【3/23 日本大会】タワンチャイ、貧困生活から世界的スターダムへ、新世代にアドバイス「今は格闘技でリッチになれる時代」

世界王者としてムエタイ・フェザー級の頂点に君臨するタワンチャイ・PK・センチャイ(タイ)が今、ムエタイの王座に加え、キックボクシングのベルトにも手をかけようとしている。
3月23日にさいたまスーパーアリーナで開催される「ONE 172:武尊 vs. ロッタン」のONEフェザー級キックボクシング暫定世界王座決定戦で、タワンチャイは元K-1王者の野杁正明(日本)と対戦する。
前戦でライバルのスーパーボンにKO勝利を収めたタワンチャイだったが、この野杁戦で勝利すれば、自身の連勝記録を10に伸ばし、格闘技界のスーパースターとしての世界的地位をさらに固めるチャンスだ。
ムエタイの頂点に立った多くのタイ人選手と同じく、タワンチャイも貧しい家庭で育った。家族の生計を立てるため“八肢の武術”ムエタイを始めた25歳のタワンチャイは、デビュー戦とそのファイトマネーについて鮮明に覚えている。
「練習を始めてまだ1年も経っていなかったが、パタヤビーチのバーで試合をした。その時は“ジャトゥカム・ペッチュルンルアン”というリングネームで出場し、左のキックで1R KO勝利を飾った。外国人からチップとして800バーツ(約24米ドル)をもらった。とても嬉しかったのを覚えてる。」
ムエタイのデビュー戦で勝利を収めた左の蹴りはタワンチャイのトレードマークとなり、その左の蹴りでタワンチャイは数々のKOの山を量産。スター街道を駆け上がった。
その経歴を振り返ると、タワンチャイは2度の転機を迎え、スター選手として成長している。
最初は2018年、ルンピニースタジアムのムエタイ世界王者に2度輝いたクラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ(タイ)に3連勝した時。そして次は世界最大の格闘技団体にデビューした時だ。
「バンコクに移って、ムエタイでキャリアを積めると感じた。すでに知名度もあったので、ムエタイをお金を稼ぐ方法として考えるようになった。自分が有名になったと感じ始めたのは、ルンピニースタジアムでクラップダムに3連勝した時だ。」
「でも、世界的に有名になったのはONEに参戦してからだ。」
事実、タワンチャイはONE11戦で負けたのは、強豪シッティチャイにスプリット判定で敗れた1度だけ。無敵の強さで世界中のファンの注目を集めた。
圧巻のKOハイライトや劇的な世界タイトル獲得は間違いなく、タワンチャイをスターダムに押し上げた要因だが、その陰ではジムでの一日何時間にも及ぶハードワークがある。
その見えない努力や苦難を乗り越えてきたタワンチャイは、同じく世界的なスター選手を夢見る若いファイターたちにアドバイスを送る。
「もしあなたがこの道を進むなら、最後までやり遂げる覚悟をするべきだ。勤勉で規律正しく目標に集中する。歯を食いしばり、忍耐強く頑張って欲しい。成功は必ずやってくると信じなさい。」
「今は格闘技でリッチになれる時代。何があってもへこたれず、頑張って欲しい。最後までやり遂げるんだ。」
自身のレガシーはまだ築かれていないと語るタワンチャイ
ムエタイとキックボクシングの両競技で驚異的な成功を収めているタワンチャイだが、自身のキャリアを見つめる時、その姿勢は謙虚だ。彼は自身の“ベスト”とは呼ばない。
「私はおそらく世界でもトップクラスのパウンド・フォー・パウンドのストライカーの一人だろう。しかし、まだ唯一無二の存在ではない。」
20代半ばのタワンチャイが、自身のキャリアを振り返るにはまだ早いようだ。しかし、これから数年間の戦いの結果が、世界最高の選手の一人となるのか、真の史上最高選手となるのかを決めると考えており、本大会での野杁との暫定王座戦がその上での重要な一戦と感じている。
「私が将来、“レジェンド”になれるかどうかまだ分からない。世界中のファンに自分を“レジェンド”に相応しい存在だと認めて貰うには、これからのパフォーマンス次第だ。」