タン・リーの2021年「フェザー級最高の時代、楽しみ」
2020年は間違いなく、タン・リー(ベトナム/米国)にとって、大きな意味を持つ年だった。リーは昨年1月、ハイライト級のノックアウトを決め、10月にはフェザー級の王者となった。
リーは「ONE: INSIDE THE MATRIX 」で、マーティン・ニューイェン(ベトナム/オーストラリア)をノックアウトし、ONEフェザー級世界タイトルを手にした。この衝撃的な結果は総合格闘技界を揺さぶり、シンガポール・インドア・スタジアムで、新しい時代のページを開いた。
王者となったリーは、今度は挑戦される立場となったが、ベルトを守り、どんなチャレンジにも立ち向かうつもりだ。
KOアーティストのリーが、独占インタビューで、昨年の活躍を振り返り、2021年の抱負を語った。
ONEチャンピオンシップ: 2020年は誰にとっても厳しい年だったかと思うが、どうだったか?
タン・リー: 正直に言うと、2020年については文句はない。
仕事で好きなことをして、家族の世話をし続けることができて、本当にラッキーで恵まれていた。
妻は医療業界で働いている。看護師だ。忙しく、常に仕事をしていて、自分たち2人にとってはもっと悪いことも起こり得た。3月に娘が生まれる予定で、数少ない幸運な人間だ。本当にうまくいっている。
2020年は、世界タイトルマッチができてとベルトが獲れて本当に幸せだった。2回しか戦えなかったが、全然試合に出られなかった人たちがいるから、ラッキーだと思う。第一線にいて、ランキングを駆け上がり、タイトルを狙いに行って、ベルトを持ち帰れてよかった。控えめに言ってもクールだった。
ONE: パンデミック前の1月にも出場したが、その時の自分の階級での位置付けは?また、その時のパフォーマンスを振り返って?
リー: 「ONE: A NEW TOMORROW」での(高橋遼伍との)試合は、タイトルに近づくためのものだと思っていた。あと1戦か2戦だろうと思っていた。
試合が近づけば近づくほど、タイトルの話はしなくなる。家族にとってどんな意味があるか、なんてことを考えることも少なくなる。ケージの中で最高のパフォーマンスをするには、普段の火曜日のような気分でスパーリングに行く、という方法が一番効く。それがベストなバージョンのタン・リーだ。ファイターとしてのタン・リーをできるだけ人間っぽくさせようとしている。
こういう方法は、そうしたいからやっているんだ 。やらなければならないからではなくて。たくさんのキャリアの選択肢があるが、試合で戦うことほど好きじゃない。格闘技が天職で、これなしでは生きていけないから、追い続けている。
ほぼ思い描いていた方法で、試合に臨めた。リラックスして、シャープで、待ち受けている危険性を意識しているという状態。未来を見ているようだった。何ができるか分かったんだ。相手が何を出そうか考えていることも読めた。
あの試合は本当にうまくいった。ノックアウトしたのは嬉しかった。けれど、あの試合が長引いていたら、スキルの面で、リョウゴと自分の差がもっとはっきり見えたかもしれない。
ONE: その勝利の直後、パンデミックがあった。マーティン・ニューイェンとのONEフェザー級世界タイトル戦に向けて、どうやって準備した?
リー: 完全な隔離生活だった。タイトルのことを考えながら、マーティンのためにトレーニングした。試合までに彼は2、3回トレーニングキャンプをしたんじゃないかな。自分も2、3回キャンプをしていた。人生最大の試合に向けて多くの準備ができて良かった。彼も準備する時間を十分に取ってくれて、研究してきたので、最高のマーティンと戦えた。
もしマーティンが足の指を痛めていたら、タイトル挑戦はしたくなかった。休ませて回復させて、100パーセント、110パーセントのマーティンとやりたかった。これだけの時間があったのは、最高だし、相手にも準備期間があった。
移動を許可してもらい、この試合を準備してもらえたことを感謝しているし、幸せだ。シンガポール政府が国民とチームの安全を守るために必要な予防措置をすべて講じてくれたこと、そして入国させてくれて、他の国のファイターたちをホテルに入れて、隔離させて、トレーニングさせてくれ、最終的には戦って無事に帰国できて、本当に感謝している。
とても、とても厳しいものだった。でも、正しい選択だったと思う。そうでなければ、シンガポールで試合をしないという選択肢もあり、そうだったらば、このベルトを獲得する機会はなかっただろう。
ONE: 世界タイトルマッチでは非常に力強いスタートで、第3ラウンドではニューイェンが反撃してきた。こうした試合に出て、米国にベルトを持ち帰ったのはどんな重みがあったか?
リー: とても重要だ。試合前は考えないようにしているが、試合が終わった後に落ち着くのはいいことだ。試合を見てくれている人の人生に喜びと興奮をもたらすことができたのなら、ファンに対してありがたいと思う。
マーティンはここでキャンプしたが、オーストラリアとベトナムの代表だ。自分は、米国とベトナムの代表。なので、同じベトナムだけど、同時に他の国の代表でもある者同士のバトルはクールな感じだった。同じであって、違っている。最高の要素だった。他の試合ではあまりないひねりで。
家族と、ルイジアナ州ニューオーリンズの街にベルトを持ち帰れて、いい試合ができてよかった。
もう何度か試合を見た。ちゃんと数えてはいないけれど、1ラウンド目はキック2発とパンチ1発を食らったかな。2ラウンド目は当てられたかちょっとわからない。最初の2ラウンドは、とてもいい感じだった。正直言って、どう見ても圧倒的なパフォーマンスだった。
そして3ラウンド目に揺さぶりをかけてきた。あんなに強烈な右パンチは、リスクを取らなければ出ない。
パンチの合間に、どこに隙があるのか、一瞬で考えた。その時は安全にいこうと思った。顔面にはダメージがなかったし、攻撃的になられてリードされてもダメージはなかった。どのパンチもクリーンに命中しなかったし、致命的でもなかった。そうだったら、今頃まだ意識を失っていたかもしれない。
その右パンチの中に入って、自分の右を何発か出した。右から左に回ろうとしていたところを捕まえたら、相手がよろめいた。こういう瞬間を見て、飛び付かなかったらフィニッシュ率100%にはならない。
試合のまとめは、自分が求めていたものよりも、ずっとずさんだったので、自慢はできない。一瞬、2人とも氷の上の鹿のような状態になったが、左をこめかみに当て、右アッパーを顔の横、あごのあたりに当てた。
ONE: 2021年はフェザー級のエキサイティングな年になるだろう。この階級はどうなると思う?
リー: たくさんの動きがあると思う。今が転換期だと思う。新進気鋭のタレントがたくさんいる。みんなタイトルを狙っている。
最高の時期だと思う。転換期には、危険でハングリーな才能を持った新進気鋭の選手が出てくる。
今までいた選手たちがいて、新しい奴らを踏まえて、どうパフォーマンスするのか。自分の立ち位置をキープするのか、明け渡すのか。自分はトップにいる。そこにい続けるつもりだ。こうした奴らと、来るべき対戦に注目している。どうなるか楽しみだ。
ライト級にも興味があって、一緒に戦う時はクリスチャン(・リー)やそのパフォーマンスも見ている。クリスチャンとライト級で戦えるかも。マーティンやゲイリー(・トノン)がタイトル挑戦権を争っている間にね。
その時には、その勝者と対戦できる。その準備がある。2021年は盛りだくさんのようだ。
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