無敗の新王者デ・リダー「2021年は3試合したい」
ライニアー・デ・リダー(オランダ)は2020年、辛い目にもあったが、それらを克服し、ONEチャンピオンシップで最もエキサイティングな試合を披露した。
そしてその年、30歳のデ・リダーは、さらに2勝を挙げて、無敗記録を維持したのだった。
2020年10月の「ONE: INSIDE THE MATRIX」のメインイベントでは、2階級王者のアウンラ・ンサン(ミャンマー)の有するミドル級のベルトに挑戦。
ONEのケージ「サークル」で圧倒的実績を有していたアウンラ・ンサンを相手に、隙のないパフォーマンスを披露し、総合格闘技の栄誉あるベルトを手にしたのだった。
デ・リダーはその年の始めにタイトル挑戦へのチャンスを逃していたが、そこから見事に復活し、究極の目標を達成した。
デ・リダーは、2月の「ONE: WARRIOR’S CODE」でレアンドロ・アタイデス(ブラジル)にユナニマス判定で勝ち、2020年を好発進。
このパフォーマンスにより、デ・リダーはONEミドル級世界タイトルへのナンバー1コンテンダーになった。だが、アタイデスとの3ラウンドにわたる激戦のためにダメージを受け、4月に予定されたアウンラ・ンサンとの対戦は断らなければならなかった。
「軽い肩の怪我だったが、精神的にも非常にタフな試合をした後で、急なオファーだった」と、デ・リダーは振り返る。
「判定で決着した初めての試合だったから、考え直してリセットする時間が必要だった。7週間後にまた試合するようオファーをもらったが、あまりにも短い時間だった」
代わりにビタリー・ビグダッシュ(ロシア)が出場することになったが、新型コロナウイルスの世界的大流行のため、ONEは数ヶ月にわたってイベントを延期することになった。
最終的にはデ・リダーにとっては不幸中の幸いとなった。
ONEが大会再開に向けて動き出したとき、デ・リダーは自分にふさわしいと信じていたチャンスを手に入れた。
「その前の3試合、そしてキャリア全体で、自分を証明してきた」
「ビグダッシュや他の誰よりも、自分の方が相応しいと思っていたから、電話がかかってくると確信していた」
「SNSでもその旨を伝えていたし、息子が生まれてすぐに電話がかかってきた。その時息子は生後1週間で、8週間後に試合をするとの連絡を受けた」
息子の誕生は、10月に行われるアウンラ・ンサンとのONEミドル級世界タイトル戦の準備に影響を与えたが、デ・リダーは私生活と格闘家としてのバランスを保った。
シンガポールに到着し、ホテルで数日休んだ頃には、キャリア最大の試合に向けて準備が整っていたという。
「あまり寝ていなかったので、興味深い時間になった。だが、最大限に活用した」と、笑いながら語った。
「他のことはすべて脇に置いて、クラスも教えず、他の仕事を断って、精神的にも肉体的にも技術的にも、ゲームのすべてに集中した」
デ・リダーが「サークル」に入った時、最高のパフォーマンスを見せた。
アウンラ・ンサンは、アグレッシブに出てきたが、デ・リダーがすぐにマットに叩きつけた。その瞬間から、デ・リダーが主導権を握っていた。
デ・リダーはグラップリングを駆使して、アウンラ・ンサンのカウンターを封じ、第1ラウンド3分26秒にリアネイキッドチョークで一本勝ちを収めた。
「全て計画通りだった。描いていた通りに、まさに今までトレーニングしていた通りだった」
「相手を掴んだ瞬間から完全にコントロールできていた。立ったままボディロックをかけた瞬間から、勝つだろうと思った」
「最終的には自分が勝つと思っていたが、相手は非常によくディフェンスしていた。どうにもならないと思っていただろうが、ディフェンスが上手かった。正しい位置に体を置いていた。ケージに背を向けていた時には、そこで相手をフィニッシュするという選択肢はなかった」
「ポジショニングが完璧ではなかったので、左フックを放って、移動するスペースを与えて、逃げられるかも、と思わせた。それに乗ってきたので、自分は正しいポジションを取るように調整することができた。その時から、フィニッシュに向けて正しいポジションを取ることができた」
こうしてデ・リダーは、ONEミドル級世界王座を獲得しただけでなく、最近では「2020年トップ総合格闘技ファイター」にも選ばれた。
ベルトを手にした今、多くのコンテンダーに狙われる存在となったが、それに関して不安は感じてはいない。
「ONE: INSIDE THE MATRIX」での勝利以来、 デ・リダーはトレーニングを続けており、いつでもミドル級のタイトルを防衛できると約束する。
だが、もし望みが叶うなら、デ・リダーは再び大観衆の前で試合をしたいと考えている
もしその機会を待つ必要があるなら、ピッタリはまる対戦相手が出てくることになるだろう、とデ・リダーは考えている。有力コンテンダーをすでに2人とも倒しているためだ。
「試合前の1週間は、2回連続でアウンラ・ンサン戦から逃げられないと話していた」
「正直なところ、試合の展開は、本当の意味でのファイトではなかった。またすぐにアウンラ・ンサンと戦うのは理にかなっていないように思える。提案したいのは、アウンラ・ンサンがアタイデスと戦うことだ。それが実現すれば、自分は勝者と戦う」
「(アウンラ・ンサンを倒すことは)今の自分にとって本当の目標でも挑戦でもない。もっと早く終わらせられるかも?2分以内で?もっと良くできるかも?」
だが、デ・リダーはアウンラ・ンサンが有するもう1つのタイトル、ONEライトヘビー級世界王座への挑戦には目を向けているようだ。
「それはちょっと興味がある。もちろん」と、笑いながら話した。
デ・リダーはどんな挑戦にも立ち向かうつもりだ。最大の目標は2021年に3試合に出場すること。
子供のことやジムの拡張などで忙しい日々を送るが、ミドル級の王座にとどまるのは間違いないだろう。
デ・リダーはもう少し打撃のスキルを見せたいと思っているが、それができない場合も、自身のグラップリングは誰よりも上だと信じている。
さらに、議論の余地のなく無敗のONEミドル級世界王者として、自分から対戦を呼びかけることはしない。「サークル」での唯一の目標は、ベルトを守り、家族が誇りを持って振り返ることのできるようなレガシーを築くことだ。
「人生で最高の場所にいるよ。私生活だけでなく、プロとしてもね」
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