているので、スポーツだけれども、芸事のような感覚を持っています。だからこそ観客の前で闘って一緒に創り上げていきたいと僕は強く思っています。
ONEの魅力は会場でのライブのクオリティの高さだと思っています。
世界には様々な大会があって、イベントごとに魅力があると思っていますが、ONEのライブでの魅力はどのスポーツにもそのショーにも負けないクオリティがあると思っています。
だからこそ、早く新型コロナウイルスが終息して、世界に誇れるこの大会を、この文化を皆様と一緒に創っていけることを祈っています。必ず皆で創り上げましょう。