★インタビュー特集:日本選手の2019/2020⑦—青木真也
ONEチャンピオンシップの日本人アスリートに2019年を振り返ってもらい、2020年の抱負を聞く企画「ONE日本選手の2019/2020」。今回は2019年、ONEで3試合に出場した青木真也のインタビューをお届けする。
青木は今年3月の両国大会「ONE:A NEW ERA 新時代」でエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)と対戦し、ONEライト級世界王座のベルトを2013年ぶりに奪還。だが、5月の「ONE:ENTER THE DRAGON」で挑戦者のクリスチャン・リー(シンガポール)をフィニッシュ目前まで追い詰めたものの、第2ラウンドで逆転TKO負けを喫し、47日で巻いたばかりのベルトを失った。
だが5ヶ月後、10月の2度目の両国大会「ONE: CENTURY PART II」で、メインカードの試合に日本人選手で唯一登場。コーメインイベントでホノリオ・バナリオ(フィリピン)を相手に第1ラウンドでサブミッション勝利を決め、健在ぶりを見せつけた。
長期目標を重視するため、新年だからといって特別な目標を立てることはないという青木。だが、常に全力で格闘技に取り組む生き様を語る言葉の端々には、悔いなき2020年を送るためのヒントが満載だ。
ONEチャンピオンシップ:2019年はどんな年だったか?
青木真也:戦績的なことでいうと、負けないことを目指すなら、試合をしなければいい。試合をしたから当然、勝ちも負けもある。そこでいうと、全ての試合がいい物語が作れたと思っているし、割といい仕事をしたと思っている。
ONE:2019年に点数をつけると?
青木:過去のことはどうでもいい。今年はよかったな、と振り返ってあまり思わないかな。よく頑張ったとは思うが。
ONE: 年始に目標を立てる習慣はないか?
青木:長期目標はあるが、今年これをして、というのは考えない。
ONE:1年区切りで物事を考えないということか。だが、年末·年始特集なので、念のために2020年の目標を聞きたい。
青木:もう年齢がベテランになってきた、ということを考えると、できる限り自分の可能性を使い切りたい。できることを全部やりきりたい。
ONE:可能性を使い切るとは?
青木:どれだけ自分が天から与えられた可能性を使い切るかということだ。多くの人がそれを残したまま死ぬから、それだと後悔が残る。過去には興味がないと言っていたが、斜に構えていると思われるかもしれないが、それはやることをやって後悔がないから。
僕は、いつやめてもいい。今の戦績であれば、いつやめても頑張った、それなりに立派だったね、と言われると思う。でも、まだ僕はやりたい。僕は格闘技以上に面白いことがなくて、格闘技が好きだ。誰かのためにではなく、自己満足のためにやっている。だから自分が納得して終わりたい。選手をやめたら死んでもいいかと思っている。
ONE:死ぬのはもったいないと思うが。
青木:もったいないとみんな言うが、これ以上に生き甲斐というか、楽しいことがない。何かに情熱を燃やし続ける、これ以上盛り上がることはない。だからこそ、できる限り長くやりたい。ゴールはいつ死んでもいいと言っているけれども、それはすなわち、生への執着なのかもしれない。だからこそ、生きることと戦うこと、格闘技をすることというのは同じになっている。
そういう意味で、2020年に無理やりまとめるのであれば、いろんな経験をして、より強くなっていきたい、という意味で可能性を使い切りたい。
ONE:倒したい相手がいるなどの具体的目標は?
青木:チャンピオンになりたいとか、ベルトが欲しいとか、外的要因では頑張っていない。人を倒したい、というのも外的要因。チャンピオンやメダルは、人が作ったもの。それって、人に頑張らされているように思う。
あくまで、自己研鑽、自己満足で頑張っていきたいので、自分が納得したところ、自分が可能性を使い切ったところが終わり。
ONE:年末年始の予定は?
青木:多分何か仕事していると思う。
ONE:各種メディア出演や原稿執筆などいつも忙しいかと思うが、休まないのか?
青木:シンガポール大会(11月22日の「ONE:EDGE OF GREATNESS」)の日の昼間時間が空いた。ずっと本を読んでいたら、すごくリフレッシュした。忙しいと本が読めなくなるので、この時間はやっぱり大切だと思った。時間があれば本を読みたい。
ONE:最近読んだ本は?
青木:もうすぐ読み終わるが坂口安吾の「堕落論」。坂口安吾は、物事の本質を突く人だ。当たり前のことしか言っていない。そういう当たり前のことを当たり前に言っちゃう人が好きだから。文芸書は好きだ。自己啓発の本(2016年出版の「空気を読んではいけない」や、2019年出版の「ストロング本能人生を後悔しない『自分だけのものさし』」)を出してるから、自己啓発書も読むが。