青木真也のONE入門:総合格闘技、なぜ1R5分?
現在、総合格闘技で一般に採用されている試合時間は1ラウンド5分。世界タイトル戦は5ラウンド。その他の試合は3ラウンド。
この試合時間に関して、疑問に思うこともないくらいに当たり前になっているのですが、本来の格闘技(格闘術)は判定もなければ試合時間もなく、ノックアウトかギブアップ以外に決着はありませんでした。
ここで一度古武術から総合格闘技まで、試合時間の変遷という観点から歴史を簡単に振り返ってみましょう。
柔道の前身である古武術は戦国時代に戦で相手を討つ術であったから、そこに試合時間も判定もルールが介在する余地はありません。オリンピックなどで見られる現代柔道の元となったのは、江戸初期に作られた「起倒流柔術」と幕末期に作られた「天神真楊流」の古武術とされています。その後、日本の柔道家・前田光世がブラジルで柔道を教えて、グレイシー柔術の礎を作り、総合格闘技の発展につながりました。
一見関係ないかのように見える総合格闘技と古武術ですが、僕は歴史的に繋がっていると思っています。
総合格闘技が異種格闘技戦として流派同士の対戦として行われた時期は様々な試合時間が存在しました。時間無制限もあれば、5分の無制限ラウンドもあって、それ以外にも様々な試合時間が存在しました。
有名な例を挙げれば2000年に東京で行われた桜庭和志とホイス・グレイシーの試合は15分無制限ラウンドで行われ、90分間の死闘を繰り広げた。
90分で決着がついたからいいものの決着がつかずに日をまたぐことも考えられたわけだから、その当時のおおらかさと勢いを感じます。スポーツイベントとして考えたときに時間が読めないのは相当の調整力が必要になってくることだし、現代でこの形式をやれるのかは正直イメージがわかないです。
どの格闘技が一番強いのかの問いは永遠に存在するものだと思っています。現在はルールが整備されてきて、どの格闘技が一番強いのかではなく、誰が一番強いのかに人々の注目が重きを占めていますが、依然どの格闘技が一番強いかの思いはあるはずです。
黎明期はルールが明確に決まることはなかったのですが、競技が成熟してスポーツ化して行くことで現状の試合時間やルールに落ち着いていきます。前回の階級制の記事でも書いたのですが、試合時間も階級制が変わってきたように今後変わって行く可能性もあるだろうし、今がベストではなく、これからもベストを目指して行くものだと思っています。
ONEの総合格闘技ルールも5分3ラウンド制を基本として、チャンピオンシップは5ラウンド制を敷いています。
キックボクシングとムエタイは3分のラウンド制を敷いていますが、総合格闘技も3分のラウンド制にされてしまうと組み技を軸に攻める選手からすると時間的な不利を感じます。どうしても組み技はテイクダウンから抑え込んでサブミッションと手間と時間がかかるので、総合格闘技の5分のラウンド制はフェアなルールだと個人的には思っています。
同じ15分でも3分5Rと5分3Rでは内容が全く違ってくるし、15分一本勝負ではまた違ってきます。試合時間が長ければラウンドによって、グラウンドの攻防が中断せず、苦労してテイクダウンした攻防をやりなおすことがないので、経験としては試合時間によって違ったものとなります。
個人的には選手目線でいうと時間無制限でどちらか強いのか決めたらいいじゃないかとの思いは当然あります。これは偽らざる気持ちだし、僕はとにかくシンプルに考えています。素手素足で闘いたいほどにとにかくシンプルに考えています。
ただ、自分が試合を見る時は、時間無制限で攻防が少ない試合を見たいとは思わないし、素手で殴り合って互いにケガのリスクを負うような試合を見たいとは思わないです。5分のラウンド制で区切られていた方が見やすいし、グローブ着用の試合のほうが安心して見ることが出来ます。
現状のONEの試合時間に関しては選手も納得できて、観客も見やすいルールに仕上がっています。
観戦の際にはキックボクシングやムエタイはグラウンドがないから3分でいいのだけども、総合格闘技は打撃もグラウンドもあるから5分なんだと話しながら見ていただけたら、ONE観戦の楽しみも増すと思います。
今後の大会もお楽しみください。