【11/9大会】「全員に笑われた」子供の頃の夢を現実に、3階級王者マリキンの信じる力
3階級MMA世界チャンピオンのアナトリー・マリキン(ロシア)は、物心ついたときから、世界最強の存在になることを目標としてきた。
11月9日(土)にタイ・バンコクのルンピニー・スタジアムで行われる「ONE 169」でマリキンは、挑戦者オマール・ケイン(セネガル)を迎え、ONEヘビー級MMA世界タイトル防衛に臨む。
マリキンはプロ14戦全勝、フィニッシュ率100%を誇り、MMA史上有数のパウンド・フォー・パウンドのKOアーティストしての地位を確立しているが、こうした成功を予想したものはほぼいなかった。
だが、自身はプロ転向以前から世界チャンピオンになることを夢見てきたといい、幼い頃の逸話をONEチャンピオンシップに明かしている。
「おもしろい話があるんだ。学校では勉強は得意じゃなかったけれども、スポーツは好きだった。トレーニングをするために授業をサボっていた」
「数学の先生にいつも黒板の前に連れて行かれて『どうしたんだ、アナトリー』って尋ねられたものだ。それに『本気で言うけれど、自分は世界チャンピオンになる。これが自分の夢で、絶対に叶うだろう』と答えた」
「そうしたらその先生は笑って『落ち着いて、いったい何の世界チャンピオンになる気なの?』と言ったんだ」
教師には相手にされなかったものの、マリキンは現在、ONE世界ミドル級、ライトヘビー級、ヘビー級のMMA世界タイトルを保持するまでになった。
望んだことを実現するのは誰もができることではない。だが、マリキンは実際にやり遂げて見せたのだ。
「ずっと夢見ていた。アスリートになって良い結果を出して、世界チャンピオンになりたいと思っていて、そしてその夢が叶ったんだ。これまでいろんなことがあったけれども、ここまで辿り着いて、子供の頃の夢を叶えたんだ」
出身地のシベリアの小さな工業都市ケメロボでは、マリキンはさほど期待されていなかった。夢を周囲に語ったことは覚えているが、本気にされなかったという。
だが、妻のアニータは違った。
「世界チャンピオンになりたいって言ったとき、ほぼ全員に笑われた。『アナトリー、何言ってるんだ。お前が世界チャンピオンだって? 自分たちはケメロボという小さい街出身なんだぞ』って」
「そうしたなか、たった1人だけこう言ってくれた人に出会った。アニータだ。『あなたはきっと、やれる』って」
「自分の歩みをレガシーとして残したい」
アナトリー・マリキンの前例のないMMAでの成功は、懸命に努力をすれば何でもできる、ということを示している。
さらに、こうして疑う人々に流されず、世界チャンピオンまで上り詰めた自身の経験が他の人々にとってインスピレーションになることも心から願っているという。
「世界チャンピオンになるのは、子供の頃の夢だった。そして、3階級で世界チャンピオンになることができた。だから、子供の頃の夢はこれからも大切にするつもりだ」
「強く信じて、懸命な努力をする心構えがあれば、成功できるってことに気づいて欲しいんだ。世界中の人々が決して諦めないことを願っている」
「どんなに辛くても、常に前に進み続けて、そうして自分の道を見つけたら、その過程で素晴らしい出会いもあると思う」
さらに、マリキンは多くのタイトルを獲得するよりも、周囲にモチベーションを与えることのほうが大切だとしている。
だからこそ、耳を傾けてくれるなら誰にでも、自身の歩んできた道を語る責務があると感じているという。
「ベルトや3階級制覇という形ではなく、自分の歩みをレガシーとして残したい。そうすれば、『何だってできる』って気づいてもらえるだろう。普通の男だってできるんだ。本当に」
「他の人にはないチャンスを与えられたら、そのチャンスを世界に分かち与えて、良い行いをしないといけない」