【11/22大会】KO防衛ノンオー「チャンスが来るのを待った」
ONEバンタム級世界王者ノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)の11月22日(金)のパフォーマンスは、なぜ彼が最も偉大なムエタイ選手と言われるかを思い起こさせるには十分だった。
シンガポールで開かれた「ONE:EDGE OF GREATNESS」で、ノンオーはここ数年の対戦相手としては最強と言えるセーマペッチ・フェアテックス(タイ)と激突。若くハングリー精神にあふれたセーマペッチを、第4ラウンドに見事な右ストレートでキャンバスに沈めた。
今回の勝利でノンオーは3度目の世界タイトル防衛に成功。これまでの防衛戦の中では最も見ごたえのある内容だったと言える。これまでは技術的、戦術的な攻め方をしてきたが、今回はムエタイの伝説的存在たるにふさわしい最高のパフォーマンスだった。
試合は立ち上がりの第1ラウンド、落ち着かない探り合いで始まる。だが第2ラウンド、ノンオーはONEスーパーシリーズ初めてとなるフィニッシュを狙って、全力でぶつかってきた。
「最初は本当に緊張していた。だが少し時間が経って、完全に試合に集中することができた」
「第2ラウンドに入ると、自分のプランにしっかり集中できた。ノックアウトのチャンスがあれば、狙っていこうと思った」
「どの試合でも自分のコンディショニングはいいし、100%の力で戦っている。だが試合がどう展開していくかは、対戦相手次第だ。」
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シンガポールのメガジム「Evolve MMA」に所属するノンオーは、トレードマークと言えるフェイントを駆使して強烈な右キックでセーマペッチを捉えようとする。さらにノンオーはパンチでも積極的に攻めた。
セーマペッチが下がり始めると、ノンオーは前に出て全力で猛攻に出る。アッパーカットの連打をはじめとする嵐のようなパンチを浴びせ、最初のノックダウンを奪う。
何とか立ち上がったセーマペッチに対し、ノンオーはさらに同様の攻撃を加えると、第2ラウンド終盤に再びダウンを奪う。だがそれでもセーマペッチは立ち上がる。
「間違いなく驚いた」
「完璧なショットで捉えたと思ったのに、セーマペッチは立ち上がった。彼は本当に強い!」
「ダウンを奪った後、セーマペッチをノックアウトできると確信した。だが焦っていきたくはなかった。チャンスが来るのを待たないといけなかった」
ノンオーはそのチャンスを辛抱強く待った。第2ラウンドでの2度のダウンにもかかわらず、セーマペッチは何とか持ち直すと、第3ラウンドにはこの試合を通して最もいいパフォーマンスを見せたからだ。
ノンオーのキックを見極めて避けるなど、的確なディフェンスを見せた上、攻撃ではヘッドにボディにと激しい打撃を加える。ノンオーが危ういのではと思わせるほどだった。
だがセーマペッチの激しい打撃を受けても、ノンオーの自信は揺るがずセーマペッチの攻勢を乗り切る。
「自分のプランに忠実にいくことに集中していた」
「焦ったり怖がったりしないように自分に言い聞かせた。そしてチャンスが来るのを待った」
そのチャンスはようやく第4ラウンドに訪れた。セーマペッチの攻撃が陰りを見せた時、ノンオーは右ストレートでセーマペッチを捉える。セーマペッチは後ろにひっくり返ったまま立ち上がることができない。今回はレフェリーのカウントすら必要なかった。
25歳のセーマペッチは劇的なノックアウトを喫したものの、立ち上がって勝者を祝福し敬意を示した。
ノンオーは対戦前から挑戦者セーマペッチを高く評価していたし、激闘の後もその評価は変わらない。
「セーマペッチが対応できないことは何もない。とてもいいファイターだ。だが全てはタイミングとチャンスにかかっている」
「セーマペッチはいつも謙虚で気さくな人柄だ。自分たちは試合の前も後も、兄弟として敬意を示し合った。これは心からの思いだ」
「セーマペッチはまだこれから、経験を積んでスキルを磨く機会がたくさんある。まだとても若いのにとても強い。長い間、家族を支える資金を稼げるだろう」
セーマペッチは今のところ、ファンでもあるノンオーに敗れたことを受け入れている。ムエタイで最も栄誉あるベルトを手に入れるチャンスを、彼はび待たなければならない。
一方、ノンオーは2020年も引き続き王座を守ることを楽しみにしている。そしてさらに別のベルトを狙うことも視野に入れている。
「自分はただ戦い続け、トレーニングし続けたいだけ。子どもたちの将来のためにお金を貯められるようにね」
「キックボクシングを試してみたいと思っている。機会があれば、別の世界タイトルを目指して戦いたい」